打者に専念する今シーズンも大谷翔平に期待がかかる“史上初”の快挙
【日米メディアが集結する中でキャンプインしたドジャース】
3月に実施される韓国での開幕シリーズを控え、全30チームの先陣を切ってキャンプインしたドジャースの施設には、日本メディアに止まらずケン・ローゼンタール記者をはじめとする多数のMLB敏腕記者たちが集結していたようだ。
キャンプインがドジャースだけだったという側面もあるが、それ以上に今オフに巨額を投じ大型補強を断行し続けたドジャースが、今シーズン最大の関心事になっているからに他ならない。
中でもプロスポーツ史上最高額となる10年総額7億ドルでFA移籍してきた大谷翔平選手と、MLB未経験ながら投手としてMLB史上最高額の12年総額3億2500万ドルの大型契約を獲得した山本由伸投手の日本人コンビは、米メディアの注目を浴び続けることになりそうだ。
さらに大谷選手に関しては、つい先日ドジャースと再契約したクレイトン・カーショー投手が「ショウヘイは24/7(英語の慣用句で「週7日24時間」を意味し「四六時中」的なニュアンスで使用される)で注目を集めることになるだろうし、彼もそれにしっかり対応してくれると思う」と話しているように、早くも“ドジャースの顔”としてチームに寄せられる関心、期待を一身に背負う存在になっている。
【MLB公式サイトが打者専念でもMVP有力候補に】
今更説明する必要はないが、大谷選手が史上初めて2度にわたりMVPを満票受賞したのは、二刀流として類い稀な活躍をしてきたからだ。そうしたMLBでは唯一無二ともいえる二刀流の価値が認められたからこそ、7億ドルという大型契約を獲得できた。
だからといって打者に専念することになる今シーズンにおいて、大谷選手に対する期待が薄まることはあり得ないし、むしろ打者に専念することで、これまで以上の成績を求められることになるように思う。
それを裏づけるかのように、MLB公式サイトでつい先日公開された「今シーズンのMVP有力候補リスト」に、ナ・リーグではムーキー・ベッツ選手、ロナルド・アクーニャJr.選手に続き第3位にランクされている。
【DH選手がMVP受賞すれば史上初の快挙】
ちなみに大谷選手が今シーズンもMVPを受賞するようなことになれば、これまた史上初の快挙を達成することになる。全米野球記者協会による記者投票でMVPが決定するようになって以降、DH選手がMVPを受賞したことが一度もないのだ。
しかも2年連続MVP受賞となれば、2012、2013年と連続受賞したミギュエル・カブレラ選手以来史上14人目、15度目の快挙も同時達成することになる(バリー・ボンズ選手が2度達成)。
さらにナ・リーグ、ア・リーグ2つのリーグでMVP受賞となると、1961年のレッズ在籍時と1966年のオリオールズ在籍時にMVPを受賞したフランク・ロンビンソン選手以来史上2人目の快挙でもある。
両リーグMVP受賞に関しては、2018年のレッドソックス在籍時にMVPを受賞しているチームメイトのベッツ選手も達成できる可能性があり、チーム内で激しいタイトル争いが期待できそうだ。
ちなみにMLBのデータ専門サイト「Fan Graphs」がまとめている選手の貢献度を示す「WAR」指標によれば、昨シーズンの大谷選手は135試合の出場に止まった打者のみのWARでも6.6を残しており、MLB全体でも5位に入る高数値となっている(投手のWAR2.4を加えた9.0はMLBトップ)。
仮に大谷選手が打者として昨シーズン並みの成績を残し、ケガなくシーズンを乗り切れれば、さらに高いWARを残すことが可能にとなり、間違いなくMVP争いに加われるだろう。
MLB公式サイトでも「DH選手がMVPを獲得できないという壁を打ち破れるとすれば、それはオオタニだろう」と多大な期待を寄せている。
【多少気になるナ・リーグ投手との対戦成績】
ただDH選手のMVP受賞は、決して容易なことではない。
これまでDH選手によるMVP投票の最高位は、1993年のポール・モリター選手、2000年のフランク・トーマス選手、2005年のデビッド・オルティス選手の2位だ。ちなみにトーマス選手は2度のMVP受賞経験があるが、その当時はDHではなく主に一塁手としてプレーしていたので対象外にしている。
またオルティス選手は、2005年に打点のタイトルを獲得しMVP投票2位に入っているのだが、翌2006年には打点と本塁打の二冠王に輝きながら投票3位に終わっている。それほどDH選手にとってMVPというタイトルは遠い存在なのだ。
しかも大谷選手は、ナ・リーグ投手との対戦成績があまり芳しくない。過去6年間の交流戦での打席成績をみると、打率.269、16本塁打、49打点、OPS(出塁率と長打率を足した数値).848に止まっている。
ただ2020年までナ・リーグではDH制が採用されておらず、2022年まで交流戦も限定的に実施されていたこともあり、対戦機会が極端に少なかった面が影響していると考えられる。
そのため30チーム総当たり制に変更された昨シーズンだけをみれば、打率.283、8本塁打、19打点、OPS.923と好成績を残している。それでも昨シーズン全体の成績と比較すれば、やや物足りなさを感じてしまう。この点をどこまで改善できるかが、今シーズンの成否のカギを握っているように思う。
いずれにせよ、打者に専念する今シーズンも大谷選手には史上初の快挙が期待されているというわけだ。注目せずにはいられないだろう。