全治6週間→「3週間」で奇跡の復帰! ホークス斐紹、1軍マスク再挑戦への熱き決意
バンデンハーク2勝、防御率0.36
4月18日(金)、ウエスタン・リーグでソフトバンクはオリックスと対戦。7対0で快勝し、前日に続いて連勝を決めた。
オリックス 000000000 0
ソフトバンク 00000142× 7
<バッテリー>
【BS】●山崎福(0勝1敗)、榊原、中山――若月、田中
【H】◯バンデンハーク(2勝0敗)、大場、巽――斐紹、拓也
<本塁打>なし
【戦評】
ソフトバンク打線が6回以降に集中攻撃。試合に均衡を破ったのは6回、先頭の2番・釜元が三塁打を放つと続く江川がタイムリーを放った。7回には釜元が押し出し四球を選び、なおも満塁で再び江川が会心の一打。走者一掃の3点二塁打で追加点を奪うと、8回には河野、釜元の連続タイムリーでダメ押しした。先発のバンデンハークは7回2安打9奪三振で無失点の好投。直球は最速152キロをマークした。先発4試合で失点はまだ1。防御率0.36の安定感だ。
オリックスはドラ1新人の山崎福が登板。テンポの良い投球で5回まで若鷹打線を抑えたが、以降の7回途中までに5点を失い黒星。打線は4安打のみ。T-岡田は2戦連続4番一塁でフル出場し1安打を放った。
開幕3戦目スタメン以来の実戦
【雑感】
斐紹(あやつぐ)がグラウンドに戻ってきた。4月18日の2軍戦に「8番捕手」でスタメン出場。3イニングのみだったが、先発のバンデンハークを無失点投球に導く好リードを見せ、唯一の打席ではレフト前ヒットを放った。
「膝の状態?余裕っす(笑)」
相変わらずの軽い口調だ。しかし、本来ならば、まだ彼はここにいるはずのない期間である。
<全治6週間>――。
今季はプロ5年目で初の開幕1軍入りを果たし、開幕3戦目の3月31日、ロッテ戦(ヤフオクドーム)でスタメン出場を果たした。しかし、この試合の5回に本塁クロスプレーで左膝を負傷した。靭帯損傷という重い怪我だった。
ドラフト1位で入団し将来の正捕手候補と言われている。3年目には1軍でプロ初安打も放った。しかし、昨季は1試合のみの出場に終わった。同級生の拓也は昨年から2年連続で開幕1軍入りを果たすなどアピールをしている。さらに今年は高卒新人で捕手が2人入団してきた。危機感が募らないわけがなかった。その中で掴んだ開幕シリーズでのスタメンである。そこでまさか全治6週間の怪我を負うとは…、あまりにショッキングな出来事だった。
男の意地が宿る、プロ5年目
しかし、斐紹の心は全く折れていなかった。西戸崎室内練習場でのリハビリを開始すると、4月の2週目には練習に合流しすぐに走塁系のメニューも再会した。「全く問題ないですよ」。明るく笑顔で話す。しかし、その目つきには男の意地が宿る力強さを感じた。
たしかに、今年の斐紹は顔つきが違うのだ。あの怪我をした日もそうだった。クロスプレーの後、治療のために1度ベンチ裏に下がった。靭帯損傷なのだから、歩くのもやっとだったはず。だが、斐紹はもう1度グラウンドに戻り、この回の最後まで守り切った。球団広報によれば「平然とプレーをしていたように見えただろうけど、チェンジになってベンチ裏に戻った瞬間に、ガクッと崩れ落ちて歩けなかったから」という。グラウンドでは決して弱みは見せなかった。
また、クロスプレーの際、走者だった今江敏晃からは謝罪の電話もあった。だが、斐紹は自身のTwitterで「ロッテの今江さんから電話いただきました。プロ野球の一点を争う試合で男と男の勝負で起こったプレーで誰も悪いなんておもってません! 皆さんもそー思うと思います。 そこで一点を守れたこと、 今江さんみたいな人間的に素晴らしい選手とまた一軍のあの舞台で戦えるようにリハビリがんばります」(原文ママ)と呟いている。
診断された全治期間の半分である3週間足らずでグラウンドに戻ってきた。無理をするべきではないという意見もあるだろう。だが、斐紹の心意気を買いたいと感じた。ホークス捕手陣は、キャンプで右手指を骨折した細川亨も2軍で実戦復帰を果たしており、ポジション争いは今後激しさを増していく。それでも今年の斐紹には期待感を抱かせる、確かな「熱さ」を感じてしまうのだ。