断食は必要ない?健康長寿を支えるオートファジーを活性化する食事とは?
オートファジーは、細胞の中の物を回収して、分解してリサイクルする現象のことをいいます。オートファジーに関する研究は、日本が世界を牽引し続けている分野で、2016年に大隅良典先生がノーベル賞受賞をされたことで有名になりましたね。
先日、一般社団法人日本オートファジーコンソーシアムから、2023年はオートファジーに関する正しい情報の発信・啓発に力を入れるオートファジー元年とするとし、2月12日をオートファジーの日とするとの発表がありました。
そこで、どんな食べ方がオートファジーの機能にとってよいのか、最新の研究と「生命を守るしくみ オートファジー」(著者:吉森保大阪大学栄誉教授、講談社)を参考に解説してみたいと思います。
■オートファジーの3つの機能
オートファジーには、「栄養源の確保」「代謝回転」「有害物質の除去」3つの機能があるとされています。
「栄養源の確保」は、栄養源が枯渇し飢餓状態となった時にオートファジーが活性化する働きのことです。飢餓状態だけではなく、ストレスにさらされた時にも活性化するため緊急時の生命維持装置とも言える働きです。「代謝回転」は、細胞の中のたんぱく質をオートファジーで分解してアミノ酸にし、そのアミノ酸を使って新たにたんぱく質を作りだしていることを言います。この働きは、飢餓状態の時だけではなく普通の状態でも起きています。細胞の中でリサイクルが行われているのです。「有害物質の除去」は、オートファジーが細胞内に入ってきた細菌などの有害物質を隔離して除去する機能のことです。
■オートファジーの活性化に断食は必要?
飢餓ではない普通の状態の時にもオートファジーの「代謝回転」という機能が働いています。この機能は、私たちのからだの中で常に働いていますので、断食が必要というわけではありません。一方、断食など食べない時間を作ると、細胞の中で栄養源が枯渇するため「栄養源の確保」のためにオートファジーの働きは活性化します。
やはりオートファジーの機能を活性化するためには、断食などの食事をしない時間を取り入れた方がよいのでしょうか。
(食べない時間を何時間にすれば、オートファジーが活性化するのかは、現在のところ分かっていません。)
わたしたちのからだは、食べ物から摂らなければならない栄養素がたくさんあります。断食は、こうした必要な栄養素が足りなくなってしまうリスクがあります。
特にたんぱく質の合成に必要な必須アミノ酸やビタミンなどは、オートファジーの機能だけでは足りなくなってしまうため筋肉が減少してしまうと考えられます。
特に高齢の方は、介護が必要になりやすい状態であるフレイルのリスクが高くなると考えられるため、おすすめできません。
また、高脂質食も悪い影響を与えるという報告があります。
では、どんな食べ方をすればよいでしょうか。
おススメの食べ方は「腹八分目」です。食べ過ぎない「腹八分目」を意識することでオートファジーの働きを維持しつつ、必要な栄養素の摂取をすることが大切と言えます。
■オートファジーを活性化させるおススメ食品
オートファジーを活性化させる働きがあることが分かっている食材(成分)がありますのでご紹介しましょう。
・ぶどう、赤ワイン(レスベラトロール)
・ザクロ、ベリー類、クルミ(ウロリチン)
・鮭、イクラ、エビ、カニ(アスタキサンチン)
・納豆、みそ、しょうゆ、チーズ、しいたけ(スペルミジン)
・緑茶、抹茶(カテキン)
・ウコン(クルクミン)
などです。
毎日の食事にこうした食材を取り入れてオートファジーの機能を活性化させ、健康長寿を実現したいですね。
オートファジーに興味を持たれた方は、2月12日に行われるの吉森保先生も登壇される記念の無料のライブイベントで勉強してみるもよいかもしれません。