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子供を動かす魔法の『わたし言葉』

宮下幸恵NY在住フリーライター
マンハッタンで月1行われるママの会に集まる人、人、人。

イライラMAXママ

「何度言わせるのよ! 遊んでるなら片付けるよ!」

「もう、あなたは本当にだらしないんだから!」

「きちんと食べなさい!!」

食べ物を祖末にしてはいけないと、日頃から言い聞かせているのにわざとこぼしたり、食事中にふざけたり・・・。ママにとって一番イライラして頭に来ることって、子供にご飯を食べさせる事じゃないでしょうか?

そんなバトルを解消する魔法のような鍵が、『わたし言葉』にあるんです。

先日、NY在住ママ向けにいろいろな子育てイベントを月に1度マンハッタンで行うNYママの会http://nymoms.exblog.jpで『マザーズコーチング』というママ向けコーチングのセミナーが行われました。もともと人材育成の現場やビジネスの世界で使われてきたコーチングの技術を、子育てするママ向けにまとめたのがこのマザーズコーチングhttp://motherscoach.jpです。

ニューヨークでは昨年からマザーコーチ一期生が勉強をスタート。試行錯誤で子育てするママや、異国で自分が進むべき道を悩む日本人女性がコーチングの手法を学ぶことで、自己基盤の確立や子育てに役立つコミュニケーションのコツを学んでします。今春晴れて一期生が卒業し、新コーチが誕生しました。私もそんなひよっこの1人。そして私たちコーチの卵が行う等身大のママセミナーに、予想を超える50人近いママが集まり、熱視線が注がれたんです。

次々に並ぶベビーカー
次々に並ぶベビーカー

次々に訪れるママと、会場にズラリと並ぶストローラーの数。注目の高さが分かります。裏を返せば、それだけみんな毎日イライラしてるって事ですよね。そんな自分をなんとかしたい、楽になりたいと思っても、その方法が分からないんですよね。

魔法のわたし言葉とは?!

マザーズコーチを広く知ってもらうこのセミナーのなかで、多くの参加者がペンを走らせていたのが『わたし言葉』です。

コーチングの手法の1つに、「I(私)メッセージ」というのがあります。「あなたが〜〜〜だから」とあなた「YOU」ではなく、私の気持ちを伝える方法のことです。

もし、冒頭の起こりんぼママのように子供の遊び食べに頭に来たら・・・。あなたはなんて言葉をかけますか?

ママ 「食べながら遊ばないっていつも言ってるでしょ!」

子供 「えへへ〜。(なぜか両手を伸ばし)天井ビーーーン!」(訳が分からない行動にプチっ)

ママ「ふざけてると片付けるよ!」

子供「やだ。食べるう〜」(と言いつつ、かじる程度口に入れたら、笑いながら『天井ビーーーーン!』とかされたらもう限界。両手伸ばしてるだけだし、意味不明だし・・・)

ママ「だ・か・ら! ふざけてると片付けるって何回も言ってるでしょ?聞こえないの?!」

子供「えへへ〜」

ブチっ! もう限界ですね。爆発です。こうなったら止まりません。「へらへらして、もう誰に似たんだか!」ってパパの文句を言い、ご飯を片付けるでしょう。そうしたら子供もかんしゃく爆弾で応酬!得意の「やだやだやだやだ」攻撃で、「食べる!食べるー!食べるー!」と泣き叫ぶかもしれません。最悪ですね。もう自分の耳を塞ぎたいし、手が出るかもしれません。だってママも人間だから・・・。

でも、このやり取りのなかで、何か変えられるとしたら、あなたは何をどう変えますか??そう、ここで『わたし言葉』の登場です!

ママ 「せっかく作ったのに遊びながら食べられると、ママ悲しいな〜」

ここで子供が「いつもと違うじゃん。怒らないの?」と思えば「ウッシッシ」としめたもの。それでもきっと、子供はママを試そうと遊ぶでしょう。ふざけるでしょう。天井ビーンとか、意味不明なギャグを口走っても、そこは優しく毅然と言ってみては?

