日本はエネルギー輸入依存度87% 主要国と比べると過度の依存度なのか(2024年公開版)
国を維持するのに必要なエネルギーは地域偏在が生じ、多くの国が互いに不足分を他国から輸入し、余剰分を不足時に備えて蓄積したり他国へ輸出している。その実情を「エネルギー輸入依存度」として確認する。
今件該当データは日本原子力文化財団などが発行している「原子力・エネルギー図面集」の最新版の値を参照する。この値を用い、グラフを作成する。
次のグラフは各国が消費エネルギー全体のうち、どの程度を国外に依存しているかについて図にしたもの。100%なら国内消費エネルギーの100%を海外からの輸入に頼っている計算になる。逆にマイナスの場合は、自国内で生産したエネルギーで国内消費エネルギーのすべてを(原則的に)まかなっており、さらに余った分(マイナスの分)を海外に何らかの形で輸出している計算。
もっともこれらの値は総和。例えばプラスの国(輸入国)が一切エネルギーを国外に輸出していないわけではない。逆にマイナスの国(輸出国)がエネルギーを一切輸入していないはずもない。
原子力発電の場合、燃料の輸入問題はあるが、それを別にすれば備蓄できる燃料の効率の観点から、自国内でエネルギーを生産していると考えることもできる。そこでこのグラフでは原子力発電を含めた場合と、除外した場合の2通りで算出した値をグラフにしている。
イタリアは脱原発政策を貫いているため、「含む」「除く」双方で同じ値を示している。一方、エネルギーの自給自足・自活を(他国に影響されない、政略上の独自基調を裏付けるための)国策としているフランスでは、積極的な原発推進をしている。その関係で、含む・除くの差が非常に大きなものとなっている。原子力を自国算出エネルギーと換算すればフランスでは5割近くを自活できているが、そうでない場合は日本とほぼ同じレベルの輸入依存度となる。
それらの特異的な動向を除けば、グラフの左から順に、日本、韓国、イタリア、ドイツ、フランスまでがエネルギー輸入大国、インド、イギリス、中国までが輸入小国(「原子力含む」の値で50%以上か否かで判断)、アメリカ合衆国はエネルギーに関してはほぼトントン、そしてブラジル、ロシア、カナダが輸出国であるのが分かる。
意外に思えるのが「カナダがエネルギー輸出国」であること。これは同国では石油が採掘できるだけでなく、各種自然に恵まれており、水力発電が極めて盛んなのが要因。自国内の電力料金も安めで、他国に輸出できる余裕すらある(もちろん無駄使いをしているわけではない)。
整数値までの公開値のためぶれが大きいのが残念だが、前回公開分からの変移の概要を計算したのが次のグラフ。国の並びは上のグラフと揃えてある。
2%幅以内は誤差の範囲と見ると、イタリア、フランス、イギリス、カナダがプラス、ドイツ、中国がマイナスとの動きが確認できる。対外戦略上は当然国内だけでエネルギーをまかなえる=輸入依存度が低い方がよい(海外の思惑に翻弄されることなく、国内の経済政策が行える)ので、ドイツと中国はポジティブにエネルギー状況が変化したことになる。もっともこれが、景気動向に伴うもの(景気悪化≒エネルギー消費量減少≒輸入依存度減少(国内算出分でまかなえる))の場合には、一概に「マイナス=よいこと」とは言い切れない。
また、日本にスポットライトを当ててみると、少資源国であるがため、エネルギーの多くを輸入に頼っている現状が改めて認識できる(例えば石油の場合、国内産出量はごくわずかに過ぎない)。輸入でエネルギーが十分に、安定した状態で確保されている状況に慣れていると、それが当たり前のものとして認識し、忘却し、大切さを忘れてしまう。しかし実際には多くの人の手によってその「気がつかない当たり前」が支えられている。インフラとは、かくも地味で、そして大切なものであることを忘れてはならない。
■関連記事:
【中国は63.7%が石炭、フランスは67.1%が原子力、日本は39.1%が天然ガス…主要国の電源別発電電力量の構成実情(最新)】
【注目集まる再生可能エネルギー、日本の実力を世界規模で確認(2023年公開版)】
(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。
(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。
(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。