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自虐コマーシャルでリンゴ潰した大野均、東芝復活への決意は。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
密集戦に身体をねじ込むタフガイ。運動量は健在。(写真:田村翔/アフロスポーツ)

 8月18日に開幕する日本最高峰のラグビートップリーグが、やや自虐的なプロモーション動画を拡散。好評を集めている。

 冒頭では東芝の選手たちがパスを回しながら、2015年のワールドカップイングランド大会後のブーム終焉に危機感をあらわにする。

 ここで「わー!」と大声で走り寄り、「過去の栄光なんて握りつぶして、もう一度、ラグビーブームを巻き起こすんだ!」と、リンゴをつぶしたのが大野均。日本代表として歴代最多の98キャップ(国際間の真剣勝負への出場数)を持つ39歳だ。

 昨季のトップリーグでは、150試合出場を達成。今季は前年度16チーム中9位に終わったチームの復活、激しいポジション争いでの勝利を目指す。

 8月8日、東京・サントリー府中スポーツセンターでサントリーとの練習試合に出場後(17-61で敗戦)、心境を語った。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――あの動画、話題です。オファーを受けた時は。

「ああいう芝居じみたことはやったことはないし、絶対に棒読みになると思って…。ただ、日本協会なり電通さんがせっかく準備をしてくれていたので、中途半端にやって恥ずかしくなるより、思い切りやろう、と。他のチームのところを見ても、面白いですよね。クボタの井上(大介)とか」

――大野さんは、冒頭でリンゴを割る大事なシーンを任されていました。

「3回ぐらい、やり直しました! …オールブラックスだった(リチャード・)カフィに『ラグビー人気、すごかったよな』と言わせるのもすごいなと思いましたね」

――あそこでわかったのは、東芝のキャプテンとなったカフィ選手の日本語が上達していること。

「そうですね。ここに来て急に上達していて、びっくりしています。試合中の指示も日本語で言ってくれたり、チームソングも日本語で作ってくれて」

――チームについても伺います。瀬川智広監督が2010年度以来の復帰を果たしました。

「やることが明確ですよね。自分は前回の瀬川さんの指導も受けていますが、(核は)そんなに変わっていないな、と。ポッドラグビー(予めグラウンドの中央、左右に選手が散らばる攻撃陣系)が広くおこなわれているなか、逆に我々はナチュラルに。攻撃に参加できる選手はどんどん参加していこうとしています。これを極めれば、去年以上の成績を残せる。選手全員がそう信じています」

――攻撃では簡単に倒れないこと、守りでは鋭く前に出てタックルすること。4、8日と続いたサントリーとの2連戦では、この2点が目立ったような。

「そこはこだわっているところ。ラック(ランナーが寝た状態の接点)にするにしてもただ寝るのではなく、一歩でも前に出る。隙があればオフロードを狙う(タックルされながら自立してボールを繋ぐプレー)」

――日本代表について。6月のツアーは途中離脱を余儀なくされました。

「そこは自分の怪我だったので、しょうがないです。また桜のジャージィを掴めるように、トップリーグで頑張るだけ。あの時は本当に悔しい思いもしましたけど、もう過去のこと」

――大野さんが抜けたロックのポジションには、その後、代表引退していたトンプソン ルーク選手が追加召集されました。

「相変わらず、いいですね。久しぶりのテストマッチ(国際真剣勝負)であれだけのプレーをしてさすがだな、と。ちょうど招集される前の日、メールでやり取りしていて。『おじいちゃん、怪我、大丈夫?』と言われて『トモ(トンプソンの愛称)は?』と返したら、その日、リコーとの練習試合に40分間出ていた。『お互い元気だねぇ』と話していたら、『ジェイミー(・ジョセフ日本代表ヘッドコーチ)に呼ばれた』と!

 あの時に限っては、東芝、サンウルブズ(日本代表と連携するスーパーラグビーのクラブ)でロックに怪我人が出た。痛いアクシデントでした。そしていま東芝では、松田(圭祐)、ジェームス・ムーアという若いロックが頑張っている。怪我が治ったらすぐメンバーの座が用意されるというわけではなく、いまは彼らが東芝のAチームです。彼らに追いつけるよう、梶川(喬介)、小瀧(尚弘)とともに切磋琢磨しているところです」

 リーグ戦中断期間の11月には日本代表ツアーが組まれており、残り2と迫った通算100キャップ達成へも期待がかかる。まずは1つひとつのセッションへ力を注ぐ。過去の栄光は振り返らない。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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