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株やFXの自動売買のリスク、機械に任せるぐらいなら自分で相場を張れ

久保田博幸金融アナリスト
(提供:アフロ)

 投資において「自動売買」や「AI取引」なるものがある。これは相場に携わるものであれば、誰でも通る道なのかもしれない。

 私が債券ディーラーとなったのが1986年10月であった。このころNECのPC9800シリーズが出ていたと思う。私は学生時代にPC8001を購入し、自分でプログラムを組み、ゲームなどで遊んでいたパソコンオタクの走りであった。

 つまり債券ディーラーとなる以前から、すでにコンピュータを使っていた。当時、私が所属していた証券会社のオフコンを使って債券先物の事務処理システムを組んでおり、それも認められて債券ディーラーとなった側面もあった。

 何が言いたいのかといえば、債券ディーラーとなり、当然ながら自動売買を試すこととなったのである。ちなみに当時の債券は現在の株やFXなどよりも大きく動いていた。

 自分なりにある程度の収益が上がるシステムは生み出せたかと思ったが、あくまでそれは補助的なものとしていた。試行錯誤の結果の結論は、完全な自動売買システムなど絶対に存在しないというものであった。

 これは私のような個人に限らず、大手金融機関も同様のことをしていた。有名なものに債券先物で500億円ロットで仕掛ける自動売買があった。その自動売買の仕組みが市場で見透かされ、それが出てくると返り討ちに遭うといった状態となって、いつしかその500億の取引は消えていった。

 いやいや、パソコンの走りのような時代といまでは違う。コンピュータの処理能力は向上し、AIも高度化している。常に儲かるシステムができあがってもおかしくはないではないか、と思う人がいるかもしれない。

 しかし、自動売買システムとは、それをシミュレートする過去にはピタッとあてはまることが仮にあったとしても、それを未来に使って稼げるという保証はまったくない。いや、自分の経験からは、儲からなくなるリスクのほうがむしろ高い。これはあくまで自分の経験ではあるが、この見方はそれほど大きくは外してはいないと思う。

 金融知識はあまりなく、相場もわからない。相場にかかわる時間もない。なので自動売買に任せるというのは、ある意味、リスクが高すぎる。相場は自ら張ってなんぼである。それで相場の怖さや楽しさを知り、何がリスクなのか、どういう経験が必要なのか。経験の積み重ねでどのような判断ができるようになるのか。それを知らないで相場に手を出すべきではない。

 つまり、自動売買などに手を出すぐらいならば、その前に自分で相場を張って相場の世界を知るべきである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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