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物議を醸しているWBAスーパーライト級タイトルマッチ

林壮一ノンフィクションライター
Esther Lin/SHOWTIME  レフェリーのストップが早過ぎた

 現地時間5月13日に行われたWBAスーパーライト級空位王座決定戦は、ローランド・ロメロが第9ラウンド2分41秒にイズマエル・バローゾをストップして新チャンピオンとなった。

 ロメロは1年前にジャーボンテイ・デービスに6回KO負けして以来の復帰戦だった。

Amanda Westcott/SHOWTIME
Amanda Westcott/SHOWTIME

 2022年5月28日、デービスの持つWBAライト級タイトルに挑んだ際、ロメロは積極的に打って出て、ペースを握った局面もあった。

 が、1階級上げた今回は序盤からスピードが無く、手数も少なく、3ラウンドにはバローゾの左ストレートを喰らってダウンを喫した。実際、8ラウンドまでの採点は75-76、74-77、73-78で40歳のバローゾにリードを許していた。

Esther Lin/SHOWTIME
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 このファイトを放送したSHOWTIMEも5ポイント、バローゾ優勢としていた。

Esther Lin/SHOWTIME
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 9回40秒過ぎ、ロメロはショートの連打から右フックを顎にヒットし、バローゾをキャンバスに沈める。その2分後、ロメロがフルスイングのパンチを連打していたなかで、レフェリーが試合を止めた。

Esther Lin/SHOWTIME
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 とはいえ、バローゾのダメージがそれほど深刻には見えなかったため、レフェリーの判断がおかしい! と大論争が起こっている。

Esther Lin/SHOWTIME
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 ロメロ自身が試合後に、「バローゾは本物の戦士だし、続行させるべきだったと思う」と語った。勝者は「僕はずっとアウトボクシングをしていた。ダウンしたけれど、チャンピオンらしく立ち上がったよ。(回復させねばと)時間をかけて、動き回った。彼は強いので、警戒する必要があった」と言葉を続けた。

Esther Lin/SHOWTIME
Esther Lin/SHOWTIME

 24勝(22KO)3敗2分でリングに上がったバローゾも、キャリアを武器に試合巧者ぶりを見せたが、私が注目せざるを得なかったのはロメロの脆さだ。14戦全勝12KOでWBAライト級指名挑戦権を得てデービスと対峙するまでのロメロは、ダウン経験がなかった。

 2試合連続で、キャンバスに横たわったその姿は、何かが壊れたことを伝えている気がしてならない。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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