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北朝鮮軍がウクライナ戦争に参戦!? 韓国発の特殊部隊の「ロシア派兵説」を検証する!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
軍事パレードで行進する北朝鮮特殊部隊(朝鮮中央テレビから)

 韓国の情報機関、国家情報院(国情院)は昨日(18日)、北朝鮮がウクライナ侵攻を続けているロシアに兵士を派遣しているとの衝撃的な結果を発表していた。

 国情院の調査結果は北朝鮮の対露武器や派兵を一貫して否認しているロシアも北朝鮮も反論できないほど詳細かつ具体的である。整理すると、以下のような内容となっている。

 ▲今年8月に北朝鮮のミサイル開発の重要人物として知られる金正植(キム・ジョンシク)党軍需工業部副部長がロシア内の北朝鮮製ミサイルの発射場を訪問した状況を把握し、動向を注視していたところ、ロシア軍艦による北朝鮮軍の移送を確認した。

 ▲北朝鮮兵士の第1陣、約1500人がすでに10月8日から13日にかけて上陸艦4隻と護衛艦3隻を利用して移送された。近日中に第2陣の輸送作戦が進められている。

 ▲北朝鮮兵士は現在、極東地域のウラジオストク、ウスリースク、ハバロフスク、ブラゴヴェシチェンスクなどに分散し、ロシア軍部隊に駐留し、訓練中にある。

 ▲北朝鮮兵士にはロシア軍の軍服や武器が支給され、朝鮮人に容貌が比較的近いヤクート人やブリヤート人の身分証が与えられている。北朝鮮兵の参戦を隠すためロシア軍兵士に偽装するためのものとみられる。

 ▲北朝鮮が派遣するのは「暴風軍団」と呼ばれる最精鋭の特殊作戦部隊・第11軍団隷下の四つの旅団に所属する兵士で、その数は約1万2000人と予想される。

 韓国の国防部はウクライナのゼレンスキー大統領が17日、ウクライナ情報機関の情報として「北朝鮮が兵士ら1万人の派遣を準備している」と発言したことについて「現在のところ、民間人力の可能性があり、現在追跡中である」(キム・ソンホ国防次官)とコメントしていたが、国情院の調査結果は「人力でなく、兵力である」と結論付けていた。

 

 国情院は昨年8月以降、北朝鮮がコンテナを利用してロシアに122mm、152mm砲弾や多連装ロケット、さらには北朝鮮版「イスカンデル」と称されている短距離弾道ミサイル「KN-23」を供与してきたとみなしていたが、派兵についての暴露は今回が初めてである。そこで、国情院のこの情報の信憑性を検証してみることにする。

 その1.金正植党軍需工業部副部長の8月訪露について

 国情院は大将の称号を持つ金正植(キム・ジョンシク)氏の肩書を「党軍需工業部副部長」としているが、正確には「第1副部長」である。確かに金第1副部長はモスクワで開かれた国際軍事技術フォーラムに出席するため8月13日に平壌を出国していた。帰国日は明らかにされず、8月24日に金正恩(キム・ジョンウン)総書記の立ち会いの下、行われた無人機の性能試射には姿を見せていなかったが、8月27日の240mm放射砲の試射には立ち会っていた。こうしたことから8月26日に平壌に到着したロシア専門家代表団と一緒の便で帰国したものとみられる。少なくとも、金第一副部長は2週間近く、ロシアに滞在していたことになる。従って、滞在中にロシア内の北朝鮮製ミサイルの発射場を訪問した可能性は十分にあり得る。

 その2.特殊部隊の派遣について

 金総書記は9月11日に特殊作戦武力訓練基地を視察し、10月2日にも西部地区特殊作戦部隊の訓練基地を視察し、部隊の訓練を参観していた。1か月も経たない間に2度も特殊部隊の基地を訪れるのは極めて異例である。様々な特殊作戦旅団戦闘員らが金総書記の前で訓練を披露していたが、朝鮮中央通信によると「戦闘員らは金総書記が望む国権守護、国益死守の先兵との自覚を持っていかなる戦闘任務が与えられても徹底的に完璧に成し遂げる猛将として準備していく」ことを誓っていたそうだ。金総書記がロシア派遣前に最終チェックを行い、かつ出兵兵士の歓送会が行われた可能性も考えられる。

