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災害時に情報拡散するときの注意点

鳥海不二夫東京大学大学院工学系研究科教授
(写真:イメージマート)

災害情報をSNS上で拡散する際の偽誤情報などに注意をする必要があります.

災害時の情報拡散の際にご参考いただければと思います.

一般に自然災害発生時の偽情報・誤情報やその拡散にはどのような傾向があるか。

  • 日本においては,比較的偽誤情報の拡散は早い段階で訂正が入ることが多い.(https://cir.nii.ac.jp/crid/1520860177961424512)
  • 訂正が入らない(真偽不明)の情報は拡散するかもしれない.
  • AIを使った偽誤情報がすごく多いというわけではない.
  • 誤解から生じる偽誤情報も多いため,偽誤情報を流したアカウントを一方的に責めるべきではない.例)大阪地震の際には電車が脱線という噂が流れたが,誤報だった.出所を調べても混乱を招こうとして行った行為ではない.
  • 被災地とは異なる場所で偽誤情報が広まることが多い.広島災害の時の偽誤情報は主に関東圏で広まっていた.
  • 「誰かに届くかも」程度の薄い期待で拡散する必要はおそらくない.

SNS上に真偽が分からない情報(やその訂正情報)が流れて来た場合、どのように対応するべきか。

  • 拡散しないことが一番(言われすぎていて改めて言うほどでもないかもしれないが)
  • 万が一間違っていた場合に責任が取れない情報を拡散することは避けるべき(責任を問われることもある).(参考)
  • 「こんな偽誤情報があるから注意しよう」という具体的な偽誤情報に関する注意喚起も,拡散する必要は基本的にない.
  • その偽誤情報を見た人は積極的に拡散してもよい.それ以外の人はかえって混乱を招くことがあるので,不必要.(参考
  • もちろん,一般的な「偽誤情報に注意」という話は重要ではある.

災害有事において一般市民(被災していない)はSNSとどのような距離感で接するべきか。

  • 情報収集として使うのは良いが「何か役に立とう」とする必要はない.
  • 情報を拡散するなどの行動をして役に立った(社会貢献した)気分になることをスラックティビズム(怠け者の社会貢献)と言う.
  • 情報拡散の効果は小さいので,役に立ちたいのなら寄付などを考える.
  • 情報拡散する場合は自分の周りの人(フォロワーなど)に伝える必要があるかどうかで判断したほうが良い.
  • 本当に重要な情報であればそれを生かせる人に直接知らせたほうが良い.
  • 例えば,被災した人が助けを求めているツイートを見たら,(誰かが届けてくれるだろう)と期待して拡散するのではなく必要な場所に連絡をする労力をかける.
  • 極端な話最初の一人が連絡をして拡散しなければ,同じ連絡が色々な人から何度もされることが無くなり,現場の負荷が下がると考えられる.

宮崎沖地震での注意

  • 特定のキーワードで情報を取得しようとすると「インプレゾンビ」が多すぎるため注意
  • 「app.linkから」と書いてある画像はクリックすると画像後関連性のないリンクに飛ぶため特に注意

インプレゾンビ的投稿(Xより)
インプレゾンビ的投稿(Xより)
  • 画像をクリックする際には「app.linkから」ではないことを確認してからにするべき
  • 本当に役立つ情報は多少は「リポスト」や「いいね」が発生するので,拡散0の情報は見ないでよい.
  • 検索条件に「min_faves:1」と入れると,インプレゾンビの大部分を避けることが可能
  • 例:南海トラフ+いいね1以上 vs 南海トラフ条件なし

実は,この記事の内容は基本的には能登地震の際に日経新聞から質問を受けて回答をまとめたものです.参考までに,こちらが回答が掲載された記事になります.これだけ書いたものがわずか一行.どうしてこうなった.

東京大学大学院工学系研究科教授

2004年東京工業大学大学院理工学研究科機械制御システム工学専攻博士課程修了(博士(工学)),2012年より東京大学大学院工学系研究科准教授,2021年より現職.計算社会科学,人工知能技術の社会応用などの研究に従事.計算社会科学会副会長,情報法制研究所理事,人工知能学会前編集委員長.人工知能学会,電子情報通信学会,情報処理学会,日本社会情報学会,AAAI各会員.「科学技術への顕著な貢献2018(ナイスステップな研究者)」

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