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漸減中のガソリンスタンド数の現状を確認する

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

スタンド数は前世紀末から漸減中

灯油は巡回灯油販売車でも購入できるが、ガソリンはガソリンスタンドでなければ購入できない。そのガソリンスタンドだが、昨今では経営不振でその数を減らしているとの話も良く見聞きする。その数の現状、これまでの推移を確認する。

経産省の公開データを元に、販売業者数と給油所(ガソリンスタンド)数の推移をグラフ化したのが次の図。2枚目の図は前年比を算出して生成している。最新のデータは2014年度(26年度、2014年4月~2015年3月)のものとなる。

↑ 揮発油販売業者数及び給油所数推移
↑ 揮発油販売業者数及び給油所数推移
↑ 揮発油販売業者数及び給油所数前年比推移
↑ 揮発油販売業者数及び給油所数前年比推移

ガソリンスタンド数は1994年度(6万0421件)をピークに一環して減少を続けているが、1996年度には大きな下げが起きている。これは、特石法(特定石油製品輸入暫定措置法)が1996年4月に廃止され、ガソリンの輸入が解禁されたことに伴うもの。また直近では2008年4月に一時的に解除された暫定税率関連の混乱に影響を受け、減少率が増加している。さらに前年比の値が右肩下がり、つまり減少率が増加していることから、ガソリンスタンド数全体は加速度的に減少しているのが分かる。

また2012年度以降は再び下げ幅を拡大している。これは「2011年6月に改正された『危険物の規制に関する規則』の影響で、猶予期間が切れる2013年1月末までに必要とされる地下タンクの改修が果たせず、消防法に基づいた許可の取り消し処分を受けた、あるいは営業の継続を断念した」「経営者の高齢化が進んでおり、休廃業・解散が進んでいる」「仕入れ価格の上昇や地球温暖化対策税導入で収益が悪化し、廃業を選択した」などが原因として挙げられる。特に2013年度以降は経産省の資料の特記事項として「職権消除件数」が併記されており、直近の2014年度においては事業者は325件、給油所数は369件に達している。

セルフスタンドは増加中

ガソリンスタンドにはフルサービスを行う通常のスタイルのものに加え、「セルフサービス」のガソリンスタンドも存在する。これは1998年4月に消防法が改正され「顧客に自ら給油などをさせる給油取扱所」の運用が可能となり、それ以降に登場したタイプのスタンド。資源エネルギー庁発表のデータは登録ベースであり、セルフスタンドも登録は必要なので、全ガソリンスタンド数にカウントされる(資源エネルギー庁・全国石油協会双方に確認済み)。

セルフスタンドのみの数については日本エネルギー経済研究所石油情報センターの石油情報センター調査報告書で直近値を知ることができる。ここから各年度の最終四半期の値を抽出し、概算の「セルフスタンド年度・数」を導き、ガソリンスタンド全体数と比較して「セルフスタンド」「フルサービスのスタンド」双方の数を算出。積み上げ型の棒グラフにしたのが次のグラフ。

↑ 給油所数推移(フルサービス・セルフサービス別)
↑ 給油所数推移(フルサービス・セルフサービス別)

セルフスタンド数は漸増しているため、ガソリンスタンド全体に占める比率が増加している。しかしセルフスタンド数の増加以上に、フルサービスのスタンドが減少しているため、全体としてガソリンスタンド総数が減っているのが把握できる。概算ではあるが直近データでは、ガソリンスタンドの3割近くがセルフスタンドとの計算になる。

自動車が移動運搬手段として必要不可欠なこと、電気自動車などガソリン自動車の代替手段の浸透にはまだ時間がかかること、さらに現状をかんがみるに、ガソリン式の自動車が電気自動車にすべて置き換わることは難しい実態を考慮すると、ガソリンスタンドはインフラを支える場として欠かせない、公共性の高い存在に違いない。

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ガソリンスタンドは耐震性・耐火性などの基準が極めて厳しく、先の震災でも致命的な被害は出ずに、震災後の復旧時におけるインフラをサポートする拠点として、大いに頼りになった。そしてそれと共に、スタンド数そのものが不足気味であることは、多くの人が記憶に留めているはず。

収益性が低いガソリンスタンドの現状を合わせて考えれば、かつて「ガソリン価格が高いのはガソリンスタンドが暴利をむさぼっているから」と不確かな認識のもとに闇雲に責め立て、ガソリン行政を混乱させ、揚げ句にスタンドの事業破綻を加速させた「暫定税率一時撤廃騒動」は何だったのだろうか。インフラの重要性と共に、改めて考えさせられるものがある。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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