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【インタビュー】平原綾香の現在地――「Jupiter基金コンサート」への願い、ミュージカルへの想い

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
Photo/Makoto Nakagawa

ライフワークの『平原綾香 Jupiter 基金コンサート』、昨年松任谷正隆と共同プロデュースで行なった20周年記念ツアー、そしてミュージカルデビュー10周年を迎え、改めてミュージカルの存在とは?――平原綾香の現在地

平原綾香が音楽を通じて社会貢献、様々な支援を行なうチャリティコンサート『平原綾香 Jupiter 基金コンサート』。今年は「第8回 平原綾香 Jupiter 基金 My Best Friends Concert〜顔晴れ[がんばれ]こどもたち〜with Orchestra」として、初めてオーケストラを迎え3月20日に東京国際フォーラムホールCで行われる。このコンサートについて、そして昨年デビュー20周年を記念し、松任谷正隆との共同プロデュースで行なった「平原綾香 20th Anniversary Concert Tour 2023 ~Walking with A-ya~」について、さらにミュージカルへの思いをインタビューした。

写真提供/Office MAMA
写真提供/Office MAMA

「松任谷正隆さんのプロデュースは自分の胸に問いかけてくるというか、クエスチョンをもらう演出で、不思議な感覚でした」

20周年記念ツアーは松任谷正隆と平原の共同プロデュースというスタイルで行ない、平原綾香というアーティスト、人間としての39年間を紐解く旅のようで、人生と歌がリンクした圧巻のステージだった。最終日(12月24日)の大阪フェスティバルホールのステージ上で「このツアーは(松任谷)正隆さんの魔法だった」と語った平原に、改めてこのツアーを振り返ってもらった。

松任谷正隆
松任谷正隆

「正隆さんにプロデュースをお願いすると『共同でやろう』と提案してくださって、私の人生を振り返るストーリー仕立てのものにすることになり、正隆さんから1回4時間ぐらいのインタビューを3回受けました(笑)。正隆さんのあの演出は誰にも真似できないと思います。正隆節というのがあって、何とも言えない心の中で消化し切れないものを残していくんです。今回も曲数がすごく多かったのですが、何かひとつ自分の胸に問いかけてくるというか、クエスチョンをもらう演出で、不思議な感覚でした。スポーツをやっている人が、この監督のためなら頑張れると思うのと同じ感覚というか。正隆さんの演出は、ゴールがとても美しい景色だということがわかっているので、とにかく忠実に再現しようとついていきました。実は正隆さんが会場に来ない日に演出を少し崩してみたんです(笑)。でもやっぱり見えてくる景色が違う、崩さずにやろうって思いました」。

平原はミュージカルスターであり、サックスプレイヤーであり、そして以前からボイスパーカッションを駆使するなど、ミュージシャンの側面も色濃く持っている。今回のライヴではルーパーを使って声をダビングし即興でビートを作り上げたり、ミュージシャンとしてのリアルな姿をファンに伝えた。

「ルーパーは音楽マニアの方に刺さったみたいですが、最初何をやっているのかわからかった人もいたようです(笑)。出し惜しみすることなく、もうこれでもかっていうくらいやらせていただきました。正隆さんと平原綾香の個性を感じていただけた内容になったと思います」。

『第8回 平原綾香 Jupiter 基金 My Best Friends Concert〜顔晴れ[がんばれ]こどもたち〜with Orchestra』は、「令和6年能登半島地震」の被災地医療支援を行なうための支援金として寄付

Photo/Hiroki Nishioka(以下同)
Photo/Hiroki Nishioka(以下同)

今年8回目となる「平原綾香Jupiter 基金コンサート」。集まった寄付金の寄付先は限定せず、その時々で「一番困っている人達」の元に届ける。「子どもたちの笑顔を見たい」という平原の思いから、世界中の困っている子供達たちを応援するという強い思いがある。今年は元旦に発生した「令和6年能登半島地震」の被災者のために、被災地医療支援を行なうための支援金として認定NPO法人「ジャパンハート」を通じ寄付することが発表された。「第8回 平原綾香 Jupiter 基金 My Best Friends Concert〜顔晴れ[がんばれ]こどもたち〜with Orchestra」について聞かせてもらった。

