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学校の学びをモノトーンからカラフルに変える

前屋毅フリージャーナリスト
住田氏の著書『カラフルな学校づくり』(学分社) 撮影:著者

 公立の学校といえば同じようなことを同じようにやる、やらせる、色に例えるなら「モノトーン」のイメージが強いのではないだろうか。しかし、「カラフルであるべき」と主張する現役の校長がいる。横浜市立日枝小学校の住田昌治校長である。

 彼は今年1月、『カラフルな学校づくり』(学文社)という本を上梓している。そのなかで、2018年4月に日枝小に再任用校長として赴任してきた初日に行った「あいさつ」を紹介している。

 住田校長は教職員に向かって、「これまでの教職員集団は、共同文化すなわち同質同調性が原則、個々の主張よりも組織メンバー全員の協調や同調を重視してきました。共同ありきで画一性へと拘束し、個性や自主性が低いのです」と述べた。それを変えていきたい、と彼は訴えた。それによって、子どもも教職員も「生き生き」と学べる学校になる、というのが彼の考えである。つまり、「カラフルな学校づくり」だ。

 なぜ、彼はそう考えるようになったのか。住田校長にインタビューしてみた。

 日枝小学校に赴任する前に彼は、やはり横浜市内の校長を8年間務めている。その前は、ほかの学校で副校長だった。

「副校長だった学校が、環境教育に熱心に取り組んでいました。子どもたちが米作りをしたり、野菜作りに取り組んでいました。しかし、米の取れ高を競うということだけが目標になってしまっていました」

 それだけが学習ではないだろう、と彼は考えた。「田んぼの土とか水とか、そこに棲む生物のこととか、飢饉のこととか、もっと学ぶことを広げてもいいんじゃないかと考えたんです」、と住田校長。

 広げた問題は、「与えられたもの」ではなく、「自らが気づいたもの」である。そこから始まる学びは、主体的なものであり、だから身についていく。

「教室での授業だけで完結して終わってしまう。目先のことばかりで、授業は授業で終わりになってしまう。でも、みんな分かっていない。自分の生き方とか考え方まで変わっていかないと、ほんとうに身につかない」とも、住田校長はいった。

 生き方とか考え方まで変える授業は、単一のものになりようがない。いろいろなテーマがあり、学び方があるはずである。カラフルな授業になるのだ。

 そういう学校づくりを目指すなかで住田校長は、ESDに積極的に取り組んでいく。ESDは「Education for Sustainable Development」の略であり「持続可能な開発のための教育」と訳されている。さまざまな社会の課題を自らの問題としてとらえ、身近なところから取り組み、課題解決につながる新たな価値観や行動を生みだし、それによって持続可能な社会を創造していくことを目指す学習活動である。住田校長が続けた。

「いままで良かれとおもって一生懸命やってきたけれど、結果的に持続不可能になっていく社会をつくってきた」

 それを根本的に変えるのが、教育の現場である。とはいえ、その実践は簡単ではない。住田校長も、その考えを前任校で浸透させるのに8年かかった。学校をモノトーンからカラフルに変えるには、時間も手間もかかるのだ。

 しかし、それをやらなければ、学校はモノトーンのままである。それは、言うまでもなく、子どもたちのためにならない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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