石川MS(日本海リーグ)に新加入!160キロ超えのメジャー経験投手がジャパニーズドリームに挑む
■二人の160キロ超え右腕はドミニカン
「コンニチハ」「アリガトウゴザイマシタ」―。
覚えたての日本語でフレンドリーにあいさつするドミニカンは、石川ミリオンスターズ(日本海リーグ)に入団した頼もしい助っ人たちだ。ともにメジャー経験のある160キロ超えコンビは、ジャパニーズドリームを掴もうと海を渡ってやってきた。
まずはプロフィールから紹介しよう。
◆アントニオ・サントス(Antonio Nathanahel Santos)
1996年10月6日生(26歳)
190cm・105kg/右投右打
コロラド・ロッキーズ(2015~2021)―ニューヨーク・メッツ(2022)
MLB通算 17回14奪三振
#42
◆アリエル・ヘルナンデス(Ariel Hernandez)
1992年3月2日(31歳)
193cm・96kg/右投右打
シンシナティ・レッズ(2017)―テキサス・レンジャーズ(2019)
MLB通算 24回29奪三振
#44
現在、金沢市内のホテルに滞在し、チームメイトと食事に行ったり、車に乗せてもらったりと、早くもチームにとけ込んでいる。
日本で出会ったという二人だが、すっかり仲よくなり、お互いの存在が支えになっているようだ。なにより母国語のスペイン語で話せる相手がいるというのは心強い。
二人とも米メジャー経験もあるが、英語は片言程度。英会話が堪能な片田敬太郎コーチが通訳も兼ね、英語力がやや優るヘルナンデス投手が聞いて、スペイン語に訳してサントス投手に伝えるといったシーンもたびたび見られる。
二人はもちろん、日本のトップリーグであるNPBを目指して来日したわけで、すでに何球団かのスカウトも視察に訪れている。
■ここまでの成績
◆アントニオ・サントス
5月16日 日ハム戦(中継ぎ)…1回 被安打1 奪三振2 与四球0 失点0
5月20日 富山戦(先発)…4回 被安打2 奪三振4 与四球1 失点0
5月26日 富山戦(先発)…3回 被安打0 奪三振3 与四球1 失点0
◆アリエル・ヘルナンデス
5月16日 日ハム戦(中継ぎ)…2/3回 被安打0 奪三振1 与四球7 失点4
5月20日 富山戦(中継ぎ)…1回 被安打0 奪三振1 与四球1 失点0
5月26日 富山戦(中継ぎ)…1回 被安打0 奪三振3 与四球0 失点0
■二人に聞く
――なぜ石川ミリオンスターズに?
サントス&ヘルナンデス「NPBに行くためのチャンスをここでもらったと思っている。そのために来た」
――日本人のプロ野球選手で誰か面識はある?
サントス「オオタニ(大谷翔平)と対戦したことあるよ。2年前の2021年。結果は2つの四球だった」
*そのときの動画をスマホに保存しており、それをうれしそうに見せてくれた。
ヘルナンデス「僕はオオタニとはお互いに知っているけど、対戦はしたことないよ」
――来日して2週間。日本はどう?
サントス「グッド。食事も人もすべていいね」
――日本の食べものでは何がおいしい?
ヘルナンデス「スシ、ビーフ、ヌードル。ミソスープヌードル(味噌ラーメン)」
片田コーチ「食事もお箸を使ってますよ。サントスはたまにフォークを欲しがりますが」
――大変なことはある?
サントス&ヘルナンデス「すべていいんだけど、ホテルのベッドが小さいんだ。それだけが大変かな(笑)」
――野球においての違いは?
ヘルナンデス「ボールが小さく感じるね」
サントス「でも日本のボールは縫い目が大きいんだ。ボール自体は小さいんだけど」
――投球への影響は?
ヘルナンデス「最初はアジャストできなくて四球を出してしまったけど、今は慣れたので、今日のようなピッチングができたよ」
*5月26日、富山GRNサンダーバーズ戦でクリーンアップを三者連続三振。
――マウンドは?
ヘルナンデス「アメリカよりちょっと低いかな。それとソフトだね。あ、でもここ(金沢市民野球場)はいい感じだよ」
片田コーチ「球場の方たちがよくやってくれる。硬くしてとお願いしたら、まぁ硬い(笑)。彼らに今日(ナイターで気温は低いがマウンドが硬い)か明日(デーゲームで暑いがマウンドが柔らかい)かどっちに投げたいか訊くと、今日を選んだ」
――ここまでのピッチングは?
