「ウクライナに送られたくない」北朝鮮男性が相次ぎ脱北
北朝鮮外務省は今月4日、ウクライナ問題に関する国連安保理の決議案をめぐりロシアを支持する局長談話を発表した。
国連安保理は1日、ウクライナ4州で親ロシア派がロシアへの編入に向けておこなった「住民投票」を非難し、ロシア軍の即時撤退を求める決議案が提出されたが、ロシアが拒否権を行使して否決された。
北朝鮮外務省は談話で、「ロシアへの統合を志向したドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国、ヘルソン州とザポロジエ州の住民の意思を尊重する」と表明。同時に「上記の地域を自国の構成に受け入れることにしたロシア政府の立場を支持する」宣言した。
北朝鮮はこれに先立ち7月、ウクライナ東部の親ロシア派勢力が統治する「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」を独立国家として承認するなど、ロシアによるウクライナ侵略を一貫して支持している。
そして、北朝鮮からロシアに派遣された2万人とも言われる男性労働者の一部が、これら地域に再派遣されているが、それを恐れ脱北する事件が発生したと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。
(参考記事:【動画】北朝鮮労働者とタジキスタン労働者、ロシアで大乱闘)
RFAは、ロシアの高麗人(朝鮮系ロシア人)情報筋の話として、「最近、建設現場で北朝鮮労働者の姿を見かけない」と伝えた。別の情報筋も、ウラジオストクの現場で、北朝鮮労働者の姿が見えなくなったと伝えた。
ロシアに労働者を派遣しているのは、対外建設指導局傘下の7総局、8総局、大興(テフン)指導局、航空連合委員会、朝鮮労働党ホテル管理局、貿易部、国家保衛省(秘密警察)、対外経済省、軽工業省など多岐にわたる。
また、未来建設会社、南江(ナムガン)貿易会社、チフン建設会社の労働者は、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士を労働者として雇い入れている。
対外建設指導局傘下の組織は、30人から50人、多い場合は200人以上の労働者をひとまとめにして、建設現場に送り込む。彼らの間で、ドンバスに派遣させられるとの話が流れ、動揺が広がった。そこで、現場に送り出さずに待機させよとの指示が、現場幹部に対し先月初めに下された。
ところが、労働者はもちろんのこと、幹部の間ですら脱北する人が相次いだ。いずれも、ロシアがウクライナに侵攻したことをよく知っているからだ。
周知のとおり、ドンバス地方がウクライナ軍とロシア軍がぶつかり合う最前線だ。そんなところに送られたら、「命がいくつあっても足りない」ということだろう。
また長時間労働に加え、給料のほとんどがピンハネされている労働者の中には、幹部に逆らい、処罰を恐れて脱北してしまう者もいるとのことだ。それに加え、ウラジオストク駐在の北朝鮮領事館から、ドンバス行きに向けて待機せよとの指示が下されたことで、脱北する幹部や労働者がさらに増加しているという。