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ウクライナ軍、ソ連時代の近距離防空ミサイルシステム「9K35」でロシア軍のドローン破壊

佐藤仁学術研究員・著述家
「9K35 Strela-10」(ウクライナ軍提供)

2023年4月にウクライナ軍はソビエト連邦(ソ連)時代に開発された近距離防空ミサイルシステム「9K35 Strela-10」でロシア軍のドローンを迎撃して破壊していた。その様子を撮影した動画も公開している。

ロシア軍では主にロシア製の偵察ドローン「Orlan-10」や小型の民生品ドローンで監視・偵察を行っていたり、イラン製軍事ドローン「シャハド136」やロシア製軍事ドローンで攻撃を行っている。特にイラン製軍事ドローンを多く使用してウクライナ軍の軍事施設や民間インフラなどに奇襲を行っている。毎日あらゆる方面からロシア軍のドローンによる偵察と攻撃が行われている。

ドローンは攻撃用も監視用も探知したらすぐに迎撃して破壊してしまうか、機能停止させる必要がある。上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破させる、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。近距離防空ミサイルシステム「9K35 Strela-10」は明らかにハードキルである。

近距離防空ミサイルシステム「9K35 Strela-10」はソ連時代に開発されたことから、ロシア軍も使用してウクライナ軍のドローンやミサイルを迎撃している。

ロシア軍が使用している偵察ドローン「Orlan-10」や小型の民生品ドローンは、ジャミングでも機能停止できるが、最近の偵察ドローンには手榴弾などの武器や弾薬が搭載されている可能性があるので、機能停止させるだけでは上空からドローンが落下して地上で爆発する危険もある。そのため上空で撃破しておいた方が良い。また敵軍の監視・偵察ドローンに自軍の居場所を察知されると、その場所をめがけてミサイルが大量に発射されるので偵察ドローンを検知したらすぐに破壊させたり機能停止したりする必要がある。

近距離防空ミサイルシステム「9K35 Strela-10」のようなシステムで監視ドローンを攻撃して爆破させるのはコストもかかるし、大げさかと思うかもしれない。コストパフォーマンスも低い。だが監視ドローンこそ検知したらすぐに破壊しておく必要がある。監視ドローンは小型でも大型でも「上空の目」として戦場では敵の動向をさぐるのに最適である。監視ドローンで敵を検知したらすぐに敵陣をめがけてミサイルを大量に撃ち込んでくる。コストがかかっても上空のドローンを撃破することにプライオリティが置かれている。監視ドローンとミサイルはセットで、上空の監視ドローンは敵からの襲撃の兆候である。また部品を回収されて再利用されないためにも徹底的に破壊することができる"ハードキル"の方が効果がある。

▼ウクライナ軍による近距離防空ミサイルシステムでのロシア軍ドローンの迎撃

▼ロシア軍も「9K35 Strela-10」を使用してウクライナ軍のドローンやミサイルを迎撃している(Zのマークがついている)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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