「食事中にふざけてる***(子供の名前)を見てると、ママとっても寂しいし、悲しい」

きっと子供は、自分の行動で大好きなママを悲しませている、嬉しくないんだと思うと、行動が変わってくるんじゃないでしょうか?この相手の行動変化を生む言葉がけが、「わたし言葉」なんです。

「あなたがダメだから」「あなたがトロいから」・・・。日々そう声をかけられた子供はきっと、「自分はダメなんだ」「ママは分かってくれない」と思い込み、自己肯定感が低くなりますよね。自己肯定感が低くなると、自分でも「あの子が**だから」と全てを周りのせいにし、自分で考え動くようにはならないかもしれません。

「そもそも、どうして遊び食べしちゃったの?」

これは、私のコーチの問いかけでした。そうなんです、遊び食べで爆発したのはコーチングを勉強したはずであるこの私。「手が出る事もあるでしょう」なんて書いておきながら、泣き叫びながら生ゴミに手をつっこもうとした3歳の娘のほっぺを叩いたのは、まぎれもなくこの私です。ひよっこコーチ、やっちゃいました。

このコーチの問いかけで振り返るきっかけが出来ました。「まだまだ遊び足りなかったかな?」「ちょっと忙しくて構ってあげる時間が少なかったかな?」と・・・。思い当たる節がありました。子供の心が満たされていないなら、それを満たして挙げる、子供の心を愛で満タンにしてあげる。世界で何が起きたって、あなたは私の宝物だよって。大好きだよって言ってあげるのが、ママの最大のつとめのはずです。

さらに、コーチは確信をついてきます。

「食べ物を粗末にしちゃいけないと言ってるママが、食べ物を捨てたら、子供はどう思うかな?」

私、全然気がつきませんでした。だって、遊び食べをした悪いのは「娘」であって、私じゃないはずと思っていたから。だから、食べ物を捨てられたって当然でしょと思っていたから。でも、娘は爆発された挙げ句、いつも「食べ物を大事に」と言っているママが食べ物捨てたら、もしかして「自分まで捨てられちゃった・・・」と捉えていたかもしれません。そう感じていたら、私は一番大事な娘の心を満たすどころか、全否定していることになります。

私は頭にきて、ちゃんと話していませんでした。「お腹いっぱいなら、遊ばないでちゃんとご馳走さましてね」とも、「ふざけているのを見ているとなんだか悲しい」とも。バトルがあってこそ学べるのが子育て。きっと次は私も頭の片隅に「ママの気持ち」を言葉にできるかな? 私の気持ちを話すためには、ママ自身も満たされ、余裕がある状態でなければなりません。そんな違った見方を与えてくれるのがコーチであり、コーチングの醍醐味でもあります。

「でも、うちの場合は2人いるし〜」とか、「でも、そんなのは理想で〜」なんて“でもでも攻撃”が口をついて出てくるのなら、それはまだママに変わる準備ができていない証拠。少しでも今の状態を変えたいと思うなら、今こそ「わたし言葉」の出番ですよ〜!

体験談を語るマクギネス美和さん。
体験談を語るマクギネス美和さん。

前述のNYママの会で行われたマザーズコーチ説明会でも、ひよっこコーチ仲間でもあるマクギネス美和さんが「わたし言葉」の効き目を体験談で話してくれました。

お風呂で遊んでしまい、なかなか出てこない娘に、「なんで出てこないの?」とあなた(娘)を責めるのではなく、「風邪ひいちゃったら、ママ悲しいよ」と言うと、あっさり出てきたそうです。

私っているもダメとへこんでいるママがいたら、今日から試してみてください。「床に落ちたビーズ片付けないと、ママ踏んじゃったら痛いよ」とか、「今おやつ食べたらご飯食べられないよ。そうしたら、いっぱい食べて欲しいなと思ってご飯作ったママ寂しい」と。

苦しい子育てを楽しいものに変えるのは、ママの言葉から始まります。

監修 青木理恵(ICF国際コーチ連盟認定プロフェッショナルコーチhttp://rie-aoki.com

NY在住フリーライター

NY在住元スポーツ紙記者。2006年からアメリカを拠点にフリーとして活動。宮里藍らが活躍する米女子ゴルフツアーを中心に取材し、新聞、雑誌など幅広く執筆。2011年第一子をNYで出産後、子供のイヤイヤ期がきっかけでコーチングの手法を学び、メンタル/ライフコーチとしても活動。書籍では『「ダメ母」の私を変えたHAPPY子育てコーチング』(佐々木のり子、青木理恵著、PHP文庫)の編集を担当。

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