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浅井健一 26年間、愚直に理想のロックを追求し続ける、ロックンローラーの本懐

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
「自分は自分が正しいと思った事をやっていけばいい」
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ベンジーこと、浅井健一がロックで人々を熱狂させ続けて26年。1991年、BLANKEY JET CITYでメジャーデビューし、2000年に解散後、SHERBETS、JUDEなど様々なバンドで理想のロックを求め、活動してきた。2006年からはソロ名義でも音を鳴らし続け、新たなソロプロジェクトとして、2016年5月に浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSを結成。そして1stアルバム『METEO』を2017年1月にリリース、2018年2月14日2ndアルバム『Sugar』を発表。愚直にロック道を追求し続ける、ロックスター浅井健一の進化した姿がそこにはあった。そんな浅井にこのバンド、アルバムについてはもちろん、今世の中に感じている事など、様々な事を聞かせてもらった。

「一緒にやるメンバーとの相性が全て。会社も夫婦もそうでしょ」

――26年間、止まることなく活動を続けていて、作品も多作ですが、言葉の泉、メロディの泉が枯れてしまうんじゃないかという恐怖感に苛まれた事はありますか?

浅井 それは毎年。毎回レコーディング入る時に、それは頭のどこかにある。恐怖というのは大げさだけど、怖いよね。でもレコーディングに入ると、なんか毎回ちゃんとできあがるんだよね。

――それはやはり音楽を“引き寄せる”感覚なんでしょうか?

浅井 ブランキーが解散する頃は、結構頑張ってた感があるんだけど、SHERBETSになってからは、あのメンバーが集まると不思議と次から次へと曲ができて、それが2000年の初め頃で。で、その後仲違いがあって休眠状態なって、JUDEのメンバーとやり始めたら、またなぜかどんどん曲ができ始めて。そんなこんなで2018年という感じ(笑)。

――自分が置かれた環境の空気感、空気の流れが変わると、また新しい刺激があるという感じでしょうか?

浅井 そう、結局一緒にやるメンバーの相性だわ。でもいくら長い時間を共有しても、何も生まれない間柄というのもあるし、その人と一緒にいると何かが生まれてくるという相性って音楽だけじゃなくて、なんでもそうだと思う。

――会社もそうですよね。

浅井 会社なんてまさにそう。夫婦もそうだし。長続きする夫婦とすぐ終わる夫婦があるように(笑)。

――浅井さんの中には、曲を書き続けなければいけないという“使命感”のようなものが存在しているのでしょうか?

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浅井 使命感があるかどうかはわからないけど、でもメロディやフレーズがちょくちょく浮かんでくるんですよ。それをICレコーダーに録音しておいて、そのレコーダーの中に、いつかやろうと思っているメロディやリフ、フレーズがものすごくいっぱい入ってて。アルバムを作る時にそれを聴き返したりして、このフレーズいいから使ってみようとか、そういう感じでアイディアはすごくあって、でもそれに歌詞を付けて、構成を考えて作りあげるのが、ものすごい大変。

――浅井さんの詞、言葉は詩集にもなり、その独特の世界に影響を受けたアーティストも多く、ファンも多いです。

浅井 メロディが先にできて、その後に歌詞を書いていくんだけど、最初は宇宙語で歌ってて。宇宙語の方がカッコよかったりする時もある。でも宇宙語も意識し出すと出てこなくなるから(笑)、何も考えずにメロディを探ってる時の宇宙語が、一番宇宙語らしいっていうか。

――宇宙語のままではリリースできないんですか?

浅井 そのまま出した事もある(笑)。

――その時の聴いた人の反応はどうでしたか?

浅井 どうだったかなぁ…でもその時も、さぁ歌うぞって構えてからの宇宙語だから、宇宙語度が甘かったね(笑)。意識すると宇宙語さえ出なくなるから、無意識というのがいかに大事かがわかる。

「今のメンバーとは、一緒に音を出してみて、この二人とやらない手はないわと思った」

――2016年にベースの中尾憲太郎(元NUMBER GIRL)さんと、海外の音楽シーンで活躍していたドラムの小林瞳さんと、浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSを結成しました。先ほどのお話にもつながりますが、やはり相性ですか?