「皆さんのおかげでここまで来ることができました。今まで日本だけではなく、世界中の困っている子供たちへの支援をずっとやってきました。今回能登半島地震で被災した子供達がたくさんいますので、被災地医療支援のために使っていただける認定NPO法人『ジャパンハート』さんに寄付することを決めました。『ジャパンハート』さんは2020年に寄付させていただいたミャンマーの養育施設『Dream Train』さんとつながりもあって、子供たちへの支援を積極的に行なっている団体です。“医療の届かないところに医療を届ける”を活動理念にしていて、地震発生後すぐに避難所での医療支援活動を開始しています。今回<平原綾香 Jupiter 基金>の寄付が少しでもお役に立てれば嬉しいです」。

母校・洗足学園ニューフィルハーモニック管弦楽団との共演が実現

「第8回 平原綾香 Jupiter 基金 My Best Friends Concert〜顔晴れ[がんばれ]こどもたち〜with Orchestra」では初めてオーケストラを迎えて行われる。平原の母校・洗足学園ニューフィルハーモニック管弦楽団との共演が実現する。

「オーケストラの音っていいですよね。不思議なのが、音色がひとりひとり違ったり、タイミングや音程感が若干違っていたりする方が、より共鳴して心に響くアンサンブルになるような気がします。みんな違うから美しいハーモニーが生まれる。今回はオーケストラ以外にも、カルテットやギターデュオ、様々なスタイルで色々な曲を披露する予定です。少しネタばらしをすると、『Jupiter』はもちろん、恒例になっていますが1曲目は感謝の気持ちを込めて『ありがとう』、ラストはミュージカル『ウィキッド』から「For Good(あなたを忘れない)」を歌います。その他にも今歌うべき、届けたい曲をたくさん用意しています」。

今年ミュージカルデビュー10周年。「誰か違う役、人になって演じることが私にとっては癒しになっています」

平原は今年ミュージカルデビュー10周年を迎え、昨年初演し好評だったミュージカル『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』(6月20日~8月7日※平原は6日まで 東京・帝国劇場、9月大阪公演)に出演する。ミュージカルとコンサートツアー、ふたつの存在が平原を表現者として進化させている。

「この10年はミュージカルとコンサートツアーの両方があって、それがもう自分のリズムになっているというか。『ムーランルージュ』で私に興味を持ってくださった人の中には、コンサートツアーでも聴きたいと言ってくださる人もいて、ミュージカルに来れなかった人はコンサートツアーで聴きたいと足を運んで下さいます。ミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』(初演2014年)に出演した時、オペラの発声でずっと歌っていたら、ポップスが急に歌えなくなった時があって。ちょっと焦りましたがだんだんコツがつかめてきて、今はコントロールできるようになってきました。それからミュージカルで誰か違う役、人になって演じることが私にとっては癒しになっています。もちろん誰かをある期間演じ続けることは大変ですが、ずっと平原綾香と向き合っているから、癒されるんです。役に入りすぎてなかなか抜けないこともありました。『メリー・ポピンズ』をやった後は、友達と話していると『ちょっとそのメリー・ポピンズっぽい話し方止めてくれる?」って言われたり、エレベーターのボタンを押す時もそれっぽい動きになっていました(笑)』。

「シンガー・ソングライターとしてではなく、その作品にひたすら打ち込むことができるミュージカルは、自分の性格にも合っていると思う」

Photo/Makoto Nakagawa
Photo/Makoto Nakagawa

ミュージカルは自身の性格にも合っているという。

「自分で曲を書いてアルバムを作って、コンサートツアーをするというのがメインではありますが、ミュージカルはもう作品があって、そこに打ち込むということができるので、何かに頑張ることが好きな性格の私としては、やっぱり癒されるんです」。

「『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』のサティーンのあの妖艶さや意思の強さは、私に新しい引き出しを与えてくれました」

19世紀末のナイトクラブを舞台に、マドンナやレディ・ガガ等の音楽約70曲を散りばめ、ショービズ界の恋模様を描く『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』で平原は、クラブのスター・サティーンを演じる。

「あの妖艶さや意思の強さは、私に新しい引き出しを与えてくれました。だからもう永遠にサティーンを演じていたいです、おばあちゃんになっても(笑)」。

「平原綾香 Jupiter基金」オフィシャルサイト

平原綾香オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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