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BlueskyはXの代替となるか

鳥海不二夫東京大学大学院工学系研究科教授

Twitter(現X)の代替SNSになるのではないかと期待されているSNSは,BlueskyThreadsではないかと言われています.

そんななか,これまで招待制を取っていたBlueskyが誰でも登録できるようになったとニュースになりました.

というわけで,せっかくの機会なのでBlueskyのデータについて分析してみたいと思います.今回使うデータはBlueskyのAT Protocolから取ったもので,割と網羅性は高いのではないかと思われます.

トータルで1億2700万程度のポストが取得できています.

時系列の変化

というわけで,さっそくポスト数の時間変化を見てみましょう.

ポスト数の変化(筆者作成)
ポスト数の変化(筆者作成)

ここでは,青がポスト数(Tweetに相当),オレンジがリポスト数(Retweetに相当)を示しています.徐々に増えてはいますが,概ねポストとリポストを合わせて一日100万件くらいといったところでしょうか.

Twitterの場合はRetweetの方が多かったのですが,Blueskyではポストの方が多く,拡散機能はまだそこまで広まっているわけではなさそうです.

ちなみに,一部ポストが無い時期がありますが,この時期は取得に失敗していたかと思われます.

言語の割合

次に,どのような言語がBlueSkyでよく使われているのかを見てみましょう.Blueskyを使う際には言語設定が行え,それを取得することができますので,そのまま利用しました.ポスト全体に占める割合を算出しています.

使用言語(筆者作成)
使用言語(筆者作成)

この図から,圧倒的にen=英語がよく使われていることが分かります.次いでde=ドイツ語,ja=日本語となります.日本語はBlueskyの世界では第3位の言語のようです.

ちなみに,2023年はドイツ語とだいぶ差がありましたが,2024年には日本語がドイツ語を上回りました.今ではBlueskyの世界第2位の言語と言えるでしょう.

ちなみに,1日ごとの上位3言語のポスト数を時系列に見たものがこちらになります.

上位3言語の1日当たりのポスト数(筆者作成)
上位3言語の1日当たりのポスト数(筆者作成)

これより,オレンジの日本語は2023年夏くらいにはドイツに抜かれていたものの,12月半ばくらいに追いついてきています.どうやらこの時期に日本語版のアプリが発売されたらしく,その影響が大きいのではないでしょうか.とはいえ,1日10万ポストは無いくらいを推移していますので,Xに比べるとまだまだかなという感じでした.

これが,登録オープンの影響でどうなったのかは今後の推移に期待したいところです.

Blueskyの略称

Blueskyといういい方はなかなか書きづらいので,略称を使うことも多いようです.サービス開始当初,日本ではブルスコと呼ばれることが多かったようですが,今はどうなっているでしょうか?一か月ごとの主な呼ばれかたを調べてみました.

略称利用率の変化(筆者作成)
略称利用率の変化(筆者作成)

これを観ると,当初はBlueskyと書いたり,青空,ブルスコと呼ばれていたようですが,2023年12月ごろからブルスカという呼び方が増加しているのが分かります.2月の段階では色々な呼び名が乱立しているようですが,ブルスコだけが利用されなくなっていることが分かります.なんで当初ブルスコだったんですかね?

出現単語の違い

次にXとBlueskyで投稿される単語にどのような違いがあるのかを見てみましょう.

XとBlueSkyのワードクラウド(筆者作成)
XとBlueSkyのワードクラウド(筆者作成)

左がXで頻出していた単語で,右がBlueskyで頻出していた単語群になります.今日,明日といった単語が多く使われているのは共通していますが,Xの場合は「参加」「結果」「応募」「抽選」といったキャンペーン系の単語が多く出現していることが分かります.

一方BlueSkyの方は「映画,漫画,本」など趣味系の単語が多く出ているように見えます.

これだけからは何とも言えませんが,Blueskyはまだキャンペーンアカウントに侵食されてはいないということだけは言えそうです.逆に言うとまだ企業が乗り込んできていないということでもあるので,これは良し悪しといったところでしょうか.

最新のBluesky

というわけで,招待制の期間におけるBlueSkyがどんな感じだったかを見てきましたが,最後に誰でも登録できるようになった2024年2月7日のデータを見てみましょう.

まず,ポスト数を見ると,この日1日で2,182,435回のポストが行われました.2月6日には698,162回だったので,3倍近いポストが行われたことが分かります.

次に,言語別のポスト数を見てみましょう.

2024年2月7日の言語別ポスト数(筆者作成)
2024年2月7日の言語別ポスト数(筆者作成)

なんと,日本語でのポストが100万回以上あり,英語のポストを上回りました.

解禁になった時間によって違いがあるので日本語が英語を超えたとは言えませんが,日本語だけで100万ポストというのは2月6日の全世界のポスト数を上回る数ですので,中々なものです.

もちろん,物珍しさで使ってみただけの人も多いでしょうから,これからどう推移していくかによって,Blueskyがどのような立ち位置になるかは分かりませんが,昔のTwitterっぽいBlueskyは意外と日本で人気が出るのかもしれません.今後については,明日以降引き続き分析をしていってみたいところです.

まとめ

登録が自由に行えるようになったBlueskyについて分析を行ってみました.

公式のアカウントはまだまだ少なかったり,拡散機能がまだ十分に使われていなかったりと,第2のTwitterになれるかはまだまだ未知数です.

ただ,少なくとも今Xで問題になっているインプレゾンビやキャンペーン応募アカウントのようなものはいないので,比較的快適に過ごせるのかもしれません.特に,インプレッションによって収入を得る方法は存在しないので,当面インプレッション稼ぎだけを目当てにするようなアカウントは現れないでしょうから,Xほどはインプレ稼ぎの偽誤情報は蔓延しないと考えられます.今のところアテンションエコノミーから一定の距離を置いた社会が作られそうな雰囲気です.

というわけで,個人的にはBlueskyわりといい感じになっているかなと思います.あとは,どれだけ日常的なユーザがどれだけ増え,治安が悪化していくか次第ですので,推移を見守りたいところです.

なお,筆者は日本製SNSであるタイッツーもひそかに応援しています.

東京大学大学院工学系研究科教授

2004年東京工業大学大学院理工学研究科機械制御システム工学専攻博士課程修了(博士(工学)),2012年より東京大学大学院工学系研究科准教授,2021年より現職.計算社会科学,人工知能技術の社会応用などの研究に従事.計算社会科学会副会長,情報法制研究所理事,人工知能学会前編集委員長.人工知能学会,電子情報通信学会,情報処理学会,日本社会情報学会,AAAI各会員.「科学技術への顕著な貢献2018(ナイスステップな研究者)」

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