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【オートバイのあれこれ】ただのレプリカじゃない。“鈴鹿8耐で勝つための”レプリカ。

Rotti.モトエンスー(moto enthusiast)

全国1,000万人のバイクファンへ送るこのコーナー。

今日は「ただのレプリカじゃない。“鈴鹿8耐で勝つための”レプリカ。」をテーマにお話ししようと思います。

「アールシーサンマル」。

この響きに、今もなお憧れを抱くバイクファンは少なくないでしょう。

「アールシーサンマル」とは、ホンダが1987年(昭和62年)にリリースした『VFR750R』のことです。

▲’80年代のホンダを象徴する“FORCE V4”の集大成とも言える存在がこのVFR750Rだ
▲’80年代のホンダを象徴する“FORCE V4”の集大成とも言える存在がこのVFR750Rだ

VFR750Rの型式が《RC30》だったことから、ニックネーム的にこう呼ばれました。

’80年代に生まれたバイクらしく、その佇まいは完全なレーサーレプリカ。

しかしこのバイクは、他のレプリカモデルとは一線を画する存在だったと言えます。

どういうことかというと、RC30は「レプリカ」という表現ではとうてい収まらないほどの設計がなされていたのです。

◆鈴鹿8耐レーサー・RVF750とほぼ同じフレーム


RC30のフレームは、当時のホンダの耐久レース用ワークスマシン『RVF750』と同じ金型を使って成形されていました。

RVF750と同じ金型を使うわけですから、当然RC30のフレームもRVFのものと全く同じ形に仕上がります。

厳密に言えば、ヘッドパイプ(ハンドルとの接合部分)の作りはややRVFと異なっていたものの、RC30のフレームは「レーサーRVFのものを使用」と言い切ってしまっても決して過言ではないレベルのクオリティだったと言えます。

◆パワーユニットもRVFとウリ二つ

フレームと同様、エンジンに関してもRVFに積まれていた8耐用V4ユニットがほぼそのまま踏襲されました。

マグネシウム合金製のエンジンヘッドカバーをはじめとし、クロモリ製のカムシャフト、チタン製のコネクティングロッド等、量産市販車ではまず使われることのないスペシャルパーツがコスト度外視でふんだんに投入されていたのです。

スペックは当時の馬力規制に合わせて77ps(輸出仕様は112ps)とされていたものの、HRC(ホンダレーシングコーポレーション)がRC30用に開発したレーシングキットを組み込めば133psまで一気にパワーアップさせることが可能でした。

▲RVFは’86年の鈴鹿8耐を制覇。画像のライダーはドミニク・サロンだ(パートナーはW・ガードナー)
▲RVFは’86年の鈴鹿8耐を制覇。画像のライダーはドミニク・サロンだ(パートナーはW・ガードナー)

ちなみに133psは’86年の8耐を制したRVF750(NW1C)とほとんど変わらないパワーで、これはつまり「莫大な開発費が注がれているホンダのワークスレーサーとほぼ同じエンジンパフォーマンスを手に入れられる」ということでした。

RC30は、アマチュアライダーでも“ウデ次第”でワークスマシンを喰える市販車だったと言って差し支えないでしょう。

◆別格のプライス。それでも予約が殺到

「RVF750の分身」ともいえる作りで発売されたRC30の価格は148万円。

当時、750ccクラスの市販車は大体70〜80万円で新車販売されていましたから、RC30は相場の倍ほどの値付けがされていたことになります。

ただ、それでもこのRC30のプレミア感に惹かれた人は多く、限定1,000台の予約枠に3,000件を超える購入希望の問い合わせが入り、RC30はやむなく抽選販売されることとなったのでした。

たしかにプライスタグだけを見ると高価に思えますが、開発に市販車とはケタ違いの費用が投入されているメーカーのワークスマシンと張り合えるポテンシャルを秘めていることを考えると、148万円は決して高くない、いやむしろ、人によっては「出血大サービス価格」に感じられたのかもしれませんね。

▲車両カタログの表紙。車両説明文の見出しには「RVF750と同じクオリティを求めた」と記されていた
▲車両カタログの表紙。車両説明文の見出しには「RVF750と同じクオリティを求めた」と記されていた


画像引用元:本田技研工業

モトエンスー(moto enthusiast)

バイクを楽しむライター。バイク歴15年で乗り継いだ愛車は10台以上。ツーリング/モータースポーツ、オンロード/オフロード、最新バイク/絶版バイク問わず、バイクにまつわることは全部好き。

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