原油の消費量1.51億トン、では天然ガスや再生エネルギーは? 日本のエネルギー事情(2024年版)
エネルギーに携わる人々のための公認専門会員組織であるエネルギー協会「the Energy Institute」では毎年公式サイト上に、エネルギー関連の動向をまとめた白書「Statistical Review of World Energy」を公開している。この内容を基に、日本に関するいくつかのエネルギー動向を確認する。
まずは日本における原油の消費量。こちらは1965年以降の値が年次で収録されている。単位は億トン。個人レベルではピンと来ない単位だが、大まかにその分量の推移を把握できる。
内燃機関を持つ多様な自動車の燃料となるガソリン、ストーブには欠かせない灯油だけでなく、火力発電所の燃料や各種工業製品の原材料としても不可欠な原油だが、科学技術の進歩や高効率性の機関の開発、利用資源の多様化などに伴い、1996年の2.76億トンをピークに消費量は減少しつつある。2011年以降数年間はイレギュラーな形で上昇しているが、これは発電事情に伴うもの。また2020年の大幅な減少は、新型コロナウイルス流行による経済の停滞によるところが大きい。
続いて原油の輸入量。こちらは1980年以降のデータを確認できる。公開資料における元値はバレルだったが、グラフ作成の際にトンへ変換している。
やはり前世紀末をピークとしてそれ以降は漸減。昨今では震災起因で少しばかり量を増やしたが、それも失速している。なお消費量と微妙に値が異なるのは、備蓄として用いられたり、何らかの形に加工されて海外に輸出されるケースがあるからに他ならない。とはいえ、急激にそのバランスが変わるはずはなく、消費量のグラフ形状と大きな違いはない。2020年における、型コロナウイルス流行による経済の停滞によるものと思われる大幅な減少も同じである。
次に天然ガス。日本の産出量はゼロではないが、少なくともその名前を産出国として独自に挙げられる量には達していないようだ(【天然ガス鉱業会の資料】では年間25億立方メートル以上とある)。消費量の大部分はLNGの形で海外から輸入することになる。なお単位のEJとはエクサジュールのことで、どれぐらいのエネルギーかというと、例えば東日本大震災のマグニチュードは9.0だが、その際に放出されたエネルギー総量は2.0EJとされている。
環境負荷が小さいことや地域による産出の偏りが原油よりも少ないため、天然ガスは大いに重宝される形となり、消費量も増加している。特に震災以降は火力発電の燃料として大いに注目され、消費量も急増。全体的には上昇傾向を継続していた。昨今ではその反動もあり、消費量は落ちている。
続いて一次エネルギー(自然界に存在するそのままの形を用い、エネルギー源に使われているものを指す。化石燃料(原油、石炭、天然ガスなど)、ウラン、そして水力、火力、さらには太陽熱・太陽光・地熱などの再生可能エネルギーが該当する)の消費量。
震災を契機として原油が一時的に増加したものの、その後に減少、天然ガスは増加から横ばい、そして減少、石炭は一時的な増加を見せたがすぐに横ばい、さらに減少。そして原子力は失速し2014年にはゼロとなり、2015年以降はわずかに戻しを見せるが、まだ微少に過ぎない。原子力の穴埋め的な立場にある水力は少しずつ増えたがそれも天井、再生可能エネルギーも増加しているが、汎用性の高い原油や天然ガスと比べると、不足感は否めない。また2020年で再生可能や水力以外は押しなべて減少、特に原油の減少が著しいのは、新型コロナウイルスの流行で生じた経済の減退によるところが大きい。
その再生可能エネルギーだが、内訳は次の通り。縦軸の区切りは変えてあるが、表示単位そのものは直上のグラフと変わらない。
再生可能エネルギーの増加分はほとんどが太陽光によるもの。風力や地熱なども増加しているが、それは微々たる量でしかない。さらにバイオ系の燃料は数字として公開できる量までには至っていないので、資料には掲載されていない。
太陽光の増加量は目覚ましいものだが、同時にひとつ前のグラフと比較すると、2023年の時点ですら、エネルギー消費量全体においてはほんのわずかな割合でしか貢献できていない現実も突きつけられることは否定できない。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
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