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思考停止を撲滅せよ! ~脱・「仕事ごっこ」~【沢渡あまね×倉重公太朗】最終回

倉重公太朗弁護士(KKM法律事務所代表)

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少子高齢化、人材採用難、働き手の意識・行動の変化、東京一極集中。こうした課題解決に向き合っていくにあたって、企業内での縁の下はバックオフィス部門(管理部門)です。人材が本来のポテンシャルを十分に発揮し、働きがいのある環境を整えていくことがバックオフィスに求められる役割となってきます。まさにバックオフィスは「働き方改革」スタートの要。バックオフィス2.0時代の到来です。

<ポイント>

・バックオフィス(総務、経理、人事、情シスなど)が戦略的な動きになれば、組織は輝く

・価値を出して愛されるバックオフィスを目指す

・国全体をアップデートしていくムーブメントをつくる

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■バックオフィス2.0とは?

倉重:ちょうど今回のコロナのことで、人事を見直す企業も増えてきていると思うので、足を引っ張るバックオフィスにしないということですよね。

沢渡:おっしゃるとおりです。いいつなぎをしてくれますね(笑)。

まさに今、この世の中の働き方を見ていると、いわゆる管理部門、バックオフィス部門(官公庁や自治体や士業も含む)が古く堅苦しいが故に、コロナ下でリスクにさらされ、企業が成長できず、コラボレーションをする足を引っ張ってしまっています。

やはり管理部門バックオフィスをアップデートしていかなければいけません。

そこで「バックオフィス2.0」というコンセプトを打ち上げました。

5月12日の火曜日には、オンラインで、参加無料で開催したのです。

<参考>バックオフィス2.0セミナーの収録動画 提供:株式会社NOKIOO

https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=3818221308251029&id=150151725134421&_rdr

倉重:いいですね。

沢渡:総務の暴れん坊である『月刊総務』の編集長の豊田健一さんは、「戦略総務」という言い方をしています。「総務が戦略的な動きになれば、組織は間違いなく輝く」と。

豊田健一さんをお招きして、いまのありかたの問題を指摘しつつ、「総務2.0」「人事2.0」「経理2.0」「情シス2.0」「購買2.0」「監査2.0」という形で理想像を提言したのです。今までのダメなやり方と、「イケている組織ってこうだよね」というやり方をひたすら語りました。

倉重:素晴らしい。

沢渡:要は、このままだと管理部門は要らない子になってしまうよねって話です。

倉重:足を引っ張るのではなくて、成長をドリブンさせる組織であるかという話ですよね。

沢渡:そう変われれば間違いなく社内外のファンが増えて、組織としても人としてもイケている人材になることは間違いないです。

「価値を出して愛されるバックオフィスになっていこうぜ」という提案です。

バックオフィス2.0は今後も各所で発信をしていきたいと思っています。講演依頼もお待ちしています(笑)

