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旅館窓側の謎スペース 名前覚えてる? 元はこっちが「入口」だったって本当?

とらべるじゃーな!穴場ずらし旅、愛好家

関東圏の穴場ずらし旅の愛好家、とらべるじゃーな!です。いよいよGWの本番。今回は旅館の窓際にある、ベランダのような謎スペースを取り上げてみます。

旅行中の方はすぐに役立ちますし、そうでない方も次の旅が楽しくなること必至です。

旅館窓際の謎スペースの名前は?

月岡温泉 広瀬館
月岡温泉 広瀬館

予約のときに調べるほどではないけれど、部屋に着いてあればうれしい窓際の謎スペース。名前は「広縁(ひろえん)」と呼びます。

日本家屋の「縁側」は、人がようやくすれ違えるか腰掛けるくらいの奥行。一方「広縁」は、奥行(部屋の端から窓まで)が約90~120cm以上のものを指します。(典拠 実用日本語表現辞典

旅行先に広縁があると、とても便利。

まずは座って景色を眺める場所。そして和室で座り疲れたときに椅子があると嬉しい。同行者がいて、ちょっと自分の時間やスペースが欲しい時に。同行者が先に眠ってしまったときに。このように実に様々な用途があります。

GWは余り関係ありませんが、夏場や冬は、外気を遮りエアコンの効きを良くする機能もあります。

広縁はもともと廊下だった?

身延山 宿坊 山本坊(以下2枚も同)
身延山 宿坊 山本坊(以下2枚も同)

この便利な広縁。実はもともとは廊下だったとされます。

写真は、古い設計をそのまま残している山梨県の旅館。廊下が全ての部屋をぐるりと囲むように配され、お客は、庭と部屋の間の廊下を通り、部屋に通されます。

廊下から部屋に入ると、大部屋となり、ふすまで区切って小部屋を作ります。

部屋に通された様子です。左手から廊下に出ることができ、右のふすまの向こうは別の部屋です。

江戸時代の旅館はこのような形式が主流だったと考えられ、これは当時の日本家屋の設計に倣ったものでした。旅館としては、ふすまを開ければ大宴会場に、夜になれば男女別の小部屋を作りと、とても効率が良かったのです。

四万温泉 積善館
四万温泉 積善館

写真は古い形式を今も残す群馬県の温泉旅館です。よく見ると、部屋を囲むように廊下が配されています。

引用 Yahoo!トラベル(積善館)
引用 Yahoo!トラベル(積善館)

しかし、開国を迎え明治時代になると、外国人観光客にとってこの様式には違和感が出てきます。施錠できるドアがなくプライバシーが不十分、またソファがないこともネックでした。

そこで外周の廊下が部屋ごとに仕切られ、ふすまは壁に付け替えられ、内側に施錠できる出入口が取り付けられます。広縁の誕生です(典拠 NHKチコちゃんに叱られる!2021年5月29日)。

その後新たに建設された旅館も、この形式を取ることが多くなりました。

日本家屋に共通の様式だった

この廊下がぐるりと囲む形式は、江戸時代まで日本家屋の標準的なつくりでした。

写真は、山形県にある、豪商で大地主だった本間家旧本邸です。江戸時代の1768年に建てられ、ブラタモリ酒田編でも紹介されています。

廊下がぐるりとふすまや壁で仕切られた広間を囲みます。左奥に主人や主要人物の居室があります。

広間を囲む広めの廊下には、目下の者が控えたという説もあり、本間家旧本邸では、玄関方向を見張る穴が廊下のすぐそばに配されています。

ちょっとうれしいスペースである旅館の「広縁」は、江戸時代の日本家屋や、開国の歴史を刻んだ痕跡だったのです。

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穴場ずらし旅、愛好家

関東周辺の穴場★ずらし旅スポットを紹介。日本テレビに旅の専門家として出演(2023年4月)。Yahoo!ニュースエキスパート公式旅行ライター(2023年7月企画賞)。JTB運営・地理旅行検定取得済み。東京都在住、旅行歴500泊以上。

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