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メッシの米国初Vを阻止するのはアルゼンチン人監督か

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
準々決勝ではPKをチームメイトに譲り、ダメ押しとなる4点目を決めたメッシ(写真:REX/アフロ)

 現地時間11日、リオネル・メッシはインテル・マイアミの一員となってから、5試合連続となる8ゴール目を挙げた。相変わらずの無双が続く。

 マイアミがリーグスカップ準決勝進出を果たしたこの日、別ブロックでは昨シーズンのMLSチャンピオン、LAFCとメキシコの強豪、CFモンテレイのゲームが行われていた。

 マイアミが4-0でリードし、勝利を決定付けた頃、ロスアンジェルスの北側にあるローズボウル・スタディアムにもキックオフの笛が響いた。

撮影:筆者
撮影:筆者

 試合開始から僅か18秒でPKを獲得したLAFCは、8月2日のゲームでハットトリックを決めたデニス・ブオンガが冷静に右隅に流し込んで先制。前半終了間際にもポーランド人MFのマテシュ・ボーゲッシュが追加点を挙げ、2-0で前半を折り返す。

写真:LAFC提供 LAFC の得点源となっているデニス・ブオンガ
写真:LAFC提供 LAFC の得点源となっているデニス・ブオンガ

 ハーフタイム時、プレスルームでは、「準決勝はローズボウル・スタディアムではなく、LAFCホームのBMOスタディアムが会場になるだろう」とか「決勝進出した場合、翌日から再開されるリーグ戦の日程が変わることになりそうだねぇ」などという会話が、記者たちの間でなされていた。

 しかし、この時CFモンテレイのロッカールームでは監督から選手たちに向かって、「自分たちを信じて己の戦いを貫くぞ。何も変える必要は無い、自信を持て」なる檄が飛び、各々が闘志を漲らせた。

撮影:筆者
撮影:筆者

 7月4日のアメリカ独立記念日に、LAダービーとして催されたLAFC vs.LAギャラクシー戦は8万2110人の観衆で埋まり、1試合におけるMLSの観客動員数記録を塗り替えた。

 が、この日スタディアムに駆け付けたファンは、1万5649人。それもその筈、ベスト8を懸けた戦いは3日前に行われ、いかに熱狂的なファンでも予定がまるで見えなかった。キックオフが19時半とはいえ、ウィークデイにそうそう動けるものでもない。

 このリーグスカップは、メキシコ1部リーグ18クラブと、米国トップリーグであるMLS29クラブの計47チームによって争われ、 上位3チームが2024年のConcacafチャンピオンズリーグに駒を進めることが出来る。

 だが、あくまでもアメリカ主導で大会が運営され、メキシコのチームは敵地に乗り込んで戦わねばならない。この日も、CFモンテレイはAWAYであるロスアンジェルスでの戦いを強いられた。

 前日の記者会見で、地元開催のアドバンテージ、本大会にはメキシコのチームのホームでのゲームが無いことを指摘されたLAFCのキャプテン、イリエ・サンチェスは、「そうですね。改善点を考えねばなりませんよね」と答えていた。

写真:ロイター/アフロ
写真:ロイター/アフロ

 CFモンテレイに特に目立った選手はいない。スターティングからは外れたが、ベンチには背番号が3ケタの、アカデミーから急遽引き上げた若手を5名入れていた。

 そして、疲労から足が動かなくなったLAFCを尻目に走り勝つ。68分、79分、88分と3点を奪って逆転に成功した。

 数字を見比べると、LAFCのシュート14に対して、CFモンテレイは20。枠内に飛んだシュートはLAFCが7、CFモンテレイが8。コーナーキックはLAの3、モンテレイの5。

 LAFCはカウンターのチャンスで、ブオンガがドリブルを仕掛けても、反応する他の選手がゼロ、という局面があった。闘志もメキシカンが上回っていた。

撮影:筆者 オルティス監督は、その眼差しに意志の強さを感じさせた
撮影:筆者 オルティス監督は、その眼差しに意志の強さを感じさせた

 試合後、記者会見場に現れたCFモンテレイのフェルナンド・オルティス監督(45)は、その場にいたメディア全員と握手を交わし、「まだ、何も成し遂げていないが、幾つもの勝利を挙げていることは確かだ。それが自分の個人的な見解だ」と述べた。

 彼の毅然とした立ち居振る舞いは、勝者に相応しいものだった。

コーチとしてキャリアを重ねてきたオルティス
コーチとしてキャリアを重ねてきたオルティス写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 「メキシコ流の強さを見せる」と語って試合に臨んだアルゼンチン人であるオルティス監督は、名門、ボカ・ジュニアーズで選手としてデビュー。しかし、定着出来ず、レンタル移籍を繰り返す。16年のプロ生活で462試合に出場したセンターバックである。

 引退から2年が過ぎた2016年より、指導者として生きてきた。

写真:ロイター/アフロ

 CFモンテレイは、今夜もまた敵地・ナッシュビルで準決勝を戦う。リーグスカップに残った4チームのうち、3つがMLS。モンテレイは、唯一のメキシカンクラブである。

 メッシを止められるとしたら、この同胞監督しかいないように思える。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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