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#NETFLIX』のサーバ代金の1/6で整備された『#ハローワーク』の80億円サーバ

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
ハローワークのサーバー利用率は0.08% 出典:朝日新聞DIGITAL

KNNポール神田です。

□マイナンバー制度とハローワークの事業をつなぐ「中間サーバー」を厚生労働省職業安定局が約80億円かけて整備しながら、その利用率が最大想定の0・1%にとどまっていることがわかった。このサーバーには年間約10億円の維持管理費がかかり、2017、(20)18年度に続いて(20)19年度予算にも計上されている。

□同局は設計時に、サーバーの利用を最大で月約308万件(雇用保険に関する照会120万件、自治体への情報提供108万件、日本年金機構への情報提供33万件など)と想定。それに見合う容量のサーバーと関連整備に17年度までの3年間で計約80億円かけ、(20)17年7月に稼働させた。

出典:80億円で整備のサーバー、利用率厚労省想定の0.1%

政府の歳出予算はいろんなムダな事業の積み上げでいくらでも計上される。たまたま発覚したことだが、ITでもっと『見える化』すればこの国のムダな歳出は『適正化』できるはずだ。まずは政府の歳入歳出をもっと『見える化』することによって、国民ひとりひとりが『 ITオンブズマン』となれる。

■たかが80億円、されど80億円

消えた自衛隊のステルス戦闘機 F-35Aは、一機あたり130億円する。それを42機取得なので5,460億円だ。そこから考えると厚労省のサーバー80億円って大した金額ではなさそうに見える。

しかし、歳出のコストは国民にとっての利益との相関関係に現れる。防衛省管轄の予算は4.9兆円なので11%に当たるコストが見合うかどうかだ。防衛省は、国家のセキュリティ予算でもある。厚労省予算は31兆円なので、80億円は0.00026%でしかない。

しかし、80億円を日本国民全員で使うとすると、国民ひとりあたりは67円。しかし、利用する母数となる完全失業者(160万人)一人あたりだと5,000円にもなる。

これを、自前で政府に入札できる業者だけで選定しているとするといくらでも、コストは跳ね上がってしまう。

■世界に動画配信するNetflixのサーバ費用は…450億円

Netflixはインターネット通信量の15% 出典:ダイヤモンド・オンライン
Netflixはインターネット通信量の15% 出典:ダイヤモンド・オンライン

https://diamond.jp/articles/-/199711

□Netflixがアマゾンに支払っているAWS年間利用料は、売上の3%程度と推測されている。だとすれば1億ドル〜1.5億ドルの間。

出典:NetflixはなぜAWSのヘビーユーザーなのか? - 時価総額を5倍に増やしたNetflixの驚くべきビッグデータ経営

インターネットのトラフィックの15%を占めるNetflixのサーバ費用は、Netflixの売上(155億ドル:1.5兆円)の3%の現在の売り上げで当てはめてみると…450億円に相当する。

厚生省の中間サーバー80億円はNetflixのサーバ費用の1/6をかけている計算となる。

■Netflixがサーバをライバルのamazonに依存する理由

年間サブスクリプション市場(2018年) 出典:KNN
年間サブスクリプション市場(2018年) 出典:KNN

Netflixは、現在、Amazon Prime とサブスクリプション戦争で、過激なデッドヒートをくりかえしている。しかし、Netflixの心臓部であるクラウドサーバは、AmazonのAWSを使っているといるのだ。

□NetflixはパブリッククラウドサービスのAmazon Web Services(AWS)を、2009年に大規模導入した先進ユーザーとしても知られる。2017年末時点で、利用する仮想マシンは15万台超という。

□AWSを大規模に利用しているだけではない。システムを適切な単位に分割して独立性を高めることで頻繁な機能変更を可能にする「マイクロサービスアーキテクチャー」の全面採用や、自動復旧の仕組みを整えたうえで常態的にわざと本番環境の障害を起こして耐障害性を向上させる「カオスエンジニアリング」の実践など、システム開発・運用の最先端をひた走る。

出典:世界が注目するAWS先進ユーザー、Netflixのすごさ

AmazonとNetflixは、一方ではライバルでありながら、AmazonのAWS部門から見ると世界最大の顧客であるという IT事業モデルの究極の生存競争の生態系にある。米国のIT企業は、ライバル同士でも、別事業では密接な取引を共有するという運命共同体的な性格も持ち合わせている。それは、人材の流動化を考えると GAFAの人材は常に流動している。ロックアウト期間がすぎればライバル企業に、NDA案件は漏洩せずとも、人的なノウハウはお互いの事業で共有されている。シリコンバレーの歴史はそうやって、育てた企業に蹴落とされ、またその人材で助けられるという歴史を繰り返してきている。

■すべて自前でクラウド化しない日本のIT政策

『消えた年金』にはじまり、活用されない『マイナンバー』、政府のITシステムは、今日もまた巨大ITベンダーに発注されていく。同じようなしくみでも、『セキュリティ』や『堅牢化』などのいろんな理由をもとに、そこにある情報だけで判断され、システムが構築される。

政府の仕組みを米国のGAFA企業に依存するようなことは、絶対にありえないという意見もあるだろうが、Amazon AWSの必要な時だけ、スケーラブルに拡張できる仕組みと世界最大の効率化が図れるのならば、試験的に運用してみるという方法はありなのではないだろうか?まずは国民全員に影響のない『暗号化』した上での厚生省の『中間サーバ』の運用などは年間の運用費用が10億円あれば、何百年も運用できる。他のリソースにもっと配分できる。

何よりも、ロッキード社の F-35Aに国防を依存しているくらいならば、AWSのクラウドを利用するくらいはまったく問題ないと筆者は考える。むしろ、現在の政府のIT政策の予算のかけっぱなしのほうが問題であり、予算を消費するだけではなく、適正な予算なのかどうかと、そこで何がおこなわれているのかを国民が常に『可視化』できることのほうが重要だと考える。

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ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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