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今は亡き大林宣彦監督も絶賛!45年前の伝説の8ミリ自主映画をスクリーンで

水上賢治映画ライター
『ORANGING'79』より

 1977年から続く、<第46回ぴあフィルムフェスティバル2024>(※以下PFF)が本日9月7日(土)に開催を迎えた。

 "映画の新しい才能の発見と育成"をテーマに掲げるPFFがメインプログラムに置くのは、自主映画のコンペティション<PFFアワード>。すべての未来の映像作家に開かれた同部門は、これまで数多くの新たな才能を見出し、のちにプロとして活躍する監督はいまや180名を超えている。

 今年も19作品が入選。果たして、どんな才能と出会えるのかを楽しみにしたい。

 それと同時にPFFでは、毎年、国内外の多彩な映画を招待上映している。世界を代表する監督の特集をはじめ、映画祭ならでは、いや映画祭でなければできなかったと思われる企画を実現し、貴重な映画と出会う場を作ってくれている。

 今年の招待作品は6企画。その一つが「自由だぜ!80~90年代自主映画」だ。

 同特集企画はタイトルにもあるように、8ミリフィルムで撮る自主映画熱がピークを迎えていた1980~90年代の自主映画をクローズアップ。なかなか見る機会のない当時、全国の高校や大学の映画研究会などで作られた傑作の数々を上映する。PFFでなければおそらく実現することのない、見ることのできない映画が集まった特集といっていい。

 その特集内で上映される「ORANGING’79」は、「釜石ラーメン物語」「青すぎる、青」など近年も精力的に新作を発表している今関あきよし監督の1979年のPFF入選作(※今は亡き大林宣彦監督が当時絶賛!)。主演は、現在は映画評論家、イラストレーター、漫画家として活躍する三留まゆみ氏が務めている(※ちなみに「ORANGING’79」には、今関監督の最新作「しまねこ」などを手掛ける脚本家の小林弘利氏も照明で参加している)。

 以来の盟友という二人は、奇しくも再びタッグを組むことになったドキュメンタリー映画「顔(イェン)さんの仕事」(※本作については別立てでインタビューをお届けします)が現在公開中。

 そこで二人に当時の自主映画界隈の話、PFFのこと、8ミリでの映画製作など、回顧していただいた。全六回/第一回

今関あきよし監督(左)と三留まゆみ氏  筆者撮影
今関あきよし監督(左)と三留まゆみ氏  筆者撮影

出会ったのは自主映画の上映会で。

伝説の8ミリ映画「ORANGING’79」のはじまり

 まず今関監督と三留氏の出会いと、出演の経緯についてこう二人は明かす。

三留「出会いとしては、『ORANGING’79』を撮る少し前のこと。まだわたしが高校生のときでした」

今関「高校生のときに仲間と8ミリフィルムを撮り始めて、当時、自主映画の上映会を月に1、2回定期的に開いていたんです。僕はまだ自分で監督した作品は撮れていなかったんですけど、スタッフやカメラで違う人の映画を手伝っていた。その流れで、上映会も手伝っていて。そこにまゆみちゃんが来ていて顔見知りになった」

三留「当時、あるあるの話ですけど、ボーイフレンドと一緒に行っていたんです(笑)。そのボーイフレンドも8ミリで自主映画を撮っていたので。

 そこで今関さんもだけど、小林利弘さんとも出会っているんじゃないかな」

今関「なぜ、知り合ったかというと、当時、自主映画の上映会って女の子はほとんどこなかったんですよ。男ばっかりだった。しかも、ちょっと映画をかじっているひと癖あるような人しかこない(笑)。

 僕らはそれを変えたかったんです。みんなで楽しめるような上映会にしたかった。だから、駄菓子を配ったり、お客さん全員参加でゲームをしたり、クリスマスの日にはクリスマスツリー飾ったり、誕生日の人いればプレゼント用意したりといったことをしていた。

 映画を小難しく語る会じゃなくて、楽しめる場、イベント化していたんです。

 その上映会にまゆみちゃんは来てくれていた。

 で、話を戻すと、上映会に女の子がめったにこない。だから、女の子が来るとだいたいみんな声をかけるんですよ。

 それはナンパじゃないんです。自分の作品に出てくれる女優がほしくて、まずは声をかけるんです」

三留「かわいいとか、美人とか関係ないんです。とにかく生き物として女子が来たらつかまえろ、逃すなみたいな感じ(笑)」

今関「いやいや、まあそうね。

 当時、高校生ですから、ふつうのところでナンパできるほどの勇気も度胸もないんです。

 渋谷や新宿にいって、道すがらスカウトするみたいなことはできるわけがないんですよ。

 そういう中で、じゃあどうやって自分の映画に出てくれる女優を見つけるかというと、まずは上映会に来てくれた女の子、あと、映画館のもぎりの女の子がいれば絶対に声をかけていた。映画が絶対に好きなはずで興味もあるはずだから、(自分の映画に出てくれる)可能性があるだろうということで」

三留「そうね。女の子が入ればやっぱりストーリーも豊かになって、より広がりのあるものになるし」

今関「そうそう。それで声をかけたんですよ。『出てくれませんか』と」

三留「それでOKということで『ORANGING’79』を撮ることになりました。まあ、脚本もなにもないんですけどね(笑)」

今関「そう。シナリオもなければ、ストーリもないです(笑)」

(※第二回に続く)

『ORANGING'79』より
『ORANGING'79』より

「ORANGING'79」は、招待部門「自由だぜ!80~90年代自主映画」特集にて

「気分を変えて?」(監督:犬童一心)「教訓Ⅰ」(監督:笹平剛(現・利重剛))「The story of "CARROT FIELD"」(監督:東山允裕)とともに9月7日(土)12:00~国立映画アーカイブ小ホールにて上映

<第46回ぴあフィルムフェスティバル2024>ポスタービジュアル 提供:ぴあフィルムフェスティバル
<第46回ぴあフィルムフェスティバル2024>ポスタービジュアル 提供:ぴあフィルムフェスティバル

「第46回ぴあフィルムフェスティバル2024」

期間:2024年9月7日(土)〜21日(土)[月曜休館・13日間]

会場:国立映画アーカイブ

詳細は公式サイトへ https://pff.jp/46th/

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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