秋元真夏の乃木坂46卒業後の変化。30歳でのときめきと女優へ意欲が高まる予感
乃木坂46で2代目キャプテンを務め、今年2月に卒業した秋元真夏。バラエティを中心に活躍を続けているが、来年1月上演の舞台『鍵泥棒のメソッド→リブート』ではヒロインを演じる。堺雅人が主演した名作映画の新たな舞台化。売れない俳優と伝説の殺し屋の人生が入れ替わった物語の中、記憶を失くした殺し屋と出会う雑誌ライターの役だ。アイドル卒業後の変化と、舞台の稽古を前に、これまで多くはなかった女優業への取り組みを聞いた。
予定を詰め込まず家でのんびりと
――乃木坂46を卒業してから、生活はだいぶ変わりましたか?
秋元 出不精になりました。乃木坂46時代は休みができたら予定を詰め込んで、どこかに行っていたんですけど、今は家でのんびりしています。出掛けるとしても、友だちとごはんに行くくらいです。
――心境の変化があって?
秋元 少し時間に余裕ができたので、休みに詰め込まなくても大丈夫になった、というのはあります。
――『明石家電視台』に出演されたときは、「5キロ太った」と話されていました(笑)。
秋元 リハーサルとかで定期的に踊って体を動かしていたのが、卒業してからまったくなくなったので。自分でジムに行ったりも、なかなかできていません。
――余裕ができたといっても、相変わらずお忙しそうですからね。何か新たに始めたりもしていませんか?
秋元 今まで通り、ちょこちょこ料理をしているくらいです。
24時間メンバーのことを考えてました
――気持ち的に、アイドル時代より楽になった面はないですか?
秋元 考えごとの方向が変わりました。乃木坂46時代は家にいるときでも、メンバーについて「あの子は今どうしているかな」とか「明日会って元気じゃなかったら、こんな言葉を掛けよう」とか、24時間ずっと考えている感じだったんです。卒業したら、メンバーたちにそんなに会えるわけでもないので、応援する形になって。その分、自分のことを客観的に考える時間が、すごく増えました。
――キャプテンとして、そこまでグループのことを考えられていたのは、改めて感動します。個人での活動は引き続きバラエティが多いですが、自分に合っているのはそっちだと?
秋元 経験値で言うと、やっぱりバラエティがグッと多いので。かと言って、バラエティも自信満々で出ているわけではないですけど、お芝居に関してはこれから場数を増やして、楽しさを見出せるくらい、いろいろ学びたい気持ちが強いです。
――デビュー前からも含め、女優さんに憧れたことはありませんでした?
秋元 もともとアナウンサーになりたくて、テレビ業界に憧れていた感じでした。でも、女優さんになろうとは思わなかったです。
藤原紀香さんに悩みを聞いてもらいました
――乃木坂46時代もグループでのドラマなどがありましたが、そこで面白みを感じたりは?
秋元 不安のほうが大きくて、面白さを感じられるところまで行きませんでした。現場に行くたびに「大丈夫かな。ご迷惑を掛けないかな」と気が向きがちで。今回の『鍵泥棒のメソッド』では稽古期間もしっかりあるので、その間に、お芝居の面白さを掴めるくらいになれたらいいなと思っています。
――これまでの演技経験では、特に印象的だった作品はありますか?
秋元 4年前の舞台『サザエさん』ですかね。個人的に初めての舞台で、しかも大きな作品のワカメちゃんという誰もが知っている役となると、プレッシャーもありました。家族の物語なので、仲の良さも出さないといけない。考えることがいっぱいあった中で、主役の藤原紀香さんが本当に妹みたいにかわいがってくださったんです。本番期間中も、私の小さな悩みにアドバイスをくださったり、ごはんに連れていっていただいたり。そういうところでできる関係性が、乃木坂46がすべてだった私には新鮮で、すごく勉強にもなりました。
――藤原紀香さんから、どんなアドバイスをもらったんですか?
秋元 ごはんに連れて行ってくださったときは、その場で台本を取り出して「この台詞の読み方はこうすると、こんなふうに伝わるよ」とか。伝え方、伝わり方をいろいろアレンジして、熱心に何パターンも教えてくださいました。
踊って歌ってたのに動いて台詞を言うのは難しくて
――『サザエさん』でも、演技的に悩むことは多かったんですか?
秋元 はい。動きながら台詞を言うのが難しくて、壁に当たりました。乃木坂46でもダンスと歌を一緒にやっていたのに、台詞だとまた感覚が違っていて。
――でも、それも乗り越えたんですよね?
秋元 公演数が多かったので、その間に一緒にやっていた方たちに「成長した。大丈夫だよ」と言ってもらえるくらいにはなれました。
――本番で手応えもあって?
秋元 手応えはなくて(笑)、ずっと不安を抱えながら、周りの大先輩たちに助けてもらった感じです。
――生の舞台ということでは、ライブで慣れていたのでは?
