Yahoo!ニュース

侍ジャパンと相まみえる欧州代表チーム紹介(野手編)【カーネクスト侍ジャパンシリーズ2024】

阿佐智ベースボールジャーナリスト

 昨日、侍ジャパンが春のテストマッチ、カーネクスト侍ジャパンシリーズ2024の共同記者会見が行い、その後欧州代表チームの練習が行われた。

 記者会見では、欧州代表を率いるマルコ・マッツィエーリ監督が、「ヨーロッパの長い冬の間なかなかプレーできなかった選手たちが侍ジャパン相手にどう戦うか楽しみ」と抱負を述べる一方、侍ジャパン・井端監督は「キャンプを経て選手はできあがっている」と「世界一」チームを率いる立場として自信を見せた。

会見後、マッツィエーリ監督から地元の名物パルマハムをプレゼントされた井端監督
会見後、マッツィエーリ監督から地元の名物パルマハムをプレゼントされた井端監督

 「長い冬」というフレーズを繰り返したマッツィエーリ監督だったが、選手の多くは、かなり体ができあがっている。というのも、多数を占めるラテンアメリカ・カリブ地域にルーツを持つ選手たちは、ウィンターリーグでシーズンを送っており、来たるべき夏シーズンで契約を取るため、調整を進めているのだ。彼らにとってこのシリーズは、自らをアピールし、高く売る場。かなり気合は入っている。彼らの多くは日本でのプレーを望んでいる。昨年のWBCのメンバーも複数おり、「今回はムラカミはいるのか?」と侍ジャパンの陣容にも興味津々だった。

 前回は投手陣を紹介したが、今回は、打撃陣を紹介していく。

捕手

#15ガブリエル・リノ(スペイン)

右投右打。30歳。

ベネズエラ出身。2010年に17歳でオリオールズと契約。ドミニカンサマーリーグで54試合に出場すると、翌年にはガルフコーストリーグでアメリカデビューを飾った。2018年までにMLB3球団のマイナーを渡り歩き、3Aを含む10チームでプレーし、通算560試合で433安打を放った。2021年以降はイタリア・セリエAを主戦場する一方、2022年には一時期メキシカンリーグのオアハカで過ごしたり、2017年オフ以降はベネズエラのウィンターリーグでプレーするなど、ラテンアメリカのプロ球界とも関係を保っている。昨年の欧州選手権にスペイン代表として出場。チームの優勝に貢献している。

#36アルベルト・ミネオ(イタリア)

右投左打。30歳。

イタリア・ベースボールアカデミー出身。2010年シーズン後カブスと契約し、2012年にルーキー級アリゾナリーグでアメリカデビューを飾った。以降2019年までに3Aを含むマイナー396試合に出場し、339安打を放っている。2021年シーズン以降は母国トップリーグ・セリエAのパルマでプレーしている。

昨年のWBCでは準決勝の日本戦で代打で出場し、大勢(巨人)からセンター前ヒットを放っている。この他、2015年の第2回プレミア12でも代表メンバーに名を連ねた。

#55マルティン・チェルベンカ(チェコ)

右投右打。32歳。

2007年、15歳でチェコのトップリーグ、エクストラリガでデビュー。翌年MLBのヨーロピアンアカデミーに参加し、2009年にインディアンスと契約を結んだ。マイナーで10年プレーし、通算617試合に出場。2016年ノーフォーク(オリオールズ傘下)、2019年シラキュース(メッツ傘下)で計94試合の3Aでのプレー経験かある。2022年以降は再びエクストラリガでプレー。その一方で、オフにはドミニカのウィンターリーグでプレーしている。昨年のWBCには4番正捕手として参加したが、打率.067に終わった。

内野手

#12ワンデル・エンカルナシオン(スペイン) 

右投右打。24歳。

昨年の欧州選手権では打率5割、11打点で MVPに輝いた。今シーズンはイタリア・セリエAの名門パルマでプレーする。今回のシリーズではサードでの起用が予想される。

#19エディソン・バレリオ (スペイン)

ドミニカ出身。右投右打。29歳。

主にショートを守る。スペイン国内リーグではホームラン王を4回獲得。2019年以降スペイン代表として国際的に活躍し、2023年の欧州選手権優勝に貢献した。

#27アレックス・リディ(イタリア)

右投右打。35歳。

メジャーリーグプレーヤー。また、イタリア生まれイタリア育ち初のメジャーリーガーでもある。2005年にMLBヨーロッパアカデミーに参加。翌年にマリナーズと契約した後、マイナーの階段を駆け上り、 2011年にメジャーリーグデビューを飾った。メジャーでは3シーズンで61試合の出場、36安打を記録し、ホームランも6本放っている。2012年の東京ドームの開幕シリーズの際に来日し、巨人、阪神とのプレシーズンゲームに出場している。キンタナロー・タイガースと契約した2016年以降はメキシカンリーグを主戦場とし、2019年の一時期は台湾の中信兄弟でもプレーした。また、ウィンターリーグではこれまで、ベネズエラ、ドミニカ、メキシコ、プエルトリコのいわゆる4大リーグすべてでプレーしている。 WBCには2009年大会以降、3大会連続で出場している。

#6リカルド ・パオリーニ(イタリア)

ベネズエラ出身。右投左打。25歳。

2017年の WBSC U18ワールドカップで頭角をあらわし、翌2018年に強豪パルマでトップリーグ・セリエAデビューを飾った。以降、イタリア野球を代表する二塁手として君臨し、2022-23年シーズンにはベネズエラのウィンターリーグの名門、マガジャネスで20試合に出場して3割をマークした。

