カザフスタンで「原因不明の肺炎」拡大 現地の中国大使館が警戒促す 新型コロナとの関連も不明
[ロンドン発]中国共産党の機関紙系の国際紙、環球時報(英語版)は、在カザフスタン中国大使館が7月9日、中央アジア・カザフスタンで広がっている「原因不明の肺炎」について同国在住の中国人に注意を呼びかけたことを報じています。
ロイター通信によると、カザフスタン政府は10日、正しくないと否定したそうです。
環球時報によると、今年1~6月、この「原因不明の肺炎」による死者は1772人に達しており、うち6月の死者はカザフスタン在住の中国人を含め628人に達しました。
カザフスタンの国際通信社カズインフォルムによると、6月28日、パブロダルでは285人が肺炎、180人が重症急性呼吸器症候群(SARS)と診断され、このうち新型コロナウイルスで陽性反応が出たのは11人だったそうです。
首都アスタナではこの2~3日で1日約300人の患者が肺炎と診断されて入院しています。
テュルキスタン州では7月9日時点で5500人の肺炎患者が出ており、新型コロナウイルスの感染が確認されたのは2079人でした。アルマトゥイでは主席医務官が7月10日、肺炎で亡くなりました。
今年1~6月の肺炎患者数は昨年より55%も増え、6月だけでは4倍になっています。
地元メディアによると、新型コロナウイルスと関係のない肺炎は2万8000人。患者の98.9%の症状は中等度ですが、330人の容体は深刻だそうです。
カザフスタンにおける新型コロナウイルスのPCR検査実施率は人口1000人当たり86.29件。韓国の26.29件、日本の4.1件に比べはるかに大量に実施しています。
新型コロナウイルスの感染者は5万4747人、死者は264人。無症状の感染者も加えるようになったためか、統計上、感染者の拡大は続いています。
「原因不明の肺炎」の致死率は新型コロナウイルスより「もっと高い」という地元報道もあるとして、環球時報がカザフスタン外務省に問い合わせたところ「原因不明の肺炎」については回答を避けたそうです。
環球時報によると、中国のネット市民(ネチズン)3700万人以上が「カザフスタンで報じられた原因不明の肺炎」のハッシュタグの投稿を読んで「新型コロナウイルスの次は原因不明の肺炎。2020年はいったい全体、何が起きるの」と書き込んでいるそうです。
「原因不明の肺炎」の正体は何なのか、新型コロナウイルスやSARSとの関係についても今のところ詳しいことは何一つ分かっていません。
カザフスタンと中国の新疆ウイグル自治区は国境を接しています。中央アジアの中でもカザフスタンは中国のインフラ経済圏構想「一帯一路」の要衝です。
中国国境のホルゴスに約130ヘクタールのコンテナ施設を建設、2017年から本格運用が始まっています。
一帯一路は中国の習近平国家主席がカザフスタンの首都アスタナを訪問中に発足しました。在カザフスタン中国大使館は何か情報をつかんでいるのでしょうか。
それとも新型コロナウイルスをはじめカザフスタンへの医療支援を巡ってロシアとの駆け引きもあるのでしょうか。気になるニュースで注意が必要です。
カザフスタン
旧ソ連諸国で1991年12月に独立。ロシア、中国、欧米と「全方位外交」を続ける。人口1828万人。石炭、石油、天然ガスなど資源に恵まれている。
(おわり)