サントス&ヘルナンデス「毎日よくなっているよ」
――自己最速と変化球の持ち球は?
サントス「100マイル(約161キロ)で、ツーシーム、スライダー、カーブ、チェンジアップ」
ヘルナンデス「103マイル(約166キロ)で、スラーブ、ツーシーム、チェンジアップ」
――「コンニチハ」「アリガトウゴザイマシタ」以外に覚えた日本語は?
サントス「ミズ(笑)」
片田コーチ「二人はずっと一緒にいるから、同じ言葉を覚える」
――目標は?
サントス&ヘルナンデス「NPBに行くことだよ。そのために来たんだ」
■後藤光尊監督の評価
「サントスは若いし、やんちゃな感じ。ガツガツしている感じがすごくあって、日本で成功したいという気持ちが強く、なんでも吸収しようとしている。
バラつきがだいぶなくなってきて、ある程度思ったところに投げられるようになってきた。体の開きもかなり収まってきたかなと思いますね。
ヘルナンデスは落ち着いていて、よく言えば繊細かな。日ハム戦(5月16日の初登板で7四球4失点)は僕が申し訳なかった。疲れも深くて調整不足なのはわかっていながら、本人が「いける」というのに甘えて登板させてしまった。あそこは僕が止めるべきでした。
今は落ち着いてきて、自分ができていることとできていないことが、ちゃんとわかりながら調整している。
二人とも頭がいいですね。やはり短かったとはいえメジャーを経験して、ちょっと結果を出してきたなりのものを持っている。ピッチングのことについてとか、しっかりと野球の会話ができるし、自分の考えもはっきりしている。こうしなきゃいけないということもわかっている。
日本に来たからには結果を出してほしいし、二人ともがNPBに行けるのがベスト。そのために、登板するまでのプランを僕と片田とでしっかり立てて、クリアな状況でマウンドに立てるように整えてあげたいなと思っています」。
■片田敬太郎コーチの評価
「二人ともすべての球のレベルが高い。まっすぐもいいですし、変化球もしっかりゾーンに投げられる。変化球の腕の振りも、まっすぐと同じように振れる。
サントスはチェンジアップがいいですね。かなり動いて、ブレーキも効く。
ヘルナンデスはスライダーがいい。勝負球にも使えて、カウント球にも使えるくらいにいいです。
それと二人とも、思った以上に前の足(左足)の使い方がすごくうまい。移動した自分の体重をしっかり止められるので、当然出力も高くなる。気温が上がれば、もっと出力も上がると思いますよ。
クイックも代理人の方が口酸っぱく言ってくれているので問題ないですし、フィールディングも試合でそういう場面がまだないけど、練習で見ている限りはショートスローも大丈夫です。
ドミニカンで陽気だけど、すごく真面目。日本人の選手にもすごく気を遣っている。サントスは子どもっぽいかわいらしさが残っていて、ヘルナンデスは大人。
今の日本の気候は彼らにとって寒いようで、5月26日のナイターは急遽カイロを用意した。ロジンじゃなくカイロをポケットに入れて登板していました(笑)。
二人ともこのリーグにいてはいけないくらいの高いレベルの選手。まだ力は上がるので、NPBには十分に行けるチャンスはあると思っています」。
■バッテリーを組んだ植幸輔選手
「5月26日のサントスはあまり調子よくないと言いながらも、ストレートのコントロールはよくて安定していた。しっかり考えて投げていて、「今日はチェンジアップがいいから」と二回からはチェンジアップをうまく使えた。ストレートは威力をすごく感じます。
ヘルナンデスのストレートは動くんで、それを活かせた。変化球もとてもよくて、それで三者連続三振が取れました。
これからも彼らと意思疎通をしっかりやって、もっとリズムよくリードしていきたい。会話ももっとできるように。英語で?は、はい(笑)」。
■NPBで活躍できる可能性大
クリッとした瞳でいたずらっぽく笑うサントス投手はかわいらしく、シュッとしているヘルナンデス投手は落ち着いたソフトな語り口が優しげだ。どちらも初めて訪れた異国で高い順応力を見せているのだが、異国の文化にも馴染もうという姿勢は非常に重要で、NPBで成功する外国人には総じてそれが備わっている。
まだ本来の力を出しきれていないが、NPBの外国人補強の期限まで2か月ある。しっかりと調整してNPB球団に見初められることを、そして晴れの舞台で活躍することを願う。
(本文中の写真提供:石川ミリオンスターズ)