#13ジュレミ・プロファー(オランダ)

キュラソー出身。右投右打。28歳。

2013年17歳でドミニカンサマーリーグ・レンジャーズでプロデビュー。2019年シーズンまでに101試合の3Aでのプレーを含む 639試合のマイナーリーグの出場経験をもつ。コロナ禍以降はコロンビア・ウィンターリーグ、メキシカンリーグでプレー。昨シーズンは、北米独立リーグのひとつ、フロンティアリーグのカナダ球団、ケベック・キャピタルズで100安打、14ホーマーを記録した。2021年の欧州選手権ではオランダの優勝に貢献。ここ2年はカリビアンシリーズにも出場し、この2月にマイアミで開催されたシリーズでは、キュラソー・サンズの一員として準決勝進出の立役者のひとりとなった。兄はパドレスのジュリクソン。  

# 4 シャーロン・スコープ(オランダ)

キュラソー出身。右投右打。36歳。

メジャーリーガー、ジョナサンの兄。2004年にジャイアンツと契約、翌年のルーキー級アリゾナリーグでのデビュー以降、マイナーで13シーズンプレー、3Aでの154試合を含め、942試合に出場している。2019年以降は本国トップリーグであるフーフトクラッセのアムステルダム・パイレーツに在籍し、通算で3割を超える打率を残している。

国際経験も豊富で、2010年のインターコンチネンタルカップでの銀メダル、2011年IBAFベースボールワールドカップ、2014、2019、2021年の欧州選手権でのオランダ優勝に貢献した。WBCには2009、2017、2023年の3大会に出場。プレミア12には2015、2019年の2大会に参加している。

#49マルティン・ムジーク (チェコ)

右投右打。28 歳。

大学時代に頭角を現して以降、一貫してチェコ・エクストラリガを代表する選手であると 同時にチーム・チェコの主力選手である。昨年のWBCでは、中国戦で3ランホーマーを放ち、歴史的な勝利の立役者となった。 本職は所属クラブのグランドキーパー兼コーチ。

外野手

#17エンヘル・ベルトレ (スペイン)

ドミニカ出身。右投右打。25歳。

2006年にレッドソックスと契約し、翌2007年にルーキー級ガルフコーストリーグでプロとしてのキャリアをスタートさせた。このシーズン中にレンジャーズに移籍し、ショートシーズンA級まで昇格した。翌年にはA級にまで昇格し、オフにはドミニカのウィンターリーグに初参加している。2013年にはメジャーに昇格。22試合に出場した。ただしメジャーでのキャリアはこの年のみで、翌2015年までプレーしたマイナーでは通算866試合に出場している。2016年には活躍の舞台をメキシコカンリーグに求め、2018年までに152試合に出場するが、この年以降はイタリア・セリエAでプレーした2021年、北米独立リーグ、アトランティックリーグでプレーした2022年以外は、ウィンターリーグが主戦場となり、プエルトリコ、メキシカンパシフィックリーグでプレーしている。また昨年のスペインの欧州選手権優勝に貢献した。

#37 マレク・フルプ (チェコ)

右投右打。25歳。

アメリカの大学で5シーズンを過ごした後、2023年には独立系アメリカン・アソシエーションのレイク・カントリー・ドックハウンズで34試合に出場し、.325の打率を残した。国際舞台では、2021年雄U-23ベースボールワールドカップではチェコ代表としてプレー。昨年のWBCでも、代表チーム入りした。4日の練習試合ではホームランを放った。

#8ダニエル・ヒメネス (スペイン)

ベネズエラ出身。右投右打。28歳。

2013年にダイヤモンドバックスと契約し、ドミニカンサマーリーグでプロデビュー。2015年のオフシーズンにはベネズエラのスリア・イーグルスでウインターリーグでのキャリアをスタートさせ、昨年のカリビアンシリーズではパナマチームにも加わっている。2018年にメキシコの名門・メキシコシティ・レッドデビルズと契約して以来、メキシカンリーグでプレー。昨シーズンは、キンタナロー・タイガースでプレーしたほか、スペイン代表として欧州選手権にも出場した。

#2デラノ・セラッサ (オランダ)

右投右打。25歳。

外野手登録だが、内野もこなすマルチプレーヤー。アメリカのアリゾナ・ウエスタン大学でプレー後、母国トップリーグのフーフトクラッセで2016年からプレー。この年にはU18欧州選手権の代表チームにも参加している。2019年のチャンピオンシップでMVPに輝いたほか、2023年にはシーズンMVPを受賞した。今シーズンは北米独立リーグ、フロンティアリーグのケベック・キャピタルズでプレーする。

#59ノア・ウィリアムソン(スイス)

(WBSC提供)
(WBSC提供)

スイス系アメリカ人。右投右打。24歳。

2021年のアマチュアドラフトでマーリンズから19巡目で指名されプロ入り。昨シーズンはルーキー級フロリダ・コンプレックスリーグとA級のジュピターで計33試合に出場して3ホーマーを放っている。

ライナー・クルーズの出場辞退を受けて、急遽招集された。今シーズンより、関西独立リーグの兵庫ブレイバーズに所属している。

(写真は筆者撮影)

ベースボールジャーナリスト

これまで、190か国を訪ね歩き、23か国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当した。プロからメジャーリーグ、独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020、24カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。2024年春の侍ジャパンシリーズではヨーロッパ代表のリエゾンスタッフとして帯同した。

阿佐智の最近の記事