 その3.ブリヤート人の可能性について

 顔形、容姿が朝鮮人と似ているブリヤート人による部隊が編成されているとの情報も流れているが、今のプリヤート人の若者は朝鮮語は知らず、日常生活ではロシア語を使用する。ウクライナ軍所属の戦略疎通・情報保安センターは昨日、極東地域のセルギエフスキー訓練場で訓練中の東洋人系の兵士がロシア軍から装備を受け取る場面を撮影した映像を公開していたが、「そこを越えるな」とか「こっちに来い」とか、「おい、おい」との北朝鮮訛りの声が聞こえていた。また、「国情院」は証拠写真として昨年8月に金総書記がミサイル工場を訪れた際に後ろにいた北朝鮮のミサイル技術者がウクライナの戦場でロシア人とおぼしき兵隊に肩を組まれている写真を公開したが、同一人物であることが判明している。

ウクライナ戦場に現れた軍人(左)と北朝鮮ミサイル工場技術者(国情院配信)
ウクライナ戦場に現れた軍人(左)と北朝鮮ミサイル工場技術者(国情院配信)

 その4.「暴風軍団」と呼ばれる特殊作戦部隊・第11軍団について

 北朝鮮には第11軍団は存在していない。第11軍団は8年前の2016年に改編され、国防省作戦総局傘下に入り、翌年の2017年に特殊作戦軍に名称が変更されている。朴槿恵(パク・クネ)保守政権が有事の際に北朝鮮に浸透し、金総書記の執務室を直接攻撃する斬首部隊である特殊任務旅団を2016年に創設したことへの対抗からである。

 特殊作戦軍の兵力は6万~8万人と推定されているが、作戦部隊の40%が暴風軍団に所属している。

 「525部隊」で知られる1個の特殊作戦部隊、5個の航空陸戦旅団と3個の航空狙撃旅団(空輸部隊)、2個の海上狙撃旅団、4個の偵察兵旅団、9個の軽歩兵旅団と35個の軽歩兵大隊、5個の混成旅団、4個の狙撃旅団、旅団級の核リュック部隊である「301部隊」がある。第8航空陸戦旅団には女性の落下傘部隊がいる。爆弾を抱えた自爆特攻部隊である。このうち10個の旅団が暴風軍団に属しており、4個の軽歩兵旅団、3個の狙撃旅団、そして3個の陸戦旅団で構成されている。

 軍事パレードではミサイル戦略部隊の次に行進しており、昨年2月の朝鮮人民軍創建75周年軍事パレードではゴーグル付きのヘルメットを着けて行進していた部隊を李建春(リ・ゴンチュン)司令官(上将)が引率していた。なお、第11軍団長だった金英福(キム・ヨンポク)上将は金総書記が9月11日に特殊作戦武力訓練基地を視察した時には昇級し、軍副総参謀長として随行していた。

 北朝鮮の特殊部隊は要人暗殺だけでなく、偵察部隊が作成した地図を基に先鋒として敵地に潜入し、軍事施設を破壊する任務を帯びている。

 北朝鮮のテレビは2016年9月14日に「我々の最高尊厳(金正恩委員長)に手を出した朴槿恵逆族一党には民族の峻厳な審判は避けられない」との題目の映像を3分間放映していた。映像には朴大統領の似顔絵を標的にした射撃場面が映し出されていた。2016年11月に金総書記の視察の下、韓国大統領府(青瓦台)への奇襲攻撃訓練を実施していた。

 毎日超人的な訓練に明け暮れており、30キロの軍装備を背負って6時間以上行軍するとともに2,3日一睡もせずに160キロ歩くこともわけなくこなす。特に思想教育は徹底しており、「最高司令官の命令があれば、爆弾を抱えて敵地に飛び込んでいくことも辞さない」と、精神武装がされている。

 北朝鮮軍の参戦はウクライナ戦の様相を一変させるだけでなく、朝鮮半島有事の際のロシアの参戦に繋がりかねないだけに韓国は尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領主宰の下、国家安保室、国防部、情報院ら幹部らが出席し、「北朝鮮戦闘兵のロシア派兵に関する」緊急会議を開いていた。

(参考資料:異例のショイグ電撃訪朝! 大統領並みの扱いを受ける!!)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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