倉重:そろそろ終盤になってきましたので、あと2点ほどお願いします。

この連載は学生や入社すぐの若い人も見てくれているのです。

夢も希望もある若手社員や、これから就活をする人などに向けてのメッセージをぜひお願いします。

沢渡:2つあると思っています。

1つ目は、とにかく外とつながり続けること。同じ組織にいて同じ仕事を10年していると、その会社の論理が優先されてしまうのです。

倉重:自社の常識に染まらないということですね。

沢渡:そうです。自分や自社がイケているのか、イケていないのかという感覚が鈍って集団思考停止になるわけですよね。

今はデジタルネイティブで、外とのつながりが持てるオープンなコミュニケーションができるマインドセットやスキルがある状態です。

ですから社会に出た後も、外とつながり続けてください。

2つ目は、学習し続けることかなと思います。

学習を終えたらそこで試合終了です。

倉重:ちょうど「働き方改革」が言われだしたときに、労働時間の残業規制ができました。

企業の残業規制には一定の限界が来てしまいます。

終業後は自分で勉強する人なのか、適当に遊んでしまう人なのかで、すごく残酷な差がつきますよと言っているのです。

沢渡:そうですね。会社の中でも、おかしいことや「こうしたほうがいい」ということをどんどん発信していかなければいけなと思います。

責任感を持って、それぞれの立場で、悪いものは悪い、やめてほしいものはやめてほしいと言って、この国全体をアップデートしていくムーブメントにする必要があります。

倉重:おかしいものはおかしいってはっきり言うことが大事ですよね。

沢渡:言語化されることによって、ああそうなのだと気付く人もいます。

それでもし理不尽に傷つけられたら、倉重さんや沢渡が乗り込んでいきますから(笑)。

倉重:あるいは会社を訴えたい場合は、労働者側の専門の弁護士を紹介します(笑)。

沢渡:それぞれの立場でアップデートしていきましょう。

倉重:では私からは最後になりますけれども、沢渡さんの夢をお願いします。

沢渡:私は全てのプロが輝ける社会をつくりたいのです。

今の日本の仕事のやり方や組織カルチャーは、たとえばエンジニアが技術を磨いて、世の中を幸せにする仕事に集中したくてもなかなかできません。

管理の仕事や、古い紙やはんこの仕事がその邪魔をしてしまっているのです。

意識を変えられない古い法律家や、古い管理部門の人たちも邪魔者になっています。

管理部門の人も嫌われるので、幸せになれません。

これってアンヘルシーですよね。技術者も、デザイナーも、マーケターも、経理も、人事も、総務も、法律化も、それぞれのプロが正しく輝ける世界、これが国として幸せで、個人としても幸せだと思います。

そういう社会をつくっていきたいです。

倉重:ぜひそういう社会にしたいですね。素晴らしいです。

次世代のためにわれわれは頑張らなければなりません。

沢渡:私はIT出身なので、まずはITの世界を守って、もっとリスペクトされるようにしたい思いが強く、その発信が多いのですけれども。皆さんがそれぞれの立場で、今までのやり方を正当化するのではなく、プロとしていかに成長していける組織をつくるか。どんどん行動していってほしいなと思います。

■誰かが共感してくれたら、そこから世界は動き出す

倉重:ありがとうございます。では観覧のコヤマツさんから質問タイムをお願いいたします。

コヤマツ:非常にためになる話をしていただいてありがとうございました。

統制型からオープン型にシフトする話にすごく共感したのですが、上に伝えるのは難しかったりします。どういうふうに伝えればいいのでしょうか。

沢渡:その組織の課題、問題にフォーカスすることかなと思っています。例えば、「ダイバーシティが大事」と言っている組織があるとします。ダイバーシティとは、それぞれ特性の違う人が、自分たちの仕事の本来価値を出していけるようにすることです。

つきつめて考えると、「オープンかつ違いを認める働き方」にすることによって、ダイバーシティ推進が進むということがわかるでしょう。ここで「ダイバーシティ」なる課題と、「ワークスタイル」なる課題が立体的につながります。

組織の課題が点ではなく、線や面としてつながるのですね。

今まで他人事だった「働き方改革」という課題が、コロナを乗り越えるのに必須になってきているから、どんどん自由な働き方になっているわけです。「働き方改革」と「ウィズコロナ」「アフターコロナ」が繋がっている。このように、自社ないし相手の課題にひも付けて、ものごとを立体的に議論していきます。

その世界を見せられるかだと思っています。

コヤマツ:ありがとうございます。

沢渡:自分の部長や課長が駄目でも、もしかして隣の課の課長や1階層上の人が、「あいつの言うとおりだ」と気付いてくれたら、そこから世界は動きだすのです。

倉重:味方を少しでも見つけるということですね。

沢渡:私が働き方の話をするときは、働き方改革という言葉を使わなかったりします。

その組織の課題が「社員のモチベーション向上」だったら、モチベーションを上げるために何をしたらいいかという話をします。

短略的に、「モチベーションをあげるには飲み会をすればよい」という発想になりがちのところを、「いや、そうではなくて、場所にとらわれない働き方をして、それぞれがプロとして本業に集中して仕事をできるやり方にしたらモチベーションが上がるよね」「エンゲージメントが上がるよね」という話に持っていく。

働き方改革というキーワードをうまく使えばモチベーションを上げるのにも寄与します。そういう気づきにつながるわけです。

■在宅勤務の「寂しさ問題」を考える

倉重:私からもお尋ねしたかった点がありました。会社もテレワークなどの環境を整えて、「どうぞ家で集中して自分の仕事をしてください」というふうになっています。

一方で、やはり家で仕事をするのは寂しいという声もあります。

こういうものにはどう答えますか。

沢渡:2つあるかなと思っています。1つ目はビジネスチャットなどを使いながら、雑談や相談をしていく。まずあなたから、悩み事でも何でもいいからちょっとつぶやいてごらんという話をしています。ツールでも何でも使って発信していくのです。

