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中川翔子さんが家裁に「名の変更許可」を申請~「氏」(姓)の変更は「名」と比べて難しいのか?

竹内豊行政書士
(写真:2020 TIFF/アフロ)

中川翔子さんが、「しようこ」から「翔子」に変更する許可申請を家庭裁判所に届け出たことが話題となっています。私も中川さんの記事を基に名の変更に関する記事をアップしたところ多くの方にお読みいただきました。それだけ、名前について関心が高い方が大勢いらっしゃるということだと思います。

そこで、今回は、「氏」(法律では「姓」のことを「氏」(うじ)といいます)の変更について見てみたいと思います。氏の変更は名の変更と比べてどのように違うのでしょうか。また、名の変更に比べて許可のハードルは高いのでしょうか。それとも低いのでしょうか。

氏の変更

法は、「やむを得ない事由(理由)」がある場合には、氏の変更ができると定めています。そして、戸籍の氏を変更するには,家庭裁判所の許可が必要です(戸籍法107条1項)。

戸籍法107条1項(氏名の変更)

やむを得ない事由によつて氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。

やむを得ない事情とは、氏の変更をしないとその人の社会生活において著しい支障を来す場合をいうとされています。

氏の変更が許可されたケース

実際に、次のようなケースが認められています。

・珍奇・難解な氏  

例えば、狼→坂田、赤鬼→赤木、井戸端→古屋 などがあります。

・内縁関係で長年、相手方の氏を通称として使っていた場合

・元暴力団員として周知されている者が更生するのに必要と認められる事情がある場合

・離婚に際し婚氏続称の届出期間を超えた者の婚氏(結婚していたときの氏)への変更

・婚氏続称した者の婚姻前の氏への変更

氏の変更が不許可となったケース

不許可になったケースを紹介します。

・法流(仏法の流派)の継承または僧職の地位をえることのみを目的とする氏の変更は、許されない。

・祖先の祭祀の権利継承者となるために、被相続人(亡くなった人)の氏に変更する必要があるとの理由は、やむを得ない事由に該当しない。

名の変更

一方、名の変更は、「正当な事由」があれば、家庭裁判所の許可を得て変更することができます(戸籍法107条の2)。

戸籍法107条の2(氏名の変更)

正当な事由によつて名を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。

変更許可の一般的基準として、名の変更についての「正当な事由」は、次のように考えられています。

・同姓同名の者があって社会生活上多大の差支えをきたす場合

・社会生活上著しい支障を生じる程度に珍奇ないしは著しい難解難読の文字を用いた場合

・通称名として定着している場合 等

また、正当な事由とは、単なる個人的趣味、感情、信仰上の希望等のみでは足りないとされています。

以上ご覧いただいたとおり、氏の変更の許可は名の変更の許可に比べてハードルが高いと言わざるを得ません。

様々な理由で「氏を変えたい」とお考えの方はいらっしゃると思います。もし、氏でお悩みで「やむを得ない事由」があるとお思いの方は、専門家や家庭裁判所に相談してみてはいかがでしょうか。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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