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竹島(独島)では日韓の対応、どちらが毅然!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
議員時代の2005年に竹島(独島)に上陸した朴槿恵大統領

毎年8月15日が近づくと、日韓両国とも騒がしくなる。日本では政治家らによる靖国参拝があり、韓国では国会議員らによる竹島(韓国名:独島)上陸があるせいかもしれない。

「日本の領土を守るため行動する議員連盟」vs「独島を守る国会議員連盟」

靖国参拝は「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」(超党派の議員連盟)が、竹島上陸は国会の国防委員会が主導して行われている。どちらも超党派である。日本も、韓国もこと領土問題では与野党は「一枚岩」だ。また、領土問題では日本には「日本の領土を守るため行動する議員連盟」が、韓国には「独島を守る国会議員連盟」が存在する。一方の言動に反射し、他方が抗議するというパターンが延々と続いている。

先月(7月25日)次期大統領が有力視されている、韓国野党第一党の「共に民主党」の文在寅前代表が日韓の係争地である竹島を電撃訪問したのに続き、今度は韓国の与野党議員9人が「国会独島訪問団」を構成し、上陸するようだ。訪問団には韓国の最西端に位置する格列島飛島を出発し、最東部に位置する竹島までの横断に成功した「独島を愛する運動本部」のメンバーらも加わるようだ。

(参考資料:韓国の有力大統領候補が竹島に上陸した!

団長はソウル市長選に出馬した経歴を持ち、韓国の女性議員としては初めて国会外交統一委員会委員長を務めた、これまた与党の次期大統領候補として名が挙がっている与党セヌリ党の羅卿ウォン議員である。「8.15」(光復節)を迎え、領土を守る意志と愛国心を高めるのが訪問の目的である」と公言している。

朴槿恵大統領も2005年に上陸

韓国国会議員による竹島上陸は何も今回が初めてのことではない。2005年、2008年、2012年、2013年にも国防委員会所属の議員らが日本の反対を押し切って強行している。2005年に上陸した13人の国防委員の中には現大統領の朴槿恵議員も含まれていた。

また、2012年の国防委員会所属議員15人の集団上陸では「独島は我が領土、我々が守る」と記した横断幕を掲げ、気勢を上げていたが、参加者の中にはこれまた次期大統領候補の一人である、当時国防委員長だった与党・セヌリ党の劉承ミン議員が含まれていた。

3年前の8月には野党・民主党の代表ら国会議員12人が軍用ヘリコプターで上陸したかと思えば競うように与党所属の国会議員30人が大挙、竹島に押し寄せていた。

日本もその気があれば、対抗手段として、外交や防衛・安全保障委員会に属する国会議員らがヘリコプターで竹島上空を旋回し、上空から視察する手もある。あるいは、尖閣諸島でしばしば見られるように船をチャーターして上陸する手もある。しかし、上空からの視察は竹島に配備されている対空砲の脅威にさらされ、船による上陸は韓国警備隊による拿捕が待ち受けており、現実的には不可能に近い。

抗議以外に手だてがない?

結局のところ、抗議する以外に手だてがないようだが、竹島に上陸した韓国の国会議員への制裁措置として、日本への入国を禁止するという手もあるが、これまた踏み切れないようだ。

現に、2011年11月に「美しい我らの領土独島音楽会」という名のコンサートが竹島で開かれ、韓国の政治家やマスコミ関係者ら500人が参加したが、このコンサートを主催した超党派の「独島を守る国会議員の集い」の中心人物である朴宣映議員が1か月後の12月に来日していたのに日本政府は注意さえしなかった。

日本の立場からすれば、朴議員らは日本の主権を侵害し、不法入国したことになる。不法入国した以上、尖閣諸島で日本の領海を侵犯した中国漁船船長らと同様に法治国家として入管法に基づき何らかの法的処分をしなければならない。まして、この年の8月に韓国政府は竹島ではなく、竹島への中継地である鬱陵島視察を計画した新藤義孝、稲田朋美両衆院議員と佐藤正久参院議員ら自民党議員らの入国さえ認めず、強制退去処分を科していた。それなのに朴宣映議員は来日を許されたばかりか、事情聴取もお咎めもなかった。

日本の対応に比べて、韓国はどうか?

驚いたことに、自民党議員入国拒否事件直後に朴宣映議員が主導する「独島を守る国会議員連盟」は「独島が韓国の領土であることに異を唱え、奪還運動を展開する日本の政治家らの入国を禁止する」ことを政府に強く求めていたのである。また、2013年には韓国国会特別委員会は靖国に参拝する日本の閣僚や国会議員の名前をすべて公開するよう韓国政府に迫っていた。

領土問題や歴史認識の問題の韓国政府の対応は強硬であるが、見方を変えれば、韓国のほうが毅然たる、断固たる外交を展開していることの裏返しと言えなくもない。

日本政府もその後、韓国の歌手やタレントの入国を竹島絡みで拒否したケースはあったものの日本の抗議を無視し、堂々と竹島に上陸した政治家や国会議員に対してはこれまで1件もない。

今回も、文在寅氏の竹島上陸に「日本の領土を守るために行動する議員連盟」が問題視し、政府(官房長官と外務大臣)に申し入れを行っていたが、それでも外交ルートを通じて韓国政府に強く抗議するよう求めただけである。

「目には目を、歯には歯を」のやり方は外交上得策ではないとの判断によるものか、 それとも過剰反応は相手のさらなる対抗措置を招きかねないとの憂慮によるものなのか定かではないが、日本政府はいつまで自制していられるだろうか。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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