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浅井 一緒に音を出して、この疾走感はすごいなというのを感じたから、この二人とやらない手はないわと思って、動き出したんだよね。

――SHERBETSも女性メンバーがいて、今回も女性ドラマーの小林瞳さんがいて、やはり男とは違う感性を求めているということなんでしょうか?

浅井 いや、それは関係なくて、男でも女でもいいんだわ。今回も女性ドラムを探していたわけではなくて、凄いドラマーがおるよって話を聞いて彼女に会って叩いてもらったら、彼女の8ビートは初めての世界だった。母親がコロンビアの方で、ラテンの血が入っているから、そういう事なのかなぁって思うほどだった。

――3人なのに、なんでこんなに豊潤な音なんだろうと思いました。

浅井 グルーヴが合ってるんだね。

――結成してすぐにライヴをやっています。

浅井 2016年の4月頃に集まって、初ライヴが確か8月だったね。その時にはもう1stアルバム『METEO』(2017年1月発売)はできあがってたね。

「やっぱり曲はメロディアスじゃないと盛り上がらないよね」

――『Sugar』は強力なリズム隊が作りだす骨太のサウンドと、浅井さんのギターが疾走感と哀愁を生み出していますが、「Vinegar」「Ginger Shaker」を始め、コーラスがフックになっている曲が多いですよね。

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浅井 コーラスは(小林)瞳ちゃんの声がすごくいいんだわ。ライヴで叩きながらあのコーラスができるのか、楽しみではあるね。

――鋭くハードな音、そして全曲に、必ずメロディアスなフレーズが散りばめれらています。 

浅井 やっぱりメロディアスじゃないと、盛り上がらないよね。

――今、アルバムを作ってデジタル配信して、曲単位で買える時代になりましたが、アルバムのストーリー性のようなものに対する考え方は変わってきましたか?

浅井 アルバムという捉え方をしている人が少なくなってきとるという事だろうね。LPの時代からやってきている人間としては淋しいよね。アルバムっていうのはバンドにとって一番大事なものだから、その存在が薄くなっていくのは、淋しいよね。

――浅井さんがブランキーでデビューした90年代は、ストーリー性や、それこそアルバムの曲間の秒数にもこだわって作っていた時代でした。でも今はアルバム自体に興味を示さず、好きな曲だけを買う人も多い時代になりました。

浅井 好きな曲だけを買う時代にね…。確かに昔あるバンドのアルバムの聴いて、好きな曲は1曲しかなかったこともあったけどね(笑)。好きじゃない曲を飛ばしたりはしたよね。

――でも今回の『Sugar』を聴くと、改めて一枚を通して聴いて、全体の空気感やアルバムが醸し出しているバンドの色気や匂いを感じて欲しいと思いました。

浅井 そうやって聴いて欲しい。本当はもう1曲どうしても入れたい曲があったんだけど、やめたもん、長すぎるんじゃないかという事で。アルバムって通して聴いてもらうにはたぶん10~11曲くらいが限度なんだよ。

――そこは浅井さんの判断ですか?

浅井 スタッフを含めてみんなの判断だけど、そこは一致したね。

――そこは今の聴き手の事も考えているという事ですね。

浅井 そうだね。

――曲を書き続け、アウトプットし続けてきて、逆にインプットはいつどんな手段でやっているんですか?

浅井 たまに刺激を受けようと思って、色々な音楽を聴くよ。ジャンル関係なくYouTubeを観たりして。ラジオから流れてきた曲に「これカッコイイなぁ」って刺激を受ける事もあるしね

「世の中、人の誹謗中傷で埋め尽くされている。でもそれが自分達の社会で、そこで生きていかないといけない」

――浅井さんは絵も描かれますが、それもインプットする作業、刺激を受ける作業のひとつになっていますか?

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浅井 なんでも何かしら音楽にはつながってると思う。詞の世界は、映画や日頃起こる事件とか、世界情勢とか、そういう事から影響されるかな。だって外国の音楽聴いても歌詞わからんし。日本のバンドで「この歌詞スゲェな」と思うのはたまにあるけど。

――「Beautiful Death」の中の<真っすぐ生きて きれいに死ぬ>という言葉が、美しくて鋭くてハッとしました。

浅井 ある日突然出てきたフレーズだね。こうやって生きとって、世の中、人の誹謗中傷で埋め尽くされてるじゃん、特にインターネットの世界とか。あんなのを見てて、政治家同士、大の大人同士がくだらない事でやりあっていて、うんざりするよね。でもそれが自分達の社会で、そこで生きとって出てきた言葉だわ。だから自分は自分が正しいと思う事をやっていけばいいんだって。

