【綾町】十五夜再発見:「お月見どろぼう」から見る地域の文化、他の地域では?
2024年の中秋の名月は9月17日(火)。この日、綾では「十五夜」「お月見さま」と呼ばれる風習が行われます。他の地域では「お月見どろぼう」とも呼ばれる、古くから全国各地で行われている風習です。
私自身は、綾町に移住してきたときに初めて知りました。同じように「十五夜って何?」と思われている方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、綾に来て間もない方のために簡単に「十五夜」について紹介しましょう。そして地元の方には私の故郷、札幌の似た風習「ロウソクもらい」をお話ししましょう。
・「十五夜」(お月見どろぼう)とは
中秋の名月といえば月見だんごを供えるのが定番ですが、他にも古くから収穫物も供えられていました。
子供たちは、そのお供え物を盗み取ることが許されました。これが「十五夜」「お月見どろぼう」で、中秋の名月だけに許される行為です。子供たちが許されたのは、子供は月の使いと言われているためです。盗まれるということは「お月様が食べてくれた」と言うことになり、縁起が良いと考えられました。
・綾の「十五夜」の過ごし方
各地区で違いはありますが、大抵は大人に付き添われた子供たちが19時ころ、地区内の家を周って
「お供えものくだ~い!」
と言ってお菓子をもらっていきます。車に乗って家を周るところもあるとか。各家庭ではお菓子を準備して、玄関先に置いてあります。収穫された栗や芋を置いてある家もありますが、子供たちはお菓子ばかりを取っていくようで……
十五夜用のお菓子パックがスーパーで売られています。お菓子を用意していない家は、その目印として玄関の電気を消しているなど、地区ごとの習慣もあるようです。風習は時代とともに変わっていくので、各地区の子供会か近所の方に聞いてみると良いでしょう。
・他の地域では?:北海道「ロウソクもらい」
「十五夜」に似た風習と言えばハロウィンを思い浮かべる方が多いと思います。でも北海道にはもっと似た風習があります。それが七夕に行われる「ロウソクもらい」です。地域によって内容は違いますが、札幌では七夕(札幌は8月7日)に子供たちが夕方、提灯を持って近所を練り歩き、家の前でこのような歌を歌います。
「ロウソクだ~せ、だ~せよ
だ~さ~ないとかっちゃくぞ~
お~ま~け~に、引っ掻くぞ~」
(※場所により歌は違います)
ほとんどハロウィンの"Trick or Treat”ですね。子供たちがやってくると、家の人はロウソクやお菓子をあげます。当然子供たちはロウソクよりお菓子の方を期待しているわけですが。当時は子供達だけで回ってましたが、それももう昭和の話。今は治安やコロナの影響もあり、やり方が変わっていると思います。
綾町の「十五夜」と北海道の「ロウソクもらい」。時期や習慣は違えど、似た風習があるというのが興味深いところです。
・月夜に照らされた子供たち
現在の都会では、夜に子供たちが家を回るのは、治安や安全の面で難しくなっています。しかし綾のように見知った人間が多く、夜空がきれいな地域では今でも十五夜の風習が続いています。月明りの下、月の使いの子供たちが歩く姿は、童話さながらの世界でしょう。いつまでも続けていきたいですね。
そんな中秋の名月。子供たちは思い出を作る。大人たちは月に心を寄せ、夢を描く。みなさん、このすてきな夜を楽しんでください。
画像提供:$ug! (札幌在住)
イラスト提供:furoshikin (綾在住)