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バルセロナがラ・リーガ離脱?どうなるエル・クラシコ カタルーニャ議会選で独立派が過半数

木村正人在英国際ジャーナリスト
カタルーニャが独立すればエル・クラシコが見れなくなる(写真:ロイター/アフロ)

バルセロナを中心とするスペイン北東部カタルーニャ自治州の議会選(定数135)が27日、行われた。争点はスペインからの独立。分離・独立派が過半数の議席を占めたため、2017年春までに独立する道筋の策定に取りかかる見通しだ。

約5年間で3度目の議会選。昨年11月の住民投票に続いて、カタルーニャの民意は「独立」を示した。スペイン憲法は国家の統合を明記、いかなる分離・独立も違憲・違法と退けており、今後の展開は予断を許さない。中央政府は法廷闘争に入る見通しだ。

開票率96.44%で、分離・独立派のJxSi(トゥゲザー・フォア・イエス、4党)は62議席(39.62%)、CUPは10議席(8.2%)で過半数の68議席をクリアしている。

出典:各種世論調査をもとに筆者作成
出典:各種世論調査をもとに筆者作成

直近の世論調査ではJxSiとCUPを合わせた支持率はちょうど50%だった。元FCバルセロナ監督で現バイエルン・ミュンヘン監督のジョゼップ・グアルディオラ氏は「カタルーニャの尊厳を取り戻すためには避けて通れない道」と「トゥゲザー・フォア・イエス」を支持している。

独立派を率いるマス州首相は25日に開かれた7万人集会で「今回の選挙でカタルーニャは繁栄と尊厳、自由を手に入れる」と訴えた。カタルーニャ州では昨年11月、拘束力のない住民投票が実施され、「カタルーニャが国家になるべきか」「その国家は独立すべきか」の2つが問われた。

出典:住民投票の結果をもとに筆者作成
出典:住民投票の結果をもとに筆者作成

その結果、いずれもイエスが81%。国家になるべきだが、独立は望まないが10%。いずれもノーはわずか4.5%。しかし憲法裁判所は、国家主権に関する住民投票を行う権利は中央政府に限られているとして、カタルーニャ州の住民投票は違憲と判断した。

出典:グーグルマイマップで筆者作成
出典:グーグルマイマップで筆者作成

カタルーニャは独自の言語と文化を持ち、自治権を確立していた。しかし、1714年にスペイン軍の攻撃で中心都市のバルセロナが陥落し、自治権を失う。1930年代のスペイン内戦を経て誕生した独裁者フランコ総統によってカタルーニャ語が使用禁止にされるなど抑圧され、フランコ死後の1977年、カタルーニャはようやく自治権を回復した。

こうした歴史的な経緯もあってカタルーニャ州ではもともとナショナリズムが強い。それでも2006年の世論調査では独立支持派は13%に過ぎなかった。欧州債務危機でスペインの財政が逼迫し、カタルーニャ州にも負担が要求されるようになると、中流階級を中心に「カタルーニャはスペインの食い物にされている」という被害者意識が出てきた。

カタルーニャ州はスペイン経済の5分の1を占め、ポルトガルの経済規模に匹敵する。カタルーニャ州の総生産(GDP)の9%が毎年、中央政府に吸い上げられているとの見方もあり、「独立した方が生活が豊かになる。スペインに留まる理由はない」という住民の不満が一気に爆発した。

欧州連合(EU)域内では、スペインのバスク州、英国のスコットランド地方、ベルギーのオランダ語圏、イタリア北部でも分離・独立ムードが高まっている。各国政府の権限が大幅にEUに移譲されて有権者と政策決定者の距離が遠くなり、各地域のフラストレーションが噴き出しているとみることもできる。

昨年9月、スコットランド独立の住民投票に駆けつけたカタルーニャの若者(筆者撮影)
昨年9月、スコットランド独立の住民投票に駆けつけたカタルーニャの若者(筆者撮影)

否決されたとは言え、昨年9月のスコットランド独立を問う住民投票は大きな刺激となった。スコットランドのエディンバラにはカタルーニャ州、バスク州から若者が大挙して押し寄せ、スコットランド旗とカタルーニャ旗、バスク旗を掲げた。

スペイン銀行(中央銀行)のリンデ総裁は、カタルーニャが独立すれば「自動的にユーロ圏から外れることになる」と釘を刺し、ギリシャやキプロスのように資本規制が敷かれる恐れにも言及する。

ラ・リーガ会長も「もしカタルーニャが独立すれば、FCバルセロナとRCDエスパニョールの2チームはラ・リーガでプレイできなくなる。ラ・リーガに参加することが許されているスペイン以外の国はアンドラだけだ」と心配する。

カタルーニャが独立すれば、ラ・リーガ伝統のレアル・マドリードとバルセロナのエル・クラシコ(伝統の一戦)が観戦できなくなるかもしれないのだ。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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