「「ネットは社会、人々を暗くしている」というお坊さんの言葉がある。本来知らなくても良かった事も知ってしまうから。だからネットは見ないようにしている」

――自分に関するネットの反応は、見ない方がいいですよね。

浅井 それはその方が絶対いい。これは永平寺のお坊さんの言葉だけど、「インターネットは社会、人々を暗くしている」と。なんでかっていうと、本来知らなくても良かった事も知ってしまうから。それは結果的に全員の心を暗くしてるんだって。

――知らない方が幸せということですよね。

浅井 知る必要がないんだもん、そんなどうでもいい事は。人間の心理として、自分の書いた事をみんなが見ていると思うと、その反応を見ずにいられなくなる人がほとんだと思う。それがネットの怖いところだね。ネットは諸刃の剣だから頭を使って、いいように使わないと、自分自身の心がやられる。

――いい反応の時はいいですけど、ネガティブな反応を見てしまったら衝撃、ですよね。

浅井 それはいい反応の時より1千倍、1万倍の衝撃があるから。ネガティブな事を書くやつは、それを見た人がショックを受けるのがエサになってて。それくらいのレベルのやつが書いてるんだわ。だから見なければいい。

――浅井さんは自分の作品のネット上の評価はやっぱり気になって、チェックはしますか?Amazonのユーザーレビューとか。

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浅井 Amazonまでたどりつけない(笑)。でも昔そのようなものを見た事があって、褒められてOH Yeah!とか思うじゃん、でもたまにグサッとくるような事が書いてあると、こいつ…って思ったよね(笑)。だからもうネットは見るのをやめようと思った。

――でも浅井さんインスタやってるじゃないですか(笑)

浅井 あれは「こうやって書いといて」って、スタッフに書いてもらってるもん。自分ではやれない(笑)。まだガラケーだし。

――ファンの人は見たいですよね。

浅井 この前「Beautiful Death」のミュージックビデオの撮影で、パリに行ったりとか、そういう時にたまにやろうかなって思って。あれ日頃からやってると、それに時間奪われて、それこそアホみたいじゃん。

「CDの音が完成型のつもりだけど、ライヴでやっていくうちによくなっていく事がある。CDを超したら超したでめでたいじゃん」

――変わらずライヴに軸足を置いていますが、作品を作って、それをライヴで人前で歌って、完成するという感覚ですか?

浅井 CDの音が完成型のつもりではいるんだけど、それをライヴでやっていくうちによりよくなっていく事がある。そういう時はCDを超したら超したで、めでたいじゃん。超えられない曲もたくさんあるよ。色んな音が入っとって、でも3人しかいなかったらなかなか超せない事もあるでしょ。そういう場合は違う部分で超えたいし、色んな場面がある。

――アレンジも含めてレコーディングはライヴを想定して臨むんですか?

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浅井 考えてないね。ある程度は考えるけど、この音を入れたらライヴの時再現できないからやめようというのはない。

――これからも作品を作ってアルバムにして、ライヴをやるという事以外で、何かやりたい事はありますか?絵もそうですよね。

浅井 たまたま自分が絵が描けて、音楽が作れて、歌が歌えて、その能力があったというのは自分でも驚いていて。

――人を感動させる事ができる選ばれた人だから、やり続けなければいけない使命感のようなものになっているという事でしょうか?

浅井 ロシアのバレリーナが言ってたけど「才能をもらったらそれをちゃんと発揮する事が、その人の使命だ」って。そういう考え方もあるんだなって、それは思う。 

『Sugar』(2月14日発売)
『Sugar』(2月14日発売)

歩みを止める事なく、前進を続ける浅井健一が歩いてきたその道は、かくも美しいロックの轍となり、眩しい輝きを放っている。その光に誘われて、浅井の後を追う若いミュージシャンは多い。日本のロックシーンの最重要人物の一人としての、圧倒的な存在感を感じさせてくれる『Sugar』は、繰り返し聴きたくなる中毒性に満ちている。一曲一曲に込められた浅井の強烈なメッセージも含めて、多くの人の心に確実に“何か”を残し、さらに多くの人に影響を与えそうな一枚だ。

浅井健一 SEXY STONES RECORDSオフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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