お年寄りほど脱成長・縮小もアリな人が増えていく
日本の将来への方向性、将来像は個々の価値観や思惑、現在置かれている環境によって違いを生じる。「成長を目指すべきか否か」はその道筋の一つとしてよく論議される基準でもある。内閣府が2014年10月に発表した調査結果「人口、経済社会等の日本の将来像に関する世論調査」によると、全体では日本の未来について成長を求めるべきだと考えている人は6割に達し、現状維持は1割強、個人の豊かさが維持できれば縮小でも構わないとする人は1/4ほどに留まっている。一方で高齢者ほど成長に賛同する人が減り、現状維持・縮小を求める人が増える傾向が確認できる。
次のグラフはその設問の具体的な回答状況。日本の望むべき未来社会構造について「成長・発展を追求する社会」「緩やかに成長・発展を持続する社会」「現在程度の水準を維持した社会」「縮小しながら一人当たりの豊かさの保たれた社会」のうち回答者が望ましいと思う選択肢を一つ選んでもらった結果。全体では成長派が56.6%、現状維持派が14.3%、個人の豊かさが維持できれば縮小してもかまわないとする縮小容認派が25.4%だった。
個人の豊かさが維持できれば縮小してもかまわないとする意見は、ある意味現実主義者的とも見受けられる。とはいえ、社会全体のリソースを確保できなければ、結局のところ個人の豊かさを追求することは難しい、さらに人は得てして現状維持を目指そうとすると、それすら叶わず、成長を目指してようやく現状維持が達成できる事案もあることを思い返すと、「個人の豊かさを維持できれば縮小でも構わない」とする意見は、やはり少々虫のよい話ではある(「豊かさ」に関する価値観そのものを変えれば話は別だが)。
属性別で大きな違いが生じるのは世代別。
結果としては大よそ「歳を経るほど成長・発展の回答が減る」「歳を経るほど成長派が減り、現状維持派と縮小容認派が増える」傾向にある。社会保障関連の調査結果に係わる複数の分析記事で指摘している通り、社会にまつわる指針や要望においては「自分の属性が有利になる意見」が強調され、自分と関係のない、自分にとって不利になる話は、たとえそれが社会全体にとってプラスとなり役立つ内容でも、敬遠する傾向がある。今調査項目でも、今はつらい立場に置かれていても自分の将来の展望に期待を持ち、夢を抱き続けて長い人生を歩むことになる若年層ほど成長を望み、ある程度足固めが出来て大きな変動によってその足場が揺らぐことを嫌う中堅層以降になると、現状維持、個人さえ良ければ縮小すら容認する意見が増加するようになる。あるいは歳を取るにつれ、現実を厳しく見据えているだけなのかもしれないが。
「年寄りに「お前らに未来はない」と言われる若者達」や「勝ち組の固定化をもくろむ「脱成長」」などでも指摘している通り、このような動きは特にシニア層の中でも色々な方面で力を有する、リソース的に余裕がある属性にいる人に多く見受けられる。若年層の立場から見れば、この傾向は身勝手さを覚えるのかもしれない。
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