【ドラクエ】キャラクター名は著作物ではないとの判決文公開(想定内)
ちょっと前に「ドラゴンクエスト5」の小説版における主人公名が映画「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」で無断使用されたことに対して小説作者がスクエニや東宝を著作権侵害で訴えたというニュースがありました。小説版では、主人公名「リュケイロム・エル・ケル・グランバニア」(通称「リュカ」)であったところ、映画では「リュカ・エル・ケル・グランバニア」になっています。
主人公名は著作物に当たらないということで原告敗訴になっています。キャラクターの具体的な絵やせりふの表現を離れた、名前や設定だけでは著作物には当たらないというのは確定した考え方なので結果自体は驚くに値しません。
本件、当たり前すぎる結論なので意味のある記事化をするには今ひとつ情報が足りず、判決文が公開されたら書こうと思っておりましたが、なかなか公開されず未公開で終わるのかと思っていたところ(知財関係でも地裁判決はウェブで公開されないことも多いです)、先日やっと公開されましたので、判決文のポイントとなる部分を解説します。
原告の主張は大きく①著作権侵害、および、②出版契約に基づく協議義務不履行です。当然ながら、「リュケイロム・エル・ケル・グランバニア」なる名称が著作物であるかが重要な争点になっています。主人公名以外にも設定等で類似点があるのかと思っていましたが、そういうことではなかったです。原告は以下のロジックにより、登場人物名が著作物であることを主張しています。
が、さすがにちょっと無理があり、裁判所は以下のとおり一蹴しています。
そして、ちょっと興味深い、出版契約の観点ですが、
ということで、協議義務は「本著作物」の使用に限定されているので、主人公名が著作物ではない以上協議義務は発生しないとされました。契約書において「著作物」に限定した記載ではなく設定や名称等も含むより広い記載にしておけば、原告側にも争う余地が生まれていたかもしれないですが、出版契約の契約書は通常発注側が用意したものをそのまま使うので限定的になってしまうのはしょうがないかと思います。
小説の著者としては、主人公名を決めるのにも創作能力を使いますし、その後、その名前で物語を展開していくと相当な愛着が生まれるものと思います。それを断りなく使用されるというのが(金目の話とは別に)感情を害される行為であることは否定できないでしょう。正直、スクエニ側も事前に作者にあいさつやお断り、そして、エンドロールでの名前出しくらいしてくれても良かったのにと思います。
追記:小説著者の方がnoteに今回の裁判における陳述書を独自に公開されています。上に書いたエンドロールでのクレジットが実現しなかった理由も明らかになっています。正直、この陳述によって裁判における法的解釈が変わるとは思えませんが、スクエニはちょっと仁義に欠けるのではないかという印象です。
追記:YouTube動画作ってみました