愚直なまでに日常に寄り添うポップスを追求してきた、wacciが奏でる”誠実な日々”
日常ほどドラマティックな物語はない――そう言い続け、聴く人の心に寄り添い、そっと背中を押すことができるものこそがポップスだと信じ、音楽に真摯に、そして愚直に向き合ってきた5人組バンド・wacci。メジャーデビューから3年半、満を持して発表した1stフルアルバムには、既発曲と新曲が収録され、彼らのこれまでの想いと活動が集約されたような”説得力”ある。音楽性が違う5人が集まり、できあがったのが”聴きやすく懐の深いポップス”だ。wacciというバンドの実像、”第一期”の集大成とでもいうべき1stアルバムについて、話を聞いた。
wacciとは?
――ファーストフルアルバム『日常ドラマチック』(8月17日発売)は、満を持して、という感じですか?
橋口 はい、デビューから3年半、満を持してです。
――wacciは橋口さんを中心に結成されたバンドですが、橋口さんはその前は一人でやっていたとお伺いしました。
橋口 一人でやる前に、ギターロックの3ピースバンドをやっていて、それが活動休止状態になり、元々路上でアコースティックギターを弾きながらライヴをやっていたので、またそこに戻った感じです。その時にベースの小野と出会ったのが最初です。その時に小野は因幡と横山と女性ボーカルのバンドをやっていて、そのバンドの企画に僕が呼んでもらいました。そのバンドが解散して、小野と僕でバンドをやろうということになりました。サポートで頼んだのがドラムの横山で、最初3人で「橋口バンド」という非常にダサい名前でやっていました(笑)。やっていくうちにこれいいねってなった時に、鍵盤の因幡と別のバンドでやっていた村中に声をかけ5人組になったのが2009年12月です。
――小野さんは明治学院大学のジャズ研出身で、橋口さんとは音楽性が違っていたのでは?
小野 違っていたと思います。橋口とは元々セッションで出会ったのですが、その場でコード進行を決めて、即興で歌詞を作って歌い始めて、こういう人がいるんだって驚きました。
――橋口さんはその時サラリーマンだったんですよね?
橋口 wacciを組んだ時はまだサラリーマンでした。
――小野さんは音楽でご飯を食べて行こうと。
小野 音楽で飯を食いたくて、頑張っていましたがまだたどり着いていない状態でした。
橋口 横山はNTTコミュニケーションズで働いていました。
――音楽という茨の道を選びましたね(笑)。
横山 転職しただけのつもりなんですけどね(笑)。
――5人でオリジナルをやるという時に、橋口さんの作った曲でやろうって決められて、どういう音を作っていこうと今の音になったんですか?
横山 根本にあるのは橋口の歌と歌詞を活かすということで、それは暗黙の了解としてありました。
橋口 僕としては最初にやった時からこのタイプの音楽って、ソロアーティスト+4人のサポートという見え方、パターンが多いはずなのに、このメンバーでやっていて、すごくバンドでやりたくなる個性がそれぞれにあったというか。でもそれは決して言葉とかメロディを邪魔するものではなくて、それぞれの音楽性なのか、人柄なのか最初から“5人の音”みたいなものがあったような気がして。それがバンドらしさだと思っています。
音楽性の違う5人が集まり、wacci流ポップスを作り上げる
――橋口さんが作る歌を、真っ直ぐ伝えていこうというコンセプトはありつつも、たぶんみなさん好きな音楽はそれぞれ違いますよね。
小野 そうですね、大分バラバラですね。僕は聖飢魔IIが大好きですね。
因幡 僕は高校までずっと打ち込みのダンスミュージックを聴いていて、大学から小野と一緒にジャズをやって、J-POPと呼ばれる音楽はほぼ通ってきてないですね。
――ポップスをあまり聴いていなかったというのは、wacciの音を聴いていると意外ですね。橋口さんは?
