80代父親が風呂場で死亡し「孤独死させた」と50代長女は大後悔 “親不孝”なのか?
「親に孤独死をさせたくない」と多くの子は考えています。子どもだけでなく、親も同じでしょう。孤独死をさせないために、子が施設入居を勧めることもあります。しかし、1人で亡くなることは、本当に不幸なのでしょうか。
父親が電話に出ない
ヨウコさん(50代)の父親(80代)は実家で1人暮らしをしていました。母親が亡くなったときから、ヨウコさんは、父親に対し高齢者施設へ入居するよう勧めてきました。けれども、「身の回りのことができる間は住み慣れたこの家で暮らしたい」と父親は首を縦には振りませんでした。
ある日の夕方、いつものようにヨウコさんが電話をかけても、父親は受話器を取りません。携帯にも出ません。「嫌な予感がして、実家近所の父の友人に電話して様子を見に行ってもらったのです」。
その友人が、父親が浴室で倒れているのを発見。すでに亡くなって時間が経過していたため、病院へは搬送されず警察による検視が必要に。「孤独死をさせてしまった。もっと強く施設入居を勧めるんだった」とヨウコさんはうなだれるのでした。
父親自身は後悔? 満足?
後から分かった話ですが、ヨウコさんの父親はその日の午前中、いつものようにゲートボールに出かけていました。帰宅してシャワーを浴びている最中に倒れ、亡くなったようです。
ヨウコさんは施設入居を強く勧めなかった自分を責め、後悔していますが、果たして父親はどんな風に思っているのでしょう。
「ヨウコの言う通り、施設に入居していれば良かった」と悔やんでいるのか、「長患いせず、よかった」と思っているのか……。
当人は亡くなってしまったので推察でしかありませんが、後者の可能性も否定はできないと思います。少なくとも、「早く見つけてくれてありがとう」と思っているのではないでしょうか。
「孤独死」とは何か
そもそも「孤独死」とは、どのような状態を指すのでしょう。人によって捉え方は異なります(一部都道府県で実態を把握する動きはありますが、その定義はまちまちです)。
① 誰にも看取られずに亡くなること
② 死の数日後に「異臭」などによって発見されること
①を「孤独死」と考えるなら、ヨウコさんの父親は当てはまりますが、②なら当てはまりません。
それに、高齢者施設に入居しても、あるいは子どもが同居しても、①を「孤独死」と捉えるなら100%回避することは困難です。入居しても、居室で静かに亡くなることはあります。子が同居しても留守中に亡くなることはあります。
ピンピンコロリ?
ヨウコさんの父親のように、亡くなってから発見されると主治医がいれば主治医に連絡されます。24時間以内に診察を受けていれば死亡診断書を書いてもらえます。主治医がいなかったり、持病とは異なる死因が疑われたりすれば警察に連絡されて、死因や死亡時刻を医学的に判定する「検案」が行われます。
「警察の世話になるなんて親不孝なことをした」とうなだれる人に会うことがありますが、警察の世話になることは親不孝なのでしょうか。
ものは考えようです。ヨウコさんの父親の死は、多くの人が望む「ピンピンコロリ」ともいえます。全国に“ぽっくり地蔵”なるものもあるほどです(無病息災、病気になったりボケたりせずに、天寿を全うできるようお参り)。
ヨウコさんが毎日のように電話をかけていたことで異変を察知。父親には近所に友人がいたことから、すぐに確認してもらうこともできました。父親の友人は、実家の合鍵を預かってくれていたのです。
施設に入居すれば、倒れても半日以内には発見されるでしょう。早期に見つかることで、命が助かるかもしれません。しかし、亡くなっている場合もあります。
親の人生だから
正解はありません。
親本人の人生です。どう暮らすかを決めるのは、判断力があるなら本人だと思います。
1人暮らしを続けるなら、ヨウコさんの父親のように、いざというときには様子をのぞいてくれる“頼れる人”を見つけておきたいもの。家族や親族、知人で見守ることが難しい場合は、ホームセキュリティサービスやみまもりサービスを入れることも選択肢となるでしょう。支援や介護が必要な親なら、ホームヘルプサービスやデイサービスを入れることによって、訪問時に見つけてもらえます。介護保険のサービスを利用しない日は、手渡しによる食事の宅配サービスを入れるのも一案でしょう。
死亡後3日以内に発見される割合は、女性はほぼ半数ですが、男性では4割を切るという報告もあります。
リスクと対策を含め、本人とよく話し合ったうえでその暮らし方をサポートしたいものです。