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リオ五輪最終予選、今夜開幕。現地カタールの前日練習で見えた課題と初戦のポイント

川端暁彦サッカーライター/編集者
前日練習に励むMF南野拓実。初戦のキーマンと見て間違いない(写真:六川則夫)

先発は久保と武蔵の2トップ、遠藤は先発か

練習の行われたカタールサッカー協会のグラウンド。気候は少し涼しいくらいの穏やかさ
練習の行われたカタールサッカー協会のグラウンド。気候は少し涼しいくらいの穏やかさ

1月13日、日本時間22時30分よりリオ五輪に向けたU-23日本代表の戦いが幕を開ける。対峙する相手は北朝鮮。2014年のAFC・U-19選手権準々決勝での敗戦など、日本にとって因縁深い難敵との初戦から、リオ五輪最終予選を兼ねるAFC・U-23選手権の戦いが始まる。

U-23代表はカタールサッカー協会の専用グラウンドで前日練習を行い、本番に備えた。鳥かご、スクエアパス、スプリントといった基礎的なメニューから、チーム結成以来継続しているビルドアップからフィニッシュまで持ち込むフォーメーション練習(相手の布陣は[5-4-1]を想定)、ハーフコートでの11対11、そしてセットプレーの確認という形で汗を流した。最後の紅白戦はハーフコートに22人を詰め込むために、自然とハードなプレス合戦となる中、球際の激しい攻防も続出。観ている側は故障者が出ないかとハラハラしたが、幸いにもアクシデントはなく、逆に実戦的な良い練習になったように見えた。

紅白戦から想定されるフォーメーションは[4-4-2]。先発はGKに櫛引政敏(鹿島)、DFが右から松原健(新潟)、岩波拓也(神戸)、植田直通(鹿島)、山中亮輔(柏)、中盤は右から南野拓実(ザルツブルク)、大島僚太(川崎F)、遠藤航(浦和)、中島翔哉(FC東京)、そして鈴木武蔵(新潟)と久保裕也(ヤングボーイズ)の2トップとなった。インフルエンザで離脱していた遠藤も戦列に復帰。まだ100%ではなさそうで、彼を外して原川力(川崎F)をボランチに入れる形も試していたが、キャプテンとしての精神面への影響も考えて、ここは先発で来るのではないか。

欧州組2名のフィットは課題

課題が見え隠れしたのはセットプレーで、「キッカー不在」というチームが抱えてきた問題をあらためて感じさせた。この先発のセレクションだと、右の蹴り手である矢島慎也や原川力が不在。大島が蹴っていたが、彼は決してスペシャリストではない。南野も試されたものの、こちらも得意なタイプとは言いがたい。一方、左は山中の一択。守備の良い亀川諒史(福岡)ではなく山中が先発になりそうなのも、セットプレーのキッカーになれる彼の特長を買ったからだろう。

久保と南野の欧州組2名も完全フィットとはいっていないように見えるが、こちらは大会を戦いながら合わせていくしかないだろう。南野の状態自体は悪くなさそうで、右からの崩し役、そしてフィニッシャーとしての期待感は十分。そして久保と鈴木の2トップはカウンターを狙うチームにとって生命線だが、スピードで裏を狙う鈴木とポスト役になれてクロスに強い久保と相性自体は良さそう。鈴木も「二人の関係だけでゴールを奪うようなシーンを作れれば」と意欲を語る。個人の懸念材料としては、シュートの精度などを含めて10番・中島の調子が今ひとつにも見えたことだろうか。負傷明けの松原も、まだ完調とは言えない状態で若干の不安要素はある。

もっとも、相手の北朝鮮はA代表で日本相手にも点を取っている長身FWパク・ヒョンイルがメンバー外になっており(監督は負傷を理由としている)、さらに出場停止選手もいるなど万全の状態ではない様子。どうしても初戦は不安要素が先行しがちだが、「対戦相手の監督たちもプレッシャーを感じていると思った」という手倉森監督のように、変に悲観的になるべきではないだろう。

プレッシャーとの戦いが始まる

前日練習を終えた選手たちは、口々に「初戦が大事」という言葉を残した。手倉森誠監督が「われわれにまず襲ってくるのは“プレッシャー”」と口にしたように、アジア予選は心理面での圧力との戦いという一面を持っている。その点、第1戦は初めて強いプレッシャーにさらされる試合であり、もしも初戦を落とせばより強いプレッシャーにさらされることになる試合と言える。選手たちもそれを分かっているからこそ、「初戦が大事」と言うわけだ。U-19年代や一昨年のアジア大会などで敗れたことで、「何も為し遂げていないチーム」(GK櫛引政敏)という意識が選手側にあることも、そうした思いを加速させているのかもしれない。

指揮官も「コンディションは良いように見えるし、トレーニングにはスピード感があった。でも、いざ本番になったら動けないということもあるかもしれない。それはプレッシャー以外の何物でもない。いかにプレッシャーをコントロールできるかがポイントになる」と強調する。

「最初の10分で決まると思っている」北朝鮮との初戦、若きサムライたちは襲い来るプレッシャーをはね除けて白星をつかみ取れるかどうか。6大会連続出場を目指す、リオ五輪に向けて最初の一歩を踏み出す。

サッカーライター/編集者

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。2002年から育成年代を中心とした取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月をもって野に下り、フリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカークリニック』『Footballista』『サッカー批評』『サッカーマガジン』『ゲキサカ』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。著書『2050年W杯日本代表優勝プラン』(ソルメディア)ほか。

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