2つ目は、接点をたくさん持つことです。

会社との接点しかないと寂しくなります。

副業でもいいですし、自分が所属している勉強会でも構いません。

他のコミュニティーの人とチャットをしていれば寂しくなかったり、情報が入ってきたりすることはありますよね。

倉重:確かにそうですね。

沢渡:自分をマルチチャネル化して、社会との接点を増やすのが大事なのかなと思います。

倉重:オンラインでもサードプレイスをということですね。

確かにおっしゃるとおりです。それはいい解決案ですね。趣味に生きるというのも1つだと思います。コヤマツさん、他に質問はありますか。

コヤマツ:寂しさをどうするのかという倉重さんの話も聞いてみたいです。

倉重:これは結構難しいなと思っています。やはりオフィスの一番いいところって、2メートルの距離感と言ったりしますよね。

近くに人がいる気配がするのがすごくいいところです。

とはいえ、自分の作業は全部家でできてしまいますし、テレワークだからこそ、いろいろな人と簡単に打ち合わせや飲み会ができて、なんか楽だなと思っています。

それではオフィスの本質は何だろうと考えたときに、人によっては安心感を与えてあげられる場合もあるのだなと気づきました。そういう人もいたりするので、完全にテレワークにして引きこもるのではなくて、半々にするのもいいかもしれません。別にずっと東京にいなくたってできる話です。いろいろな地方に行ってもいいですよね。

沢渡:アナログとデジタルを組み合わせて、いかに価値を出すかだと思います。メディアの世界でも、メディアミックスという考え方があるでしょう。さまざまなメディアを組み合わせて伝えていく。仕事もメディアも相手を動かすというゴールは同じわけですから、働き方もメディアミックスでいいかなと思っています。

沢渡:おっしゃるとおりです。非常に面白かったので、またZoomでもお会いしたいですし、コロナが落ち着いたらお会いできればと思います。

沢渡:また暴れたいですね。

お声掛けいただき、本当にありがとうございました。

(おわり)

【対談協力:沢渡あまね(さわたり あまね)さん】

1975年生まれ。あまねキャリア工房 代表(フリーランス)、株式会社NOKIOO顧問、株式会社なないろのはな取締役。作家、業務プロセス/オフィスコミュニケーション改善士。浜松/東京二重生活。

日産自動車、NTTデータ、大手製薬会社を経て2014年秋より現業。経験職種は、ITと広報(情報システム部門/ネットワークソリューション事業部門/インターナルコミュニケーション)。

『人事経験ゼロの働き方改革パートナー』を謡い、ITやコミュニケーションの観点から組織改革を進める。300以上の企業/自治体/官公庁などで、働き方改革、マネジメント改革、業務プロセス改善の支援・講演・執筆・メディア出演を行う。趣味はダムめぐり。

<著書>

『仕事ごっこ』『仕事は「徒然草」でうまくいく』『業務デザインの発想法』『職場の問題かるた』『職場の問題地図』『マネージャーの問題地図』『働き方の問題地図』『仕事の問題地図』『システムの問題地図』(技術評論社)、『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)、『働く人改革』(インプレス)、『新人ガール ITIL使って業務プロセス改善します!』『ドラクエに学ぶ チームマネジメント』(C&R研究所)など。

『職場の問題地図』は"ITエンジニアに読んでもらいたい技術書/ビジネス書大賞2018"で、ビジネス書部門大賞受賞。

弁護士(KKM法律事務所代表)

慶應義塾大学経済学部卒 KKM法律事務所代表弁護士 第一東京弁護士会労働法制委員会副委員長、同基礎研究部会長、日本人材マネジメント協会(JSHRM)副理事長 経営者側労働法を得意とし、週刊東洋経済「法務部員が選ぶ弁護士ランキング」 人事労務部門第1位 紛争案件対応の他、団体交渉、労災対応、働き方改革のコンサルティング、役員・管理職研修、人事担当者向けセミナー等を多数開催。代表著作は「企業労働法実務入門」シリーズ(日本リーダーズ協会)。 YouTubeも配信中:https://www.youtube.com/@KKMLawOffice

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