電子書籍リーダーの利用率は6.7%、タブレット型端末は39.2%
持てはやされた電子書籍リーダーの現状
高性能を誇るものの機動性が今一つのパソコンと、機動力に長けるが性能面や入力インターフェイスの上で難があるスマートフォン。それぞれ一長一短の性能を持つ両端末の合間にある存在とも表現できるタブレット型端末。また、新時代の読書スタイルともいえる電子書籍を購読・閲読するのを主目的とした、専用タブレット型端末として電子書籍リーダーも普及が著しいように見える。今回は総務省が2021年8月に情報通信政策研究所の調査結果として公式サイトで発表した「令和2年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(※)の公開値を基に、電子書籍リーダー、そしてタブレット型端末の普及・利用状況を確認する。
次に示すのは電子書籍リーダーの回答者自身における利用状況。「利用している」「利用していない/将来欲しい」「利用していない/将来も欲しくない」の3選択肢から選択してもらっている。なお今件選択肢は回答用紙には「電子書籍リーダー(AmazonのKindleなど)」と記載されている。
全体では利用率は6.7%。20代では利用率が10.8%と高く、学生・生徒でもほぼ同じ値が出ている。大学生が自前で購入し利用している状況が思い浮かばれる。30代以降は年齢とともに利用率は下がり、60代では4.3%。職業形態別では学生・生徒以外ではフルタイムの人がもっとも使っているが、それでも7.4%。
世帯年収別では400~600万円未満でイレギュラーが生じているが、おおよそ高世帯年収ほど高い利用率を示している。一方、都市規模別では法則性のようなものは見られない。
非利用者においては大体1~2割程度が将来欲しいと考えているが、8割前後は将来も欲しくないとする回答。10代、学生・生徒の人がいくぶん将来欲しいとの意見が多いように見えるが、それでも2割強でしかない。大多数は将来も電子書籍リーダーは必要無いとの認識のようだ。
「タブレット型端末が欲しい」学生・生徒では4割近く
続いてタブレット型端末。回答用紙の機種に関する説明は「タブレット端末(iPad、Nexus9、GalaxyTabなど)」となっている。
利用率は全体では4割近く、男女別ではやや男性が高い値。そして意外にも10代の利用率が4割近くとなっているのが目にとまる(世帯別所有率ではないことに注意)。これはタブレット型端末に関する他の調査でも見受けられる動きだが、スマートフォン同様に子守り用の玩具として保護者から与えられる場合や、家族共有の端末として利用する事例が多々あるからだろう。そして40代で利用率はピークとなり、あとは年齢とともに利用率は下がる。
就業形態別では法則の類は見受けられないが、世帯年収別ではおおよそ高世帯年収ほど利用率が高めの値が出ている。都市規模別では特徴的な動きは無い。
非利用者における利用(≒所有)希望傾向だが、電子書籍リーダーとは異なり、「将来欲しい」で高い値が示されている。全体では2割強、10代では4割近くもの人がタブレット型端末の利用を希望している。一方高齢層では利用していないし将来も欲しくない人が多数におよび、60代では5割強が欲しくないと答えている。
世帯年収別においては、利用率は高世帯年収ほど高かったため、当然非利用率は低世帯年収ほど高くなる。そして利用希望率は世帯年収で大きな変化は無し。あえて言えば低世帯年収ほど利用したいとの意見が多いくらいか。
アマゾンKindleの日本版で一気に日本国内でも花開いた感もある電子書籍だが、実際のところ電子書籍リーダーの普及状況は今一つで、利用・所有願望もかんばしくない。タブレット型端末の需要の高さと併せ見ると、パソコンやスマートフォン、タブレット型端末による閲読・購読をする人が多分で、電子書籍リーダーを使って電子書籍を読む人は少数派のようにも見える。
機動性の高いモバイル端末とはいえ、複数を持ち運ぶのにはやはり難儀する。スマートフォンなりタブレット型端末の多機能性を併せ考えると、さらにもう一つ電子書籍リーダーを持ち運ぶよりは、多少機能の上で劣っていてもスマートフォンなどで見た方が、総合的な利便性では上になるとの判断が、多くの人に働いているのだろうか。
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※令和2年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査
2021年1月12日から1月18日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォーターサンプリング(調査地点を無作為に抽出、地点ごとにサンプル数を割り当て、該当地域で調査対象者を抽出する方法)によって抽出し、訪問留置調査方式により、13~69歳を対象とする1500サンプルを対象としたもの。アンケート調査と日記式調査を同時並行で実施し、後者は平日2日・休日1日で行われている。よってグラフの表記上は「10代」だが、厳密には13~19歳を意味する。
調査のタイミングにより一部調査結果においてイレギュラー的な動きが確認できるが、これについて報告書では「調査時期の違いによる影響や単年の一時的な傾向である可能性も否定できず、継続的な傾向の把握については今後の調査などの結果も踏まえる必要がある」「令和2年度調査は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う、11都府県を対象とした緊急事態宣言下で行われたものであることにも留意が必要」と但し書きを入れている。
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