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衝撃的な走りでヤリス、フィットを置き去り! 日産新型ノートに試乗した【動画あり】

河口まなぶ自動車ジャーナリスト

 日産ノートe-POWERが初めて世に送り出されたのは2016年のこと。この時、日産ノートe-POWERは1.2Lエンジンを搭載するも発電のみに使い、走行はモーターのみというシリーズ・ハイブリッド方式を搭載して話題を呼んだ。当時筆者が記した日産ノートe-POWERの記事を読むとそこには、日産の方の言葉として「われわれとしては、ゲームチェンジだと思っています」と記されている。つまり日産はこのe-POWERにおいてライバルに対抗するだけでなく、ハイブリッドカーの価値転換を狙ったわけだ。

 そしてその後、エンジンとモーターの力を状況に応じて使い分けるトヨタやホンダのハイブリッドシステムとは異なるハイブリッドを搭載した日産ノートe-POWERは想像以上の人気を得て、日本の自動車の販売ランキングにおいて、日産にひさびさのナンバー1をもたらすクルマとなった。その意味では確かに、ゲームチェンジは果たされたのかもしれない。

 日産ノートe-POWERの魅力は、なんといってもモーターによる走行感覚にある。当時既に存在していた電気自動車リーフは、当然モーターで走るクルマで、そこには内燃機関のクルマにはない「静かで滑らかで力強い」という理想的な走りが生まれていた。日産ノートe-POWERはこのテイストをそのまま、小型車のノートにインストールしつつ、使い勝手はガソリンを給油するだけという簡便さを併せ持たせた。結果は日産のひさびさの販売台数ナンバー1をもたらしたわけで、それは実際にユーザーに受け入れられた証といえる。

 もちろん日産ノートe-POWERは完璧だったわけではない。既に登場から年数が経っていた小型車ノートに、1.2Lの直列3気筒エンジンとモーターを組み合わせたe-POWERを急遽搭載した感もあったため、様々なフィッティングには苦労をしていた。これまでと違って発電のために回るエンジンの音を抑え込むための方策も完璧ではなかったし、これまでと異なる振動などに対する対応にも苦労した。エネルギーのマネージメントも難しく、モーター走行だけに不意にエンジンがかかったりするとエンジンが煩く感じるという悩みもあった。また基本設計が古いシャシーだったために、当時話題の運転支援プロパイロットも搭載がかなわなかった。

 しかしながら、通常のコンパクトカーながらモーターだけで走行する感覚はあまりに新鮮だったし、アクセルペダルだけで加速減速ができるe-POWERドライブはモーター走行だからこそできる驚きの運転体験だった。

 それから4年がたった今年、日産はノートをフルモデルチェンジした。しかも今回ドライブトレーンは1.2Lの3気筒エンジンとモーターを組み合わせたe-POWERのみの設定とした。新型は日産/ルノーの上級小型車向けプラットフォームを用いており、ステアリング剛性は90%、ボディ剛性は30%、サスペンション剛性は10%とそれぞれ向上した。そしてここに搭載したe-POWERは第2世代のものとなっており、出力で6%、トルクで10%向上を果たし、最大トルクは280Nmと、2.0Lターボ並の力を生み出すものとした。

試乗した印象に関しては動画を参照していただきたい。

 動画でも語っているが、走り出した瞬間にトヨタ・ヤリスやホンダ・フィットにはない、モーター走行を全面に押し出した質の高い加速感が生まれている。また今回、e-POWERは進化したことで、なるべくエンジンをかけない設定となった上に、エンジンがかかっても静粛性を高く保つ工夫がなされており、走行中はアクセルを全開にしないかぎりはエンジン音を感じないほどだ。さらにユニークなのは通常走行でエンジンを始動する際には、路面が荒れていてロードノイズが大きな時を狙って行なう機構を入れた。この辺りの味付けは、徹底的に以前からの強みであるモーターならではの「静かで滑らかで力強い」走行感覚を強調するものでもある。

 加えて乗り心地やハンドリングも巧みにまとめられており、しなやかで上質な感覚はやはりヤリスやフィットをしのぐ実力を手に入れこの点でもライバルを引き離すものとなった。結果的に新型ノートe-POWERの走りは、日本の小型車の中でトップに躍り出たと評価できるものとなった。

 トヨタやホンダのハイブリッドシステムは燃費を手に入れるためには有効な手段だが、一方で質という部分で見るとなかなかに難しい問題がある。特にコンパクトカーに搭載しなければならないために、エンジンの発する騒音や振動をいかに軽減するかが求められる。しかしながら、組み合わせるモーターや電池もそう大きくない上に、ハイブリッドシステム自体がエンジンとモーターの使い分けによるものなので、どうしても内燃機関特有の悪影響が出やすい。それでもホンダ・フィットなどは走行のほとんどをモーターで行なう設定としたが、エンジンの音や力強さに関しては厳しい面がある。これに対して日産のe-POWERは今回、エンジンを極力黒子に徹する仕立てとしたので、比べると質の差は大きく感じる。パワートレーンが生む力によって生まれる駆動の感覚や、走り出しの滑らかさ、そして静けさなどで、コンパクトカーの基準は確実に塗り替えられた。

 初代e-POWERが登場してから4年。新型ノートe-POWERを試乗すると、さらに電動駆動の魅力と説得力が増しており、ハイブリッドカーにおけるさらなるゲームチェンジを狙うと同時に、今回の新型で実現できた「質の高さ」によって、次はコンパクトカーにおけるゲームチェンジを狙っているようにも思える。果たして今後、ライバルとどのような戦いとしていくのかが実に興味深いところだ。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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