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線状降水帯の発生は深夜~朝に多い

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
青森県と秋田県に発生した線状降水帯(2022年8月3日、ウェザーマップ作画)

 「顕著な大雨に関する気象情報(線状降水帯発生情報)」は2021年6月からこれまでに29回(筆者調べ)発表されました。発表された時刻を整理すると、全体の約7割が0時~9時に集中しています。

顕著な大雨に関する気象情報(線状降水帯発生情報)が発表された時刻をまとめたグラフ:2021年6月~今月、筆者作成
顕著な大雨に関する気象情報(線状降水帯発生情報)が発表された時刻をまとめたグラフ:2021年6月~今月、筆者作成

 一日のなかで雨が強く降りやすい時間帯があることはご存じでしょうか。身近な例では夏の夕立があります。これまでの研究では陸上の強い雨は午後に、海上の強い雨は早朝に多くなることが確かめられています。

 線状降水帯が深夜から朝に多いのは海上に雨雲の発生源があり、徐々に発達しながら陸地に広がるからでしょう。

線状降水帯の予測のために

 雨が激しくなってからの避難は難しく、かえって危険を伴います。ましてや、暗くなってからではなおさらです。

 今回の東北・北陸豪雨では3日午後7時過ぎに山形県に、4日午前2時前に新潟県に、大雨特別警報が発表されました。

 昔から人的被害の大きい豪雨は夜間に多いことが知られていて、理由のひとつに避難の難しさがあります。もうひとつは海上の大気中の湿度が増し、雨雲が発達しやすくなるという考えです。しかしながら、雨雲の発達には様々な原因が絡み合っているため、未だにはっきりとした答えは見つかっていないようです。

 線状降水帯の予測にはいくつものハードルがありますが、深夜から朝に多く発生する理由が分かれば、より的確な予測につながると思います。

【参考資料】

小倉義光、2001:質疑応答「集中豪雨は夜間に多いのでしょうか?」についてのコメント、天気、48、179-180

栗原和夫、加藤輝之、1997:九州の梅雨期における降雨の日変化の特徴、天気、44、631-636

Sachie Kanada, Hiroshige Tsuguti, Teruyuki Kato, Fumiaki Fujibe,2014:Diurnal Variation of Precipitation around Western Japan during the Warm Season,SOLA,10,72-77

Sui, C.-H., X. Li, and K.-M. Lau, 1998: Radiative-convective processes in simulated diurnal variations of tropical oceanic convection. J. Atmos. Sci., 55, 2345-2357.

Tao, W.-K., S. Lang, J. Simpson, C.-H. Sui, B. Ferrier, and M.-D. Chou, 1996: Mechanisms of cloud-radiation interaction in the tropics and midlatitudes. J. Atmos. Sci., 53, 2624-2651.

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは128冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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