秋元 確かに、人前に立つ緊張はライブで慣れている部分でした。ただ、お芝居ではイエーイと盛り上がるより、じーっと見られますよね。そのギャップに慣れるまで、時間が掛かりました。今回はそれ以来の舞台で期間が空いてしまって、また1からですが、その状態までしっかり持っていきたいです。
笑える部分がある作品が好きです
――『鍵泥棒のメソッド→リブート』の話が来たときは、どんなことを考えました?
秋元 ありがたいなと思いました。せっかくいただいた機会なので、自分の成長を見せたいですし、映画を観た方にも初めて作品に触れる方にも「観て良かった」と言ってもらえるように、頑張りたいです。
――秋元さん自身、映画をご覧になっていたそうですね。
秋元 はい。たまたま面白そうだなと思ってDVDで観て、このお話が決まってから、もう一度観返しました。
――映画やドラマはよく観ているんですか?
秋元 ちょこちょこ観ています。ずっと好きなのは『ナースのお仕事』。笑える部分があるのが、私の中ではひとつのポイントかもしれません。『鍵泥棒のメソッド』も特に今回の『リブート』だと、笑いの要素が多めになっていて。共感できたり、自分の経験を投影しやすいところもあったり、台本からすごく面白いです。
グイグイいくところは自分と真逆
――演出のマギーさんとは、もう話をしたんですか?
秋元 ビジュアル撮影のとき、少しですがお話しできました。私が緊張しながら「映画も観ていて……」という感じでご挨拶させていただいたら、「気負いすぎず、秋元真夏さんらしさを入れてくれればいいから」とおっしゃってくれました。
――秋元さん自身は、自分にこの役が来たことに納得感はありました?
秋元 役の香苗と共通しているのは、求められたことに真面目に取り組むところです。私も集中してガッとなるタイプなので。逆に、自分から結婚を申し込んだり、グイグイいくところは真逆だなと思います。そこは意識して演じたいです。
――11年前に公開された映画では、香苗役は広末涼子さんが演じていました。
秋元 映画はやっぱり香苗役に注目して、自分が演じるんだと意識しながら観直しました。でも、マギーさんには「あまり気にしなくていい」と言っていただいています。映画は映画で面白かったと頭にしまい込んで、新しい香苗を描きたいと思っています。
買い物して両手が紙袋でいっぱいだとときめきます
――香苗は雑誌ライターとして、いろいろなジャンルの最高峰を調べてきて、イスとか塩とか本物を見る目が肥えています。そんな目は秋元さんも持っていますか?
秋元 私は人に「これはすごく良いものだよ」と言われたら、全部良く見えてしまうので(笑)。目が利くほうではないと思います。
――料理が得意だと、食材を見る目はあるのでは?
秋元 新鮮かどうかはわかります。それくらい、誰でもわかると思いますけど(笑)。
――「ドキドキ」が作品のキーワードにもなっています。秋元さんは最近、恋愛でなくても何かにドキドキときめいたりはしました?
秋元 どうでもいいようなことだと、ゲームをやって、うまくいったときはドキドキしました(笑)。スイカゲームにハマって、ただ小さなフルーツからスイカを作り上げていくだけなんですけど、1人でひっそり、ワーッとテンションが上がりました(笑)。
――わりと地味なドキドキで(笑)。
秋元 確かにそうですね。あと、お買い物が好きで、洋服を買って紙袋でいっぱいになった両手を見て、ときめくことはよくあります(笑)。
――香苗は、記憶を失い若手俳優と人生が入れ替わった伝説の殺し屋と出会います。実際の年齢は香苗より結構上ですが、このおじさん世代にはどんな印象がありますか?
秋元 私を応援してくださっているファンの方は、年齢が様々なんです。高校生も私のお父さん世代もいらっしゃって。皆さん、すごくやさしいので、おじさんも含めて好きです。
本多劇場に立てるだけの準備をしないと
――稽古で課題になりそうなことはありますか?
秋元 香苗以外の役で出るシーンがいくつかあって、それは完全に初めてなんです。ひとつの作品で、ひとつの役しかやったことがないので。楽しみな部分でもありますが、ちゃんと別の人に見えるように、どう切り替えるかは考えていきたいです。
――香苗役に関してはいかがですか?
秋元 几帳面で真面目で、ものを見る目がある。しっかりした強い人だと思うんです。その強さはちゃんと見せていこうと思います。
――稽古に1ヵ月くらい掛けるのは、秋元さんに合ってそうですか?
秋元 どうですかね。前回の『サザエさん』のときはあまり稽古の日数がなくて、1ヵ月できるのは初めてなんです。ドラマだと皆さんと合わせるのは当日でしたし、どんな感じになるのかわかりません。
――会場の本多劇場は行ったことはありますか?
秋元 1回あります。めちゃくちゃ有名な場所で、どこで舞台をやるのか聞かれて本多劇場と言うと、みんなに「すごいね」と言われます。そんな場所に立つからには、それだけの準備をしないといけないし、プレッシャーも感じています。
――舞台を観に行くことはよくあるんですか?
