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1月7日から出国税1000円の徴収がスタート。キャンセル時に出国税は戻ってくるの?

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
LCCが主に発着する成田空港第3ターミナル(2018年12月、筆者撮影)

 1月7日より日本国内から海外へ出発する際に新たに国際観光旅客税(以下:出国税)が日本出国時に一律1000円徴収される。

 旅行者で対象外となるのは、2歳未満の子供と日本で24時間以内に国際線乗り継ぎをする場合のみであり、飛行機に加えて、クルーズ船など船で出国する場合も対象となるほか、2歳以上であれば年齢に問わず1000円が徴収される。徴収方法は飛行機を利用する場合には航空券を購入の際に空港税などと同様に航空券料金に上乗せされる方式となる。

1月6日までに購入すれば、1月7日以降出発でも出国税は不要

 1月7日以降の出発分でも1月6日までに航空券を購入すれば支払いは免除されるが、パッケージツアーなど旅行会社で販売されている商品については、支払いが済んでいる場合でも1月7日以降に航空券を発券することも多く、既に1000円を徴収されているケースもある。なお、航空会社のホームページで購入する場合は、決済が済んだ時点で即発券になるので1月6日までに購入すれば出国税の支払いは不要となる。

 政府によると、出国税は観光先進国実現に向けた観光基盤の拡充・強化を図るための恒久的な財源を確保するために創設された税金であり、使途に関する基本方針としては、訪日外国人旅行者 2020年4000万人の目標達成に向けて、主に3つの分野に活用されることになっている。

1.ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備

2.我か国の多様な魅力に関する情報の入手の容易化

3.地域固有の文化、自然等を活用した観光資源の整備等による地域での体験滞在の満足度向上

出国税を含めて、日本出発時に必要な諸経費は?

 そこで日本出国時に航空券にプラスして必要な諸経費について、改めてまとめてみる。

 羽田空港から出発する場合には、羽田空港の空港使用料として、旅客取扱施設利用料(PSFC)として大人2570円・小人1280円が徴収される。成田空港からの場合は、旅客サービス施設使用料(PSFC)と旅客保安サービス料(PSSC)合わせて大人2610円・小人1570円が徴収される(第3ターミナルからの出発便は大人1540円・小人1030円)。また関西空港でも旅客サービス施設使用料(PSFC)と旅客保安サービス料(PSSC)合わせて大人3040円・小人1680円(第2ターミナルからの出発便は大人・小人共に1540円)となっている。

 つまり羽田空港から出発する場合(大人)には、旅客取扱施設利用料(PSFC)として2570円、出国税1000円の合計3570円が必要となる。また、海外空港における空港税などの諸経費、航空会社が徴収する燃油サーチャージ(燃油特別付加運賃)なども別途加算されることになる。

一部のLCCではキャンセル時は税金も払い戻しできないケースも

 出国税について、航空券の旅程通りに搭乗する場合に1000円徴収されることは法律で決められたルールなるので異論はないのだが、キャンセルなどで購入した航空券を利用しない場合の取り扱いについて疑問を呈したい部分がある。

 フルサービスキャリアの多くは、キャンセルする場合においては所定の払戻手数料(キャンセル料)などを差し引いた後、燃油サーチャージや空港使用料、今回導入される出国税は全額返金されるルールになっているが、LCC(格安航空会社)の多くは、航空券以外の諸経費部分において、払い戻し手数料という名目や払い戻し一切不可という条件で返金をしないケースが多発している。航空券部分については航空会社の設定するルールで航空券を購入しているので払い戻しがない場合でもルール通りで特段の問題はないが、出国税や空港使用料の部分は、航空会社が代理徴収をしているだけである。搭乗しない旅客の出国税や空港使用料を払い戻さないという対応は理解しがたい。

国でガイドラインを策定するべき

 少なくても搭乗しない場合で、便出発前に航空券を放棄(キャンセル)する手続きをした人に対しては払い戻しをするべきだと思う。今回の出国税は税金であることも踏まえた判断が求められる。出国税や空港使用料を合わせると最低でも2500円以上と決して安くはない金額であるからだ。乗らないのに徴収されっぱなしというのは納得できないだろう。特にLCCの航空券はセール運賃など変更・キャンセルが一切できないことから、フルサービスキャリアに比べても放棄するケースが多い状況にある。

 LCC側としては、返金に応じることになれば、返金に伴うコストと手間がかかることになるが、欠航や大幅遅延時に払い戻しの対応をオンライン上で可能である点を考えると、税金や空港使用料の払い戻しもシステム的には可能だろう。既に香港のLCCである香港エクスプレスはオンライン上で税金の払い戻しに対応しているケースもある。出国税に関しては、国が直轄で徴収する税金であることから、未使用時の対応も国としてガイドラインを策定して欲しいところだ。コストの部分で数百円程度の手数料は仕方ないかもしれないが、徴収しても実費程度に抑えるべきだろう。出国税のスタートを機に考えるべき問題だと思う。

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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