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部数トップの「りぼん」は11.3万部…少女向けコミック誌の部数動向(2024年7~9月)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
コミック誌は男子向けだけでなく女子向けのものも人気だが(写真:アフロ)

部数は「りぼん」がトップ

日々進歩する技術、中でもインターネットとスマートフォンをはじめとしたコミュニケーションツールの普及に伴い、紙媒体は立ち位置の変化を余儀なくされている。すき間時間を埋めるために使われていた雑誌は大きな影響を受けた媒体の一つで、市場・業界は大変動のさなかにある。その変化は少年・男性向けコミック誌ばかりでなく、少女・女性向けのコミック誌にもおよんでいる。今回はその雑誌のうち、少女向けコミック誌(少女向けのコンセプトで発刊されているコミック雑誌。おおよそ未成年でも高校生ぐらいまでが対象)について、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(※)から、実情を確認する。

まずは少女向けコミック誌の現状。最新データは2024年7~9月分。

↑ 印刷証明付き部数(少女向けコミック誌、万部)(2024年4~6月期と7~9月期)
↑ 印刷証明付き部数(少女向けコミック誌、万部)(2024年4~6月期と7~9月期)

少女向けコミック誌ではトップは「りぼん」。第2位の「ちゃお」に1万3333部もの差をつけている。「ちゃお」は以前は、圧倒的な部数で他誌の追随を許さないトップ独走ぶりを見せていたのだが、ここ数年で急激に部数を落とし、前期から続く形で今期でも「りぼん」に次ぐポジションとなってしまった。

第3位は「LaLa」、そして「花とゆめ」が続いている。このあたりの順位は変わらない。

「別冊フレンド」は9期前に大きく部数を増やしたが(7万2000部)、その次の期では大きく減らしてほぼこれまでの水準・部数減少傾向に戻ってしまった。今期では前期からさらに部数を減らしている。

↑ 印刷証明付き部数(別冊フレンド、部)
↑ 印刷証明付き部数(別冊フレンド、部)

「別冊フレンド」は講談社発行の月刊コミック誌で、1965年に「週刊少女フレンド」の姉妹誌のポジションとして「別冊少女フレンド」との名前で創刊、1984年に現在の「別冊フレンド」に改名した。今期の印刷証明付き部数は1万7000部。

9期前における部数の飛躍は2022年6月13日に発売された7月号において、「東京卍リベンジャーズ」のコラボ企画として「人気キャラクタークリアカード8枚セット」と「名シーンふきだしステッカー」が付録に収められたことが原因だと思われる。以前同様のコラボ企画の付録を収めた2022年1月号は発売前の重版が決定されるなどで世間を騒がせたが、2022年7月号はそれ以上に大きく部数を引き上げる形となった。今期は前期に続きそのような特需的な号はなかったため、通常の部数動向が継続しているまでの話。ここ数期横ばいだった部数がさらに落ち込みを見せ、危機感を覚える流れではある。

プラスは1誌…四半期変移

次に前期と直近期との部数比較を行う。雑誌は季節で販売動向に影響を受けやすいため、精密さにはやや欠けるが、大まかに部数推移を知ることはできる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前期比)(2024年7~9月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前期比)(2024年7~9月期)

プラス誌は「LaLa」1誌のみで、誤差領域(上下幅5.0%)を超えたプラス幅を示している。それ以外はすべてマイナスで、誤差領域を超えたマイナス幅は9誌が該当。

少女向けコミック誌で部数第2位の「ちゃお」は、今期の前期比はマイナス6.3%と誤差領域を超えた下げ幅。

↑ 印刷証明付き部数(ちゃお、部)
↑ 印刷証明付き部数(ちゃお、部)

該当期間に発売されたのは3誌。それぞれ読者層に合わせた魅力的な付録(推し活トート、ミニボストンバッグ、コミックスメモ)が高評価を受けている。連載陣にもファンは多く、部数が少女向けコミック誌で第2位なのも分かるというもの。実購読者からの評価も高い。

一方で中長期的に見れば部数は漸減中であることもまた事実。しかもこの2年ほどは下落傾向に歯止めがかからない状態で、前期では少女向けコミック誌のトップの座から転落してしまい、今期でも復帰がかなわない状態。一体何が「ちゃお」にあったのだろうか。

「ベツコミ」は少女向けコミック誌の前期比では最大の下げ幅、マイナス25.0%を示している。

↑ 印刷証明付き部数(ベツコミ、部)
↑ 印刷証明付き部数(ベツコミ、部)

「ベツコミ」は1970年創刊の小学館が発行する女子高校生をメインターゲットとした月刊漫画雑誌。元々は「別冊少女コミック」だったが2002年4月の「月刊フラワーズ」創刊に合わせて連載陣の一部がその雑誌に移動するとともに、「ベツコミ」に名称を変えている。

2期前に部数が伸びたのは、2024年2月号で男性アイドルグループ・Snow Manのメンバー渡辺翔太氏が、同誌で連載されていた「先生さようなら」のドラマ化で主演となるのに際して表紙を飾るのとともに特集記事が組まれたのが注目を集め、セールスのけん引役となったようだ。しかしその勢いは続かず、前期に続き今期でも、前期比で部数を減らす形に。

プラスはゼロ誌…前年同期比

続いて前年同期比による動向。年ベースの変移となることから大雑把な状況把握となるが、季節による影響を考慮しなくて済むので、より確かな精査が可能となる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前年同期比)(2024年7~9月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前年同期比)(2024年7~9月期)

少女向けコミック誌は前年同期比ではプラスが無しで、「マーガレット」がプラスマイナスゼロ。それ以外はすべてマイナスで、「LaLa」以外は誤差領域を超えた幅のマイナスを示している。1割以上の下げ幅は9誌、2割以上に区切っても6誌。いずれも掲載作品に何か大きな動きがあったわけではなく、本質的な不調にあると解釈できる。特に数期前までは少女向けコミック誌では部数トップだった「ちゃお」がマイナス24.1%もの下げ幅を示しているのが気になるところ。もちろん、1年で部数を1/3以上も減らした「なかよし」「Sho-Comi」も大いに気になる。

少女向けコミック誌の前年同期比で唯一マイナスとならなかった「マーガレット」だが、部数そのものは低迷中。

↑ 印刷証明付き部数(マーガレット、部)
↑ 印刷証明付き部数(マーガレット、部)

「マーガレット」は前期比では大きく落ち込んでいるものの、前年同期が同様に落ち込んだ数字だったため、それとの比較でマイナスとならずに済んだ。部数そのものは低迷中で、1万1000部を底値にしている動き。つまり今期は底をはっている状態である。

少女向けコミック誌全体において、起死回生の策が必要な時期に来ていることには違いない。新型コロナウイルスの流行が部数減少傾向に拍車をかけた可能性は否定できないが、それを裏付けるものは無い。

他方、多くの雑誌で電子化が行われており、電子版に読者の一部を奪われ、結果として紙媒体としての印刷部数が減少している可能性はある。あるいは単に、需要に合わせた部数の削減なのか。

しかしながら他の雑誌同様、電子版の部数は非公開のため、その推測の検証ができないのは残念に違いない。

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※印刷証明付き部数

該当四半期に発刊された雑誌の、1号あたりの平均印刷部数。「この部数だけ確かに刷りました」といった印刷証明付きのものであり、雑誌社側の公称部数や公表販売部数ではない。売れ残り、返本されたものも含む。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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