定年まで自社に勤めたい新入社員は3割強に過ぎない
雇用の安定性の利点や経験の蓄積性を考慮すると、自ら門戸を叩いた企業に長年勤めたいと思うのが一般的な考え方のはず。それでは今の新社会人はどのような想いを入社した会社に抱いているのだろうか。2015年4月にソニー生命保険が発表した調査結果「社会人1年目と2年目の意識調査 2015」から確認をしていくことにする。
今調査対象母集団のうち社会人1年生に、最初に就職した会社でどれくらいの期間働きたいかを尋ねた結果が次のグラフ。意外にも定年まで・定年後も働きたいとする人は3割程度に留まっていた。
ボリュームゾーンは5年前後。2年から10年位の間に4割強が収まっている。企業に対する忠誠心、就業し続けたい想いはさほど強くは無いようだ。さらに入社直前・直後(質問をしたのは3月中旬)の時点で、すでに7.8%の人が「既に辞めたいと考えている」と答えている。何か色々と複雑な事情があるのだろうが、就業を果たせない人から見れば「もったいない」という言葉しか浮かんでこないに違いない。
これが就業してから1年が経過した、社会人2年生となると、大きく心境は変化する。
「定年(後)まで働きたい」とする意見が約2割にまで減少する。そして「すでに辞めたいと考えている」が20.0%と大きく上昇、「2~3年位」との意見も増え、辞めたい意向の増加だけでなく、辞めたい時期が前倒しとなっているのが分かる。最初の「1年生」と同一人物による回答では無いので誤差が生じている可能性はあるが、1年間の就業の中で転職(少なくとも現在勤めている企業からの離職)の想いをより強く抱かせる事柄が少なからず生じたのだろう。とりわけ、どこまで本気なのか否かはともかく、1年の就業で「この会社は辞めたい」と考えている人が5人に1人はいる実態に、驚く人もいるに違いない。
ちなみに上記2つのグラフの値を比較することで、1年の就業期間に生じた継続就業意欲の変化が分かる。
概して辞めるまでの期間が短いほど回答値が増え、長くなるほど減る傾向がある。1年の就業の間に、辞めたい気持ちが増幅されていく様子がよく分かる。
一方で、今調査はほぼ同じ条件で1年前にも実施されており、それと比較すると注目すべき動きも見られる。「定年まで働きたい」と「定年後も働きたい」を足した、会社への高い傾注心の度合いを推し量れる値を算出したものだが、社会人1年生・2年生共に、前年よりも高い値が出ている。
経年調査はまだ2年分のみなので単なる数理的なぶれの可能性もあるが、注目すべき動きには違いない。
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