東側に危険な雨域を伴った(中型で弱い強さの)台風4号が沖縄を通過し九州に接近・上陸か
台風の大きさと強さ
台風は、風速15メートル以上の風の範囲から決めた大きさの分類と、最大風速から決めた強さの分類で分けられています(表1)。
ただ、気象庁では、平成12年(2000年)から、一般の利用者に「それほど危険ではない」との安心感を与えないように、5つの表現を使わないこととしています。
「弱い」と言っても、「台風としては弱い」だけであり、強い風や雨によって大きな被害が発生する可能性があるのですが、利用者が「弱い=たいしたことがない」と受け取ってしまうのではないかとの判断からです。
これは、前年の8月14日に神奈川県の玄倉川で、キャンパー等が警告等を無視して中洲に取り残され、13人が亡くなるという事故を受けて行った一連の措置の一つです。
現在、沖縄に接近中の台風4号は、使わない階級である「中型」で「弱い強さ」の台風ですが、東側の広い範囲に雨雲を伴っており、油断できない台風です。
今年の梅雨と台風4号の雨
今年、令和4年(2022年)の梅雨は、これまで例をみない変則的なものでした。
5月4日に沖縄地方で平年より6日早く梅雨入りし、5月11日には鹿児島県奄美地方で平年より1日早く梅雨入りしたものの、太平洋高気圧の北への張り出しが弱く、梅雨前線は沖縄近海からほとんど北上しませんでした。
このため、西日本から東海地方の梅雨入りが大幅に遅れています。
ただ、関東甲信地方だけは、オホーツク海の高気圧から冷たい空気が流入し、曇りや雨の天気が続いたことから、梅雨前線による雨ではありませんが、6月6日に平年より1日早い梅雨入りとなっています。
このため、沖縄・奄美地方は平年の2~3倍の雨が降った一方、西日本から東日本では雨が少ない状態が続いていました。
6月中旬になると、太平洋高気圧が強まり、6月11日の九州を皮切りに、15日には東北まで梅雨入りし、梅雨がないとされる北海道以外は、全て梅雨入りとなりました(表2)。
そして、6月20日に沖縄地方、6月22日に鹿児島県奄美地方が梅雨明けしました。
その後、太平洋高気圧の勢力が例年より早く強まり、6月27日から29日にかけて、記録的に早い梅雨明けが相次いでいます。
南海上から、暖かくて湿った空気が、流入したことに加え、強い日射が加わって、各地で記録的な高温が続いています(図1)。
群馬県の伊勢崎では、6月25日に最高気温が40.2度、6月29日に40.0度と、全国ではじめて6月の40度超えとなりました。
日本の水資源として重要な梅雨の雨は、沖縄地方では多く、更なる大雨では、災害が心配となります。
また、梅雨の雨が極端に少なくて水不足が起きている西日本から東日本では、恵みの雨となる可能性もありますが、台風の動きが遅いことから長時間の雨になり、恵みの雨を通りこして災害が発生する懸念もあります。
台風4号の進路予報
台風4号は、7月1日9時に日本の南で発生した後、進路を北から北西に変え、2日23時に沖縄本島を通過しました。
その後、東シナ海を北上、九州に接近・上陸する可能性もあります(図2)。
台風4号の進路予報は安定して同じ傾向が続いていますが、台風4号に関する情報は、最新のものをお使い下さい。
台風4号が進んでいる海域は、海面水温が台風が発達するとされる27度以上の海域ですので、少し発達します。
しかし、7月にはいったばかりの東シナ海の中部以北では、海面水温が27度以下ですので、台風4号の大きな発達はないと考えられます。
しかし、台風4号は東側に雨雲を伴っています(タイトル画像参照)。
しかも、動きが遅い台風ですので、長時間の雨となり、台風から離れた所でも大雨を降らせる可能性があります。
図3は、コンピュータで計算した風と雨の分布予想ですが、台風4号が東シナ海にあっても、雨域は東北地方まで広がっています。
梅雨期間中の雨が、例年とは違った降り方をしている所への大雨で、不測の事態が起きる可能性がありますので、台風4号の本体だけでなく、台風の東側に広がる雨雲に対する警戒も必要です。
梅雨は明けていますが、梅雨前線に向かって台風が接近するという危険な状態に似ています。
タイトル画像、図2、図3の出典:ウェザーマップ提供。
図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。
表1の出典:饒村曜(平成5年(1993年))、続・台風物語、日本気象協会。
表2の出典:気象庁ホームページ。