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アンチ・ホームレスの鋲が続々と撤去へ。謎のカウンター隊も登場

ブレイディみかこ在英保育士、ライター

ロンドン市内の高級マンションが正面玄関の外部スペースに鋲を打ってホームレスが座れないようにしたという話題は、瞬く間に全国的ディベートに発展した。これを受けて大手スーパー、テスコも、ロンドン中心部にある店舗の外側に同様の鋲を打っていると非難されていたが、抗議活動を受けて鋲を撤去したと英紙ガーディアンが伝えている。

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6月11日の夜、テスコのリージェント・ストリート店周辺に、目立つイエローの蛍光作業着を着た謎のカウンター隊が出現し、店の外に打ち付けられた鋲の周囲にコンクリートを流し込み始めたという。バンクシーの作業員版とでも呼びたくなるような数人の男性たちは、手にしたバケツから黙々とコンクリを流し終えると、素早くストリートの闇に消えて行ったそうだ。また、6月21日にリージェント・ストリートで行われる緊縮政策・格差拡大反対のデモのルートに同店舗の前が入っており、鋲が抗議活動の標的にされる可能性もあるため、テスコ側は撤去に追い込まれたようだ。

しかし、テスコは鋲がホームレス対策で取り付けられたものだったとは認めておらず、「お客様から、リージェント・ストリート店の外で反社会的行為を取っている人々がいるという苦情を受けて鋲を取り付けました。しかし、鋲をアンチ・ホームレス対策だと解釈し、懸念している人々もいますので、こうした声に答えるために撤去することに決めました」という声明を発表している。

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映画監督のケン・ローチが昨年設立した左派政党レフト・ユニティーもネットで抗議活動を続け、6月12日には同店舗の前で撤去を訴えるデモを行った。「アンチ・ホームレスの鋲を全ての場所から撤去する運動は今後も続けます。我々は、公共の場が鋲だらけになっているような社会には住みたくありません。ホームレスの人々は鳩じゃありません」と同党のビアンカ・トッドは語っている。

ホームレス支援団体Homeless Linkのジャッキー・マクラスキーは、「ホームレス除けの鋲の一件は、この国がいかにシリアスな問題を抱えているかという殺伐としたリアリティーを露呈しました。鋲が撤去されている動きは歓迎しますが、真の解決は誰も路上で寝なくて済む社会にすることでしょう」とコメントしている。

また、今回の鋲問題が議論になるきっかけとなったロンドンのサウスウォーク・ブリッジ・ロードの高級マンションからも鋲が撤去されたとBBCニュースが伝えている。

在英保育士、ライター

1965年、福岡県福岡市生まれ。1996年から英国ブライトン在住。保育士、ライター。著書に『子どもたちの階級闘争』(みすず書房)、『いまモリッシーを聴くということ』(Pヴァイン)、『THIS IS JAPAN 英国保育士が見た日本』(太田出版)、『ヨーロッパ・コーリング 地べたからのポリティカル・レポート』(岩波書店)、『アナキズム・イン・ザ・UK - 壊れた英国とパンク保育士奮闘記』、『ザ・レフト─UK左翼セレブ列伝 』(ともにPヴァイン)。The Brady Blogの筆者。

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