アップル『iPhone』は対中追加関税25%でいくら値上がりする?
アメリカのトランプ大統領が中国からの全輸入品に25%の追加関税を課すと『Twitter』でツイートし、米通商代表部がその手続きに入ることを現地時間10日に発表しました。
今回の措置について筆者の専門分野から気になるのは、「アップルのスマートフォン『iPhone』がいくらになるのか?」という点です。
関税なしだった『iPhone』
じつは、『iPhone』は昨年より中国からの輸入品にかけられていた10%の対中関税の対象ではありませんでした。
しかし、今回の措置は中国からの全輸入品が対象です。つまり『iPhone』にも25%の関税がかかるようになります。
『iPhone』が25%値上がるわけではない
とは言え、現在の『iPhone』の価格がそのまま25%上がるわけではありません。
関税は中国からアメリカへ輸送する際の『iPhone』の製造原価(FOB価格)に対してかかるからです。
一般的に『iPhone』の製造原価は市場価格の3分の1だと言われています。そこで今回は、分解によって製造原価が443ドルになると推定されている『iPhone XS Max(256GBモデル)』の数字を使って計算します。
443ドルの25%は110ドル75セント。日本円にすると12,176円です。
『iPhone XS Max(256GBモデル)』の価格は141,800円ですから、そのまま上乗せすると153,976円に値上げされる計算になります(実際はアップル独自レートにより端数が調整されると思われます)。
『iPhone XS』に160ドル値上げの予測も
上の数字は単純に計算しただけのものですが、モルガン・スタンレー証券のアナリストは、追加関税後は『iPhone XS(64GBモデル)』の価格が現在の999ドルから160ドル値上げされ、1,159ドルになる可能性があるとの分析を発表しています。
こちらは日本円にすると17,591円の値上げになるため、『iPhone XS(64GBモデル)』が130,000円以上になる計算です。
ストレージ最小モデルで130,000円から……、あんまり想像したくない価格です。
『iPhone』にそのまま上乗せされるとは限らない
ただ、注意して欲しいのはこれはあくまでも「全額上乗せ」された場合の数字であって、アップルがこの価格に値上げすると決めたわけではない点です。
これまで報じられてきたように、『iPhone』は価格の上昇にともない販売台数が減りつつあります。仮に関税分を上乗せした場合、減少を続けている販売台数がさらに減ることは想像に難くありません。
かと言って、値上げしないままであればアップルの利益は減ってしまいます。
関税分を上乗せして販売台数を減らすのか、利益を削って販売台数を維持するのか、アップルは難しい決断を迫られています。
対抗策は中国からの脱出
この追加関税を乗り切るための対抗策は、『iPhone』の製造拠点を中国からほかの国に移すことです。
実際、アップルのサプライヤーとして名高い台湾企業のFoxconn、Pegatron、Wistronは工場をベトナムやインドへと移し始めています。
ただ、すべての工場の移転には数年はかかるとみられており、そのための移設コストも大きくかかります。
完全分離プラン+関税で日本の『iPhone』は高値に?
とまあ規模の大きな話をしましたが、日本のユーザーが気になるのは「それで、いくらになるの?」ですよね。
今年は完全分離プランの義務化が始まりキャリアによる端末値引きがほぼないこと、そしておそらくはある関税分による全体の値上げを考えると、実質負担額ですら100,000円以上になる可能性が高そうです。
今年はみんな『iPhone』、買い換えないかもしれないですね……。
5月12日12時06分修正
関税がかかる数字について、補足を「部品コスト」から経費も含めた「FOB価格(本船渡し価格)」に修正しました。訂正してお詫び申し上げます。