岐路に立たされた週刊誌が2020年への打開策として示した3つの方向性とは
2019年は週刊誌が岐路に立たされた年だった。紙の部数の落ち込みは止まらず、先頃のABC協会の公査部数では、ついに『週刊新潮』の上半期の平均実売部数が20万部を割ってしまった。2009年上半期の部数は41万部だったから、10年で半分以下に激減したことになる。
ちなみにスクープ連発で勢いのある『週刊文春』がどうかと言えば、10年前が49万部だったのが2019年上半期は29万部。『週刊新潮』ほどではないが、相当落ちている。意外に思う人も多いかもしれない。
ついでに紹介しておくと、『週刊現代』が10年前は23万部だったのが2019年上半期は21万部。落ち幅が小さい分、『週刊文春』に次いで2位につけている。
業界内ではこの数字、深刻に受け止められたのだが、先頃話を聞いた新谷学・週刊文春編集局長はこう語った。
「紙の部数で媒体を評価する時代は終わったのではないですか」
では雑誌の勢いを何で評価するのか。
それこそが、2019年から2020年にかけて各週刊誌が模索している方向性に関わることがらだ。
1月7日発売の月刊『創』2月号は出版社の特集だが、週刊誌の現状を示す内容をそこから紹介しよう。
『週刊文春』が示したひとつの方向性
打開のための一つの方向性を示したのは『週刊文春』だ。文春オンラインというウェブサイトの閲覧数が2019年11月に3億PVを突破した。文藝春秋の4月の組織再編でこの文春オンラインは週刊文春編集局に移行したのだが、その結果、記事本数も急増したし閲覧数も急上昇。月間3億PVという驚異の記録を達成した。
3億のうち約1億PVは沢尻エリカ逮捕関連でのアクセスだったという。逮捕前夜に隠し撮りしたスクープ写真も、翌週の『週刊文春』を待たずに逮捕当日にウェブにアップした。
そのほか、以前に沢尻被告について薬物依存疑惑をほぼ断定的に報じた記事も公開。これまで同誌がどこまで肉薄していたかを示して、これも評価された。沢尻逮捕報道は、同誌が紙とデジタルの方向性をどう考えているかを明らかに示したものだった。
同誌は2019年10月に二人の大臣を辞任に追い込むスクープも放ったが、それは部数にほとんど跳ね返っていない。でも新谷学編集局長は、スクープの積み重ねがクレディビリティ(信頼性)につながり、それがウェブのPV急伸長に反映しているのだと強調した。つまり単独のスクープ記事では部数増につながらないが、スクープをとることは重要なことで、今後もその追求をやめない、というわけだ。
紙の部数は落ちているがウェブが大きく伸びているのは例えば『女性自身』なども同じで、同誌のウェブサイトも5月に1億PVを突破。光文社内でも収益部門となりつつある。「芸能と皇室」に強いという女性週刊誌の特性が、ネットで強みを発揮しているのだ。これは『女性セブン』など他の女性週刊誌も同じだ。
月3回発行のペースになった『週刊現代』
一方、こうした方向と対照的なのが『週刊現代』だ。同誌は事件やニュースよりも、高齢の読者にあわせた相続や健康などの実用情報に誌面を特化させた。速報性で争うよりも発売期間を伸ばしたほうがよいと合併号を増やし、平均月3回の発行ペースに変えた。
業界では賛否両論で、ジャーナリズムを放棄したという批判もなされるが、その割り切りが功を奏して、実売率も利益も伸ばした。相続特集の別冊(ムック)も約30万部のヒットとなった。講談社としてはそれを「利益改善」と評価しており、2020年もその方向へ進むらしい。
『アンアン』が4回も完売したアイドル特集
以上の二つが象徴的だが、そのほか2019年は『週刊朝日』や『アンアン』のアイドル特集も目についた。『アンアン』はジャニーズ系のアイドル特集で完売・増刷を四回も行った。いずれも通常号より約10歳若い二十代のファンが買ったという。
彼女たちは、情報を専らスマホから得る世代で、雑誌をほとんど買わなくなったと言われるのだが、雑誌のアイドル特集は別で、手元に置いておきたいので何冊も買うらしい。これも雑誌について一つのヒントを提供している気がする。ちなみにアイドル特集号の場合、表紙でその写真を大きく掲げるのが部数につながるという。
こうしたアイドルを表紙にして特集を組むというのは、2019年、女性月刊誌でもひとつのブームになった。表紙だけ同じアイドルの別の写真にしたものを増刊号にして中身の同じ雑誌を2冊同時売りにすると、ファンは2冊とも買っていくらしい。表紙を変えた2冊売りというのは、2019年のひとつのトレンドとなった。
2020年、週刊誌はどうなるのだろうか。