人体が粉々に…米衛星が捉えた金正恩「公開処刑」の現場写真
米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は17日、北朝鮮における人権侵害について話し合う国連安全保障理事会の非公式会合のインターネット配信を中国が妨害し、北朝鮮の残虐行為を世界から隠ぺいしようとしていると非難した。
非公式会合は米国とアルバニアが共同で主催したが、インターネット配信は15カ国の理事国全ての同意が必要だとされる。常任理事国の中国とロシアはかねてから、人権問題は安保理にそぐわないとして反対姿勢を取ってきたが、ネット配信まで阻止するのはまれなことだという。
これを受けてトーマスグリーンフィールド大使は中国とロシアを批判しつつ、北朝鮮の核・弾道ミサイル計画は「人権侵害と表裏一体」だとも主張している。
中国の妨害でネット配信がなされなかったのは、北朝鮮の人権問題改善にとって良くない結果だが、この問題で米中の対立が深まるなら、むしろ歓迎すべきことかもしれない。
米国はその気になれば、北朝鮮の人権侵害について具体的な証拠を提示し、金正恩総書記や中国を圧迫することもできる。
たとえば米国のNGO、北朝鮮人権委員会(HRNK)のグレッグ・スカラチュー事務総長と商業衛星写真分析を行うASA(AllSource Analysis)のジョセップ・バミューデス博士は、平壌郊外にある姜健(カン・ゴン)総合軍官学校で2014年10月7日に観察された動きを、衛星写真から把握している。
(参考記事:【写真】玄永哲氏の銃殺で使用の「高射銃」、人体が跡形もなく吹き飛び…)
衛星写真では、広場に何らかの物体10個が一列に並べられている様子が観察された。それに向かって6門のZPU-4対空機銃(北朝鮮で言う高射銃)が並べられていて、その後ろには、射撃の様子を観察するためと見られる場所が設けられている(下)。
そして日本のアジアプレスは同年10月、北朝鮮の内部情報に基づき10人の朝鮮労働党幹部が同軍官学校で処刑されたと報じており、これはHRNKの分析と時期的に符合する。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
ちなみに、14.5mm口径の銃弾は威力が大きく、通常は軽装甲の車両やヘリコプター、コンクリート塀などの遮蔽物を貫通・破壊するのに用いられる。人間に対して使われたら、文字通り体が粉々に吹き飛ぶという。
また、姜健総合軍官学校は幹部の処刑に頻繁に使われており、金正恩氏の夫人である李雪主氏が所属していた銀河水管弦楽団の元メンバーの処刑にも使われたとされる。
米国がこの種の情報を提示し、国際世論の関心を北朝鮮の人権問題に向かわせるなら、何が起こり得るか。金正恩氏が心を入れ替えるようなことは、まず起きそうにない。しかしそれに比べると、中国が脱北者に対する政策を変更することは、可能性が高いように思える。
中国が脱北者の強制送還を止めるか、あるいは消極的になるかすれば、北朝鮮の人々の外部とのアクセスが増え、北朝鮮社会に徐々に影響を与えるかもしれない。
北朝鮮の体制をすぐに変えるのは不可能だが、いずれ変化を引き出すための土壌づくりは、早く始めるに越したことはない。
赤いカコミの中には処刑対象者を縛り付けたと思われる杭のようなものが、青いカコミの中には対空砲が見える。(画像:HRNK、RFA)