橋口 高校時代はゆずとかを聴いていました。でも大学はジャズ、ソウル、ファンク、R&Bとかをやる軽音楽部に入りました。管楽器を入れて大所帯でやるような音楽で、年に5~6回ライヴをやるという感じでした。
横山 僕が所属していたサークルは、橋口がいた大学の軽音楽部と交流があって、一緒にライヴをやったりしていました。
橋口 ジャズ研みたいな感じで、ジャズ系、パンク系、ポップス系をやる人たちが一緒にいる変わった軽音楽部でした。
――橋口さんは大学入って色々な音楽の洗礼も受けたんですね。
橋口 ゆずとかしか知らない状態で大学に入って、いきなりアース・ウインド&ファイアの「SEPTEMBER」を歌うという。でもコーラスができなくて、発音悪くて叱られて…っていうのを1年の時はずっとやっていました。ユーミンとかはっぴぃえんど、山下達郎さんの音楽に触れたのも大学に入ってからで、一生懸命曲を覚えてコピーして、みんなに迷惑かけないように頑張るという感じでした。
――当時はメロコアとかが流行っている時代だったと思いますが、ロックもあまり通ってこなかったんですね。
橋口 そういうのは僕があまり受け付けられなくて。そこに入れなかった自分に負い目を感じていたというか。
でもそんな時に大学で、歌もカッコよくて、ギターのカッティングとか、ベースのラインとかもレイドバックしたリズミカルな感じとか、そういうものを好きでいいんだということを教えてもらいました。きっとそういう音楽に対して憧れがあったんでしょうね。
――村中さんはどんな音楽が好きだったんですか?
村中 僕は元々J-POP大好きっコで、兄貴が聴いていたユニコーンにハマりました。奥田民生さんがきっかけでギターを弾き始めました。高校生になるとレッチリを聴きはじめ、そのルーツミュージックになっている、ブラックミュージックやファンクを聴いてみようという感じで遡って聴いていました。
――横山さんは?
横山 僕は、ドラムを始めるまではB'zやMR.BIGが好きで、大学に入学してブラックミュージック系のサークルに入って、プリンスがすごく好きになって。それとゴスペルのサークルにも入っていました。100人位コーラスがいて、バンドもいて、当時、ゴスペラーズが流行っていたのでゴスペルというと、アカペラと思っている人が多かったのですが、僕がやっていたのはバンド+コーラス100人で演奏するというスタイルでした。J-POPは聴いてはいましたが、ファンクからスガシカオさんにいくという、逆行するパターンでした。
――メンバーそれぞれの音楽性がひとつになって、それぞれの色が少しずつミックスされているので、wacciの音楽は聴きやすくて、間口が広い感じなんでしょうか。
橋口 そうかもしれないですね。普通だったら、そういうメンツが集まるとぶつかり合うと思いますが、それなりにみんなバンドを経験した上で、歳を重ねて、バンドに必要なものとそうじゃないものがある程度わかった上で、20代後半で組んだバンドだからこそ、今の音が成立していると思います。
――でもその中心には橋口さんが作るメロディがしっかり鎮座していて、それが大きいんでしょうね。
村中 それは絶対ありますね。
――そもそもデビューのきっかけというのは?
橋口 元々前のバンドで、今の事務所のオーディションを受けて、落ちたのですが、でもまた曲ができたら送ってね、と言われていました。その後wacciを結成して、速攻で何曲か書いて5曲の入りのミニアルバムの形にして、すぐに送って認めてもらえて、今に至る感じです。という解釈です、僕は(笑)。
――2009年にwacciを結成して、2010年にはインディーズからミニアルバムリリース。2012年11月にメジャーデビューと、順調にきました。
橋口 でも、ものすごく計画的にやりました。まずホームページを作って、CDの納期を決めて、それまでに自主企画を一回やって、認知してもらうためにしっかり組み立ててやっていたので、計画的にきちんと進めました。
wacciの強みは生活に、日常に寄り添う音楽。5thシングル「大丈夫」をきっかけにファンが急増
――wacciの音楽は、日常生活に寄り添うことをテーマに、人の背中を優しく押してあげたり、勇気を与えてあげるものが多いと思います。そして何より楽しそうにライヴをやっている姿に心を打たれました。メジャーデビューしてみて、色々なアーティストの音楽と対峙してみて、改めて自分達の強みはどこにあると思いましたか?
橋口 日常に寄り添う、生活に寄り添うという単語って、ここまでバンドをやってきて、色々なバンドがいる中で、僕たちのカラーとしてやるには、すごくフワっとしているのかもしれないなとは思います。でもそれは絶対に間違ったことではなく、曲を聴いてもらえばもらうほど、その人に共通する気持ちやフレーズは間違いなく曲の中に入っていて。それはwacciと向き合ってもらって、初めて発生するものだと思うし、だから深く知ってもらえたら、絶対に離さない自信はあります。その人の一生の中で、必ずこの曲は大切だと思ってもらえる曲を作り続けてきていると思っていますが、色々なバンドがいる中で、どうしてもうちのバンドのカラーは?となると、さっきもおっしゃっていたように、楽しそうに演奏しているとか、バンドとしてまとまっているとか、そういうところが入口になってきてしまうので、それはどうなんだろうという想いは、正直ずっとありました。その中で、唯一、自分の中で救いというか一筋の光だったのが「大丈夫」(5thシングル;2015年)という曲です。この曲は、そこまで作り込まずとも、自分たちがこれまで送ってきた生活の一部を元に書いて、誰かを励ましたいとか、日常生活の中の悩みで苦しんでいる人の背中を押したいという気持ちが、色々な人達の心に深く入っていき、心に響く曲になった理由だと思いますし、そういう声をたくさんいただきました。その時に、自分たちがやってきた日常に寄り添うということが、間違っていなかったんだと思えました。そういう意味では、満を持してアルバムを出すというところに結びついてくるというか、「大丈夫」という曲を入口にして、wacciの音楽を知ってくれた人が、「大丈夫」以外の曲を聴いて僕たちの事をどんどん好きになってもらえればいいなと思いますし、これから先、「大丈夫」のような曲をもっと書けるんじゃないかなって。今まで6枚シングルを出して、わかったことのひとつです。
音楽に真摯に向き合ってきた5人の想いが結実した1stアルバム『日常ドラマチック』
――ファーストアルバムにしてこの説得力たるや…。6枚のシングルを発表し、ライヴを重ねてきて、今までやってきたことが全て繋がってこのアルバムになっている感じがします。
橋口 嬉しいです。自分たちの音と言葉に、シングル、ミニアルバム一枚一枚きちんと向き合ってきた事が実感としてあるアルバムになったと思うし、だから絶対に知ってもらえれば響くというか、入口を通ってきてくれた人には、一曲一曲は実はさらっとしてなくて、エモい言葉だったりだとか、伝わる言葉だったり、その曲に乗せた想いや演奏は絶対伝わると思います。だからこのアルバムを出したら何かが変わると、みんな思っています。
――wacciのパブリックイメージは温かいとか、切ないとか爽やかというキーワードがでてきますが、確かに鋭いメッセージもあって、温かさと鋭さが同居しているからこそ、聴き手に伝わるんだと思いました。
橋口 そこまで伝えていかなければいけないと思っています。
――詞はいつもどうやって書いているんですか?
橋口 日常生活の中でも浮かぶ言葉が明らかにデビュー前より増えてきましたね。それは聴き手を意識しているのかどうかはわからないのですが。
――橋口さんの世界に、聴き手の存在が影響するようになった
橋口 自分だけの歌で終わらないようにするためにはどうすればいいか、という事を考えていると、カフェで隣の席から聞こえてくる会話を土台にして、自分の思ったことを書くようにはしていて、以前よりもアイディアのきっかけが浮かぶようになったり、アンテナを張るようにはなったと思います。
――メンバーの皆さんは、橋口さんが書く言葉やメロディが変わってきたと感じていますか?
因幡 詞に関しては本質は最初からズレていないと思います。ただそこに付いてくる肉という部分に関しては、やっぱり長年の経験とかもあるので、そういう意味では変わったところもあると思います。
横山 本質は変わっていませんが、さっき言っていたような実はエモくて、刺している部分がやっぱり肝だし、そういうところを意識して書いているんだなと、最近よく感じるようになりました。
「「変身」が一番バンドアンサンブルを感じる。バンドサウンドをしっかり出せた」(因幡)
――皆さんにとっては宝物のような1stアルバムですが、一人ずつ特に思い入れの強い曲を挙げていただけますか?なるべく被らないようにお願いします(笑)
因幡「変身」です。一番バンドアンサンブルを感じるというか、しっかりバンドサウンドを出すことができたという喜びを感じました。一年以上前から原型があって、アレンジをして打ち込みでデモまでは作っていて、その時からずっといいなと思っていました。僕はいつも完成するまで、曲の感動とか感想とかを持てないタイプなんですね。完パケたものを聴いて初めて、最終的に自分の中に落としこむタイプなんですが、この曲だけレコーディングしている時からいいなと思っていて。
――完成するまで敢えて感想を持たないように自分に仕向けている感じですか?
因幡 もしかしたらそうかもしれない。でもそんな強い意志もなく、この曲だけいい意味でブレたんだと思います。仮歌がない状態、サウンドだけの時点でもインパクトがあって。その後に歌詞がついて、歌がのってきた時のゾクゾク感は今までになかった感覚でした。話し合わずとも、全員の見ている方向がドンピシャになった感覚ですね。もちろんその後話し合いましたけど(笑)。
「ポップスバンドである以上、なんでもあり。「君に不採用」が一番振り切った曲」(小野)
小野 僕は「君に不採用」です。さっきの話と逆行するかもしれませんが、ポップスバンドである以上はなんでもやった方がいいと思ってるんです。ロック調であろうとメタル調であろうと、普通のエイトビートのポップスであろうと。歌と歌詞に合わせてなんでもやります、という姿勢がポップスバンドのいいところだと思っていて。今回一番振り切ったのはこの曲かなと。バッキングとしてはメタルっぽい事もやりながら、和楽器の音が入ったり、ホーンセクションが入ったり、かなり面白い事になっています。ここまでできたから、もうちょっと先まで行けるかなという自信にもなりました。
「「歩み」はバンドの雰囲気にすごく合っている。初演の時は鳥肌が立った」(横山)
――橋口さんが歌うとどんな曲もwacci流ポップスになりますよね。
横山 僕は「歩み」ですね。弾き語りで最初作られた時からサビのメロディがすごく好きで。歌詞はちょっと変わりましたが、これはwacciでやるべきだとずっと思っていて。「歩み」というタイトルになって、前向きな曲になりましたが、バンドの雰囲気にすごく合っていると思います。前回のツアーの初日で初めて演奏したのですが、メンバーには特に言っていませんでしたが、その時鳥肌が立って。お客さんもたくさん来てくれていて、そんな中で初めて披露したのですが、会場全体がwacciの雰囲気で満たされるような感じがしました。すごく好きな曲です。
橋口 初演奏って難しいですよね。色々邪念が…。お客さんはどんなリアクションしてくれるのかなとか、どんな顔して聴いているのかなとか、そんな事を考えながらも間違えられないし、でも間違えるんですけどね(笑)。
――ライヴで新曲を披露して、お客さんの反応をダイレクトに感じるというのは、ミュージシャンの楽しみのひとつでもあります。
村中 醍醐味ですね。前回のツアーで、中盤ぐらいに「晴れるかな」という曲を初めてやって、すごく好きな曲なのでリハの時から、ライヴでやった時こういう画になったら気持ちいいだろうなと、想像しながらやっていますけど、やっぱり初日は緊張しますよね。でも回を重ねるごとに僕が思い描いた、見たかった景色を見ることができた時の感動はもう……。泣きそうになりました。
――「歩み」といえば、ミュージックビデオ(MV)は突っ込みどころが多いですよね(笑)
村中 突っ込んでいただかないと困ります(笑)。
――wacciのMVって人の家とか人がいるところに乗り込んで演奏する曲が多くないですか?(笑)
橋口 えっ…そういえば「Weekly Weekday」も部屋、「会いにいくよ」は教室、「大丈夫」も保育園でした。上がり込むパターンが多いですね(笑)。結構日常に入り込んできますね(笑)。
「歩み」のMVは、EDテーマになっているドラマ『侠飯~おとこめし~』のセット、同じクルーで撮影
――「歩み」のMVはどういう発想からきているんですか?
因幡 この曲がエンディングテーマになっているドラマ『侠飯~おとこめし~』(テレビ東京系)のセットをそのままお借りして、同じクルーの皆さんに撮影してもらいました。
橋口 今までのMVとはちょっと違って、ドラマ仕立てのものを作ろうということになり。いやいや、という笑いもあれば、純粋に爆笑したり、最後はちょっと心が温かくなるような笑顔があったり、色々な種類の笑顔を作ってくれるMVだなと思って。最初オフラインで観た時はびっくりしました(笑)。え、こうなるの!?という感じでしたが、今振り返ってみるとすごく良くて、僕ららしい映像だなというか。
――でもwacciの曲って悩んだり考えている時に、部屋で聴くとハマるという感じの曲が多いので、コンセプト的には間違いではないと個人的には思ってしまいました。
橋口 最初の頃は“四畳半フォーク”ならぬ“ワンルームフォーク”って言っていたので、まさにそこだとは思います(笑)
――そういえばデビュー当時は“想食系”というキャッチフレーズもありましたが…。
橋口 もう32なので、想いを食ってる場合じゃないです(笑)。あれはなんとなく消えていった感じです(笑)。そろそろ男らしさを前面に出して……いえ、今のは忘れてください(笑)
「色々なものを削ぎ落した、wacciの芯が見えるポップス「君とシチューを食べよう」」(村中)
「「東京」があったから、頑張って作ることができた曲がたくさんあった。一番大切な曲」(橋口)
――思い入れの強い、アルバムの推し曲に戻りましょうか
村中 すごく迷いましたが、僕は「君とシチューを食べよう」という曲が一番音もシンプルだし、伝えたいことがわかりやすい曲なので好きです。さっき小野くんも言ってたけど、ポップスなので、なんでもやっていいという中で真逆にある、本当にシンプルなサウンドで、僕たちはアコースティック寄りのサウンドは得意ですし、強みだと思っています。そういう曲はライヴでもポイントになったりするので。この曲は色々な肉を削ぎ落として、その芯の部分でwacciってこういうバンドだよねと思ってもらえると嬉しいです。
橋口 僕はやっぱり「東京」ですね。この曲ができたことで、すごく自分の中で曲を書くという事に対してのハードルが、いい意味で上がったと思います。
――「東京」というタイトルの曲は他のアーティストも書いていて、どれも名曲が多いですよね。
橋口 この曲は、どこでやってもちゃんとリアクションが返ってくる、言葉を受け取ってくれる一曲だと思っていて。さっき「大丈夫」という曲が、僕らの音楽への入口を作ってくれた事によって、wacciの曲を面と向かってちゃんと聴いてくれる人が増えてきました、ということを言いましたが、そういう意味では面と向かって聴いてくれた時に、「東京」という曲は一番届くと思っています。ちょっと悪い意味でいえば「東京」を超える曲を常に書こうとして、ずっと戦っている感じです。「東京」が書けたので「羽田空港」という曲ができ、本当は三部作なので、三部作として着地できる曲も書かなければいけないんです。でも「東京」があったから頑張って作ることができた曲ってたくさんあると思うので、このアルバムを通して自分にとって一番大切な曲は「東京」だと思います。
誰もが楽しむことができるwacciのライヴ
――これまで何度かwacciのライヴを観させていただいたのですが、wacciの事を知らない人が情報なしで来ても、すごく楽しめるライヴだなと思います。普通は知らない曲を2時間も聴かされたら、苦痛じゃないですか。でもwacciのライヴは違います。
橋口 そういう感覚って、多分僕ら全員同じで。2時間知らない曲を聴かされる苦しみは皆んなわかっていますので、おっしゃる通りそこはどんな人でも楽しませたいという事を、常に意識してやっています。
<Profile>
wacci(ワッチ)。2009年12月、ボーカル、ギターの橋口洋介を中心に結成。小野裕基(B)、因幡始(Key)、村中慧慈(G)、横山祐介(Dr)の5人組バンド。これまでインディーズミニアルバム2作、シングル6作をリリース。7月に5度目の全国ワンマンツアーを終えたばかり。8月3日にリリースした6thシングル「歩み」は、ドラマ『任飯~おとこめし~』(テレビ東京系)のエンディングテーマに起用されている。9月3日から初の関東全県ツアー『関東ドラマチック』が、11月からは来年2月まで続く全国ツアー『あっち、こっち、そっち、わっちツアー 2016-2017冬~日常ドラマチック~』がスタートする。