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NHLの公式戦で、まさかのオウンゴール! その時、アイスホッケーのルールではどうなるの?

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
バンクーバーカナックスのファン(写真:ロイター/アフロ)

創設100年目を迎えた今季のNHLは、昨夜(現地時間)の試合で、コロラド アバランチ、アリゾナ コヨーテス、バンクーバー カナックスが初戦に臨み、全30チームが新たなシーズンに船出しました。

このうち、ホームアリーナでの開幕戦に挑んだバンクーバーは、カルガリーフレイムスとの試合が、オーバータイム(延長戦)を終えても同点のため、シュートアウトまでもつれる熱戦に!

4ラウンドまで戦った末、バンクーバーが競り勝って白星スタートを飾りました。

▼2季ぶりのプレーオフ進出へ好発進も・・・

昨季のバンクーバーはレギュラーシーズン敗退に終わっただけに、地元ファンの前で2季ぶりのプレーオフ進出へ好発進!

と言いたいところですが、本来はシュートアウトまで及ぶことなく、白星を手に入れることができる試合でした。

では、どうして、もつれた試合になってしまったのかと言うと、このようなプレーがあったからなのです。(青=バンクーバー、白=カルガリー)

え !? と思わず目を疑ってしまう ↑ この失点がなければ、「1-0のスコアでシャットアウト!」という快勝で、気持ち良く終えられたはずだったのですけれど・・・。

▼どうしてGKがいないの?

上の動画でご覧いただいたバンクーバーの唯一の失点シーンをご覧いただいて、

「どうしてGKがいないの?」

と首をかしげた方も多いのでは?

実はアイスホッケーのルールによるところなのです。

アイスホッケーの大きな魅力の一つは、選手同士の激しいコンタクトプレーで、「氷上の格闘技」とも呼ばれているほど。

とは言え、ただぶつかり合えばいいのではなく、頭部へのコンタクトや(パックを扱うために持っている)スティックを使ったコンタクトなどは、レフェリーのジャッジによって、ペナルティーが課せられます。

もし試合中にペナルティが発生すると、レフェリー(赤い腕章)は手をあげて、ペナルティがあったことを知らせます。

しかし、ペナルティを犯したチームがパックを確保するまでは、ホイッスルを吹かずに試合を続行します。

このルールがあることで、氷上でのプレー時間が長くなり、疲れて動けない選手が複数いた時、「ピンチが続くより、ひとまずペナルティをして試合を止めよう」という戦術は使えません。

さらに、ペナルティを犯したチームがパックを確保すると、レフェリーがホイッスルを吹いて試合を止めるので、ペナルティを受けた側は、失点の危険性が(基本的には)ゼロになります。

そのため、GKをプレーさせる必要がなくなることから、(プレーが続いている間に)ベンチへ戻して、代わりにFWを入れて得点を狙いに行くのが、NHLに限らず、「世界中のあらゆるカテゴリーのアイスホッケーの試合で目にする日常的な光景」なのです。

ところが、昨夜のバンクーバーは、ルイ・エリクソン(青#21)のパスが流れてしまい、まさかのオウンゴールとなってしまいました・・・。

▼オウンゴールは、誰の得点になるの?

サッカーでは、オウンゴールは、そのまま「オウンゴール」として記録される試合が見られますが、アイスホッケーでは、

「得点が加算されたチームの中で、一番最後にパックに触った選手にゴールが記録される」

とのルールがあるため、ご覧いただいたバンクーバーのオウンゴールでは、トロイ・ブラウワー(白#36)が、(自チームのペナルティより前に)パックに触った最後の選手だと判定され、ゴールが記録されました。

今オフにFA移籍で、カルガリーの一員になったブラウワーは、昨夜の試合が行われたバンクーバーの出身。

バンクーバーのホームアリーナでは、同じパシフィックディビジョンに所属するカナダのチーム同士とあって、いつもカルガリーの選手へ厳しいヤジが飛びますけれど、ブラウワーにとっては、「Home Sweet Home」の気分だったかもしれません。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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