宮城県の連日の熱帯夜 原因は黒潮にアリ?
今年の夏はとにかく暑いです。宮城県においては、梅雨の時期は「梅雨寒」と言って長袖が必要なこともあるくらいなのですが、今年は長袖の出番は全くありませんでした。
しかも今シーズンは夜中も気温が高く、平年であれば仙台では年間で1~2日しかない熱帯夜が連日観測されています。また仙台だけではなく石巻など沿岸の地域でも熱帯夜が頻発していて、各地で“過去最も高い最低気温”の記録が塗り替えられています。
今年は太平洋高気圧の力が強く、それによって日本列島の上空には平年以上に暖かい空気が流れ込んでいますが、それに加えて考えられる原因は黒潮の異常なほどの蛇行です。
黒潮が三陸沖まで異常蛇行中
図は海流を表していて、流れが強いところほど赤くなっています。本州の南の強い流れが黒潮です。例年であれば、本州の南を流れた後は関東沖からほぼ真っすぐ東に流れていきます。これを黒潮続流と言いますが、この黒潮続流が今年は春先から大きく北に蛇行して三陸沖にまで流れ込んできています。
黒潮は南からやってくる暖流なので、これによって海水温が極めて高くなっています。気象庁が先月行った観測船による観測では、三陸沖の海洋内部は平年より10度も高くなっていたそうです。水温が平年より10度高いなど通常はありえません。
宮城県が夏でも比較的涼しいのは海風が吹きこむためです。ただその海の温度が高いため今年は気温が高く、また夜も沿岸部を中心に気温が下がりにくくなっている可能性があります。
また梅雨~夏の宮城は霧が発生することがよくあり、仙台は県庁所在地では全国トップクラスの霧日数なのですが、今年は霧もほとんど観測されていません。宮城県周辺で夏に発生する霧は、空気中の水蒸気が冷たい海面で冷やされることで発生しますが、今年は海水が暖かいため水蒸気が冷やされず霧も発生していないと思われます。
そして水温が高くなって最も影響を受けるのが漁業です。宮城県水産技術センターによると、今年はビンナガマグロが宮城県沖まで北上してくるようになっていたり、またこれまではあまり見られなかったタチウオが宮城県沖でとれるようになっていたりするそうです。
一方「とれない」方では、春の風物詩とも言える魚であったコウナゴが今年は漁獲量がゼロ。また今後、秋に冷たい海流である親潮にのって南下してくるサンマ漁への影響も不安です。
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高い海水温が解消されるのはいつ…?
単に日射で海水が温められているだけならば、台風や低気圧が来れば冷たい海水とかき混ぜられることで解消されますが、今は海深くまで温かい海水が流れ込んできているためそれによる解消は期待できません。さらにこの異常な蛇行がいつ終わるのかもまだ分かっていないため当面はこうした状況が続く可能性があります。
漁業への影響が心配されますし、また気象の面から言えばこの先も宮城県らしからぬ気温の高さが続く予想になっています。寝苦しい夜がまだまだ続きそうですので体調管理などにご注意ください。
(参考資料)
気象庁 報道発表「三陸沖の海洋内部の水温が記録的に高くなっています」(2023年8月9日発表)