秋元 乃木坂46のメンバーがいろいろな舞台に立たせていただいたので、それを観に行くことが多かったです。本多劇場にも能條愛未が出た舞台で行きました。
自分をどうしていくのか客観的に見るように
――秋元さんは乃木坂46時代から個人仕事も多くやられてましたが、卒業して完全にいちタレントになった際は、不安もありませんでした?
秋元 基本的に、みんなでCDを出して、歌番組に出て、ツアーをする……という1年の流れがわかっている状態で11年半やってきたのが、ガラッと変わりましたから。グループでは後輩たちのことを考えていて、今は秋元真夏をどうしていくかを客観的に見ていて、結構ワクワクする感じです。自分で卒業を「今だ!」と決めたので、新しい環境が楽しみな気持ちはずっとあります。
――バラエティでも、乃木坂46の一員として出るのと個人で出るのは、感覚は違いますか?
秋元 違いますね。乃木坂46時代は、何か発言したらグループとしての言葉になるイメージでしたけど、今は秋元真夏の看板を自分で背負っていて。テレビに出ていることは同じでも、意識が変わりました。
ライブで鍛えた蓄積があってタフです
――今年の8月で30歳になりました。
秋元 病院に行って、問診表で30代のところにマルを付けるときに、すごく実感があります(笑)。20代にマルを付けたくなる気持ちが、まだ残っていて。でも、先に30代に突入した先輩方には「楽しくなるよ」とたくさん言われてきました。まだ20代との違いはわかりませんけど、これから知っていくのかなと楽しみにしています。
――体力が落ちてきたと感じたりはしませんか?
秋元 乃木坂46時代から、わりとタフなほうではあります。「疲れたでしょう?」と言われても、「まだ全然いけます」と心の中で思うことはよくあって。だから、もうちょい大丈夫かなと。
――運動は得意でなかったようでしたが、体力はあると。
秋元 ライブで鍛えた蓄積がまだ残っている感じです。
――日ごろから軽くでも運動していたりは?
秋元 ないです。本当に怠け者で、ずっとソファにいます(笑)。
支えてくれた人たちに恩返しをしたいです
――30歳をどう過ごすとか、展望はありますか?
秋元 私はずっと昔から仲の良い友だちが多くて、中学時代の友だちと今もしょっちゅう会っています。乃木坂46時代はあまり時間が取れなかったので、高校生で芸能界に入った頃に支えてくれた人たちにもちゃんと会って、昔の話もして、恩返しをする30代にしたいです。
――そういう友だちの支えは大きかったですか?
秋元 本当に大きかったです。私は結構ネガティブで「どうしよう? ダメだ!」とマイナス思考になりがちなんです。そんなときに「いや、こうだから大丈夫」と言ってくれる人が周りにたくさんいて、救われました。私が芸能界に入っても、まったく変わらず接してくれて、「真夏がちょっとでも変わったら、すぐ言うから」と同じ関係性がずーっと続いているのが嬉しいです。そういう人たちが私の支えです。
――秋元さんも国民的アイドルになっても、変わってないんですね。
秋元 そもそも自分がスターとはまったく思っていないので、そのままという感じです。服は買いすぎと注意されますけど(笑)、それ以外はあまり変わったと言われません。
30代はもっと外に出てアクティブに
――仕事的には、今回の舞台から女優業が増えていくかも?
秋元 稽古から本番を終えてみたら、気持ちが変わるきっかけになる予感がしています。そういう変化も楽しみながら、やりたいです。
――転機の作品になるかもしれませんね。
秋元 振り返ったとき、自分の人生の大きなポイントになるかもしれないので、頑張ります。
――他にも、磨いていきたいことはありますか?
秋元 さっきもお話しした通り、今は家に引きこもりがちになっているので、もうちょっと外に出たほうがいいかなと思っています(笑)。キャンプに行ったり、いろいろ経験してハプニングも起きたほうがきっと楽しいので、30代はもっとアクティブになります。
撮影/松下茜
Profile
秋元真夏(あきもと・まなつ)
1993年8月20日生まれ、埼玉県出身。
2011年に乃木坂46の1期生オーディションに合格。2019年に2代目キャプテンになり、2023年2月に卒業。『アイ・アム・冒険少年』(TBS系)、『ナゼそこ?』(テレビ東京)、『秋元真夏 卒アルラジオ』(文化放送)に出演中。女優としての出演作はドラマ『それってパクリじゃないですか?』、舞台『サザエさん』など。
『鍵泥棒のメソッド→リブート』
原作/映画『鍵泥棒のメソッド』(内田けんじ作) 上演台本・演出/マギー
2024年1月11日~21日/本多劇場 1月27日/森ノ宮ピロティホール
売れない俳優・桜井(望月歩)と伝説の殺し屋・コンドウ(少路勇介)の人生が、ひょんなことから入れ替わる。記憶を失ったコンドウは雑誌ライターの香苗(秋元真夏)と出会い、桜井は裏社会の男(長谷川朝晴)から依頼された殺しの標的、綾子(鈴